連載
» 2006年09月01日 12時00分 公開

何かがおかしいIT化の進め方(27):SOX法とコンプライアンスとIT (1/3)

日本版SOX法や内部統制では、内部統制のシステムやその運用・評価体制の整備が求められる。社内の多くの業務が情報システムに依存している現状では、適正な業務処理には適正な情報システムが大前提だ。この適正な情報システムを確保するために再確認しておきたい問題を考えた。

[公江義隆,@IT]

 日本版SOX法も、まだ細部に見えない部分もあるが、日程だけは2008年4月施行をめどに進んでいる。いずれにせよ、財務報告内容の信頼性を確保し、経営者が自社のすべての業務の管理責任を負うことになるため、内部統制システムやその運用・評価体制の整備が求められることになる。

 社内の多くの業務が情報システムに依存するようになった今日、適正な業務処理には適正な情報システムが大前提である。日本版SOX法施行を前に、適正な情報システムを確保するため再確認しておきたい、コンプライアンスとITの問題を考えてみた。

対岸の火事を他山の石に

 昨今、名門・大企業の、一昔前には想像もできなかったような不祥事が新聞の紙面にはんらんしている。やはり何かが変わってしまったのだろうか。恐ろしいことに、見る方も感覚がまひしてしまったのか、大抵のことには驚かなくなってきている。

見出しを見ても、「またか」と本文を読まなくなった新聞記事も最近多い。読むと、何とも憂うつになるからだ。それでも新聞紙面を一見するだけで、見出しから、知りたいことも、知りたくないことや興味のないことも、とにかく世の中で何が起こっているかのイメージが一瞬のうちに目に飛び込んでくる。

 新聞の紙面というメディアが持つ特徴だ。また、一見したときに、記事内容の特定の活字が目に飛び込んでくる場合がある。不祥事の記事の中に、“プログラム”などという活字があると、無意識のうちにその記事を読んでしまう。インターネットの時代には、新聞をはじめとするマスコミの役割は特に重要になる。

 自分の興味のある項目やテーマだけについての情報を知るのなら、インターネットは有用なツールである。しかし、これに頼っていると、PCや携帯電話のディスプレーサイズ並みに、視野が狭いものになってしまうような気がする。何が起こるか分からなくなった世の中で、「知りたくなくても知っておくべきこと」も多い。情報量が増えてくると、受信機の波長をどこに合わせるかという、フィルターの機能が重要になるが、よほど意識していないと、自分に都合の良い情報だけを通すフィルターになり、これで得た情報と自分だけの価値観で物事を判断して行動してしまいがちだ。昨今の数々の不祥事の背景にはこんな面もあるような気がする。

 会社でマネジメントに長年携わってきた因果か、会社を退いて随分とたつのに、新聞やTVで何か事件が報道されると、「自分のところには、こんな問題の芽はないだろうか?」と、頭の中に昔作られたチェック回路が無意識のうちに活動を開始する。サラリーマン時代の習性がよみがえるのだ。チェック回路がある程度働いた後で、「いまの自分には関係ないのだ」と気が付く。今回は世の中で起こる事件を「対岸の火事」ではなく、「他山の石」にするために、最近の事件を参考に、いま再確認すべき足元の問題を考えてみた。

珍しくほかに大事件のなかった日の新聞報道

 今年の5月下旬、毎日新聞阪神版の朝刊第1面のトップに、神戸の製鉄会社の「記録改ざん、NOx実際は20倍……2製鉄所」という記事が載っていた。

 最近にしては珍しく、ほかに大きな事件のない日であった。大気汚染防止法の基準値を超える窒素酸化物(NOx)と硫黄酸化物(SOx)を排出しながら、地元自治体に提出するデータを改ざん・隠ぺいしていたことが、法令遵守情況の内部調査の過程で判明し、対策として設備改良の投資を早急に行うと、この会社が自ら発表したとあった。

 なお、同社は自治体との間で公害防止協定を結んでおり、2つの製鉄所ではボイラーや均熱炉、加熱炉に設置している測定器が2分ごとにばい煙を自動的に測定し、これを基に計算された1時間の平均値を市に通信回線を介して送っている。しかし、両製鉄所のシステムでは、測定システムが基準値を超える窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)を測定した場合に、炉の稼働停止時に送る「データ欠測」の信号を自動的に送るようにプログラミングされていた。また、基準値を超えると自動的に記録を中断するプログラムも使われていた。「欠測」の連絡を受けた市側は、「欠測=生産設備が稼働していないので、ばい煙も出ていない」と判断し、不審に思わなかったという。

 さて、以上は新聞記事で報道された内容をピックアップしたものであって、筆者はこれらの内容について、その真偽や背景の判断材料は持ち合わせていない。

 今回この問題を取り上げたのは、この事件そのものを論議するのが目的ではなく、この問題をケーススタディの材料として一般化し、「自分のところは大丈夫か?」という問題検討の参考にしていただければ、というのが趣旨である。

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