ストレージ・ネットワークと付き合っていく上で最も大切なことは、データ管理におけるポリシーを確立し、そのインフラとしてストレージ・ネットワークを位置付けることである。ここでもデータを中心としたアプローチを採用し、データの重要度、アクセス頻度といった観点でストレージ・ネットワークを活用する(図4)。
詳細な説明は省略するが、例えばデータの重要度から上述のサービスレベルポリシーを規定し、そこからストレージに求められる機能要件を導き出すこともできる(図5、表1)。
Tier-1 |
Tier-2 |
Tier-3 |
Tier-4 |
Tier-5 |
Tier-6 |
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オフサイト保存 |
オフサイト保存 /warmサイト |
リモートバックアップ / リモートレプリケーション |
リモートバックアップ/リモートレプリケーション /warmサイト | 2相コミット | 同期I/Oによるゼロデータロスシステム | |
説明 | オフサイトにおけるデータの保存。データの移動は物理的な手段による |
オフサイトにデータを保存。保存だけでなく、Warmサイトを構築し、データをインポート |
オフサイトにデータを保存。データの移動はネットワークによる |
オフサイトにデータを保存。データの移動はネットワークによる。さらにWarmサイトを構築し、データをインポート | オフサイトにデータをミラーリング |
完全同期I/Oによるリモートクラスタリング |
使用技術 (スナップショットなどを使用する) |
通常のバックアップ+運搬 |
通常のバックアップ+運搬+手動インポート |
SAN/LANを利用したリモートバックアップ |
非同期データレプリケーション |
同期式データレプリケーション | リモートクラスタシステム |
RTO/RPO | 1週間以内 |
1日程度 |
1日以内 |
4時間以内
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1時間以内
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クラスタのフェイルオーバ時間 |
リカバリポイント | 前回のデータ移動のタイミング |
前回のデータインポートのタイミング |
前回のバックアップ / レプリケーションのタイミング |
前回のデータインポートのタイミング | 前回のI/O
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前回のI/O
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同期ミラー/スナップショットなし + テープによるバックアップ | 同期ミラー/スナップショットあり | |||||
表1 図5の「データの重要度に基づくリカバリーポリシー例」の詳細 |
ポリシーを定義することは人間の仕事だが、ポリシーを実行するのはストレージ装置やソフトウエアに担当させてよい。格納されてからある一定期間以上経ったデータ、あるいは一定期間以上アクセスされていないデータは自動的にバックアップストレージに移行するといった運用も考えられる。ブロックレベルでもファイルレベルでもこのような処理を自動化するツールが登場してきており、データのライフサイクル管理という観点から検討する余地がある。
ストレージ・ネットワークには柔軟性と拡張性が求められる。ネットワークは幅広く接続できることに存在意義があり、ある日突然サーバやストレージが追加された場合に、ネットワーク側ではそれを許容できなければならない。SANスイッチをはじめとするネットワーク機器では、ポートキャパシティ管理やネットワーク帯域のパフォーマンス管理が行えるものもある(図6)。これらを活用することで、システム拡張時や障害時に受動的に対処するのではなく、より能動的にストレージ・ネットワークと付き合うことができる。
最後にストレージ・ネットワークを上手に活用するためには、最新の技術動向をチェックすることも忘れてはならない。ストレージの世界でも日進月歩で技術は進化している。ストレージ・インフラは企業活動に影響を受けるので、業務の進捗度合いなどを勘案しつつ、自分たちに関係する技術の動向を見守っていく必要があるだろう。
ストレージは企業活動の根幹を支えているインフラである。データをどのように管理していくかというより大きな視点で、ストレージ・ネットワーク管理というものをとらえていただきたい。
今回はネットワークストレージ導入の本質を解説した。次回は「ストレージ・ネットワークの運用管理」と題して、より具体的なストレージ・ネットワークの管理手法を解説する予定である。次回も是非お付き合いいただきたい。
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