「ストレージ仮想化」って何をしてくれるもの?これなら分かるストレージのキーワード(1)(2/2 ページ)

» 2006年09月02日 12時00分 公開
[三木 泉,@IT]
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 このようにデータのライフサイクル管理作業が楽になることは、ストレージの仮想化の大きなメリットです。

 ただし、複数のサーバが同一のファイル群を利用することはできません。各仮想ボリュームは1台のサーバに占有され、それぞれのサーバが自分のファイルシステムを通じて管理します。

 結局、仮想ボリュームとサーバとの接続は1対1の関係になります。サーバが1台なら仮想ボリュームは1つでよく、複数のストレージ装置から1つの仮想ボリュームを作成すれば、それぞれのストレージにあった空き容量を1つにまとめられるという意味で、ディスク利用効率を向上することができます。しかし、サーバが複数台あれば、サーバの数だけ仮想ボリュームをつくらなければなりません。

 「NASゲートウェイ」と呼ばれるジャンルの製品も、ファイルサービスに用途が限定されてはいますが、ブロックレベルの仮想化と同様な機能を提供するといえます。「NAS」(Network Attached Storage)はストレージ装置とサーバが一体化したファイルサービス専用装置ですが、そのサーバ部分、つまりNASの頭脳部分に当たる機能のみを提供しているのがNASゲートウェイです。

 NASゲートウェイにさまざまなベンダのストレージ装置が接続できるようになっていれば、NASゲートウェイの持つ単一のファイルシステムでこれらのストレージ装置をまとめ上げ、あたかも単一のものであるかのように扱うことができます。

ファイルレベルの仮想化は同一ファイルの共用を実現する

 これに対し、ファイルレベルの仮想化は、「ファイルシステムの仮想化」といい換えることができます。先ほどのブロックレベルの仮想化とは異なり、複数のサーバが、場合によっては異なるOSを用いていたとしても、同一のファイルシステムを介して単一のボリュームを共用することができます。複数のファイルシステムを単一のものとして管理するには、こうした製品が、「グローバルネームスペース」あるいは「グローバルファイルシステム」と呼ばれる、より構造的なファイルの管理機能(名前空間)を備えている必要があります。

ブロックレベルのストレージ仮想化製品例

  • EMC Invista
  • IBM TotalStorage SANボリューム・コントローラー(SVC)
  • 富士通 ETERNUS VS900
  • 日立 SANRISE Universal Storage Platform
  • 日本HP StorageWorks Storage Virtualization System(SVS)
  • ファルコンストア・ジャパン IPStor

ファイルレベルの仮想化製品例

  • EMC Rainfinity Global File Virtualization
  • IBM TotalStorage SANファイルシステム(FS)
  • ストアエイジ Storage Virtual Manager (SVM)

 実装のしかたにはいろいろありますが、例えば各サーバに専用の同一ファイルシステムをインストールし、さらに複数サーバがファイルアクセスの際の排他制御などをつかさどるメタデータサーバを配置する構成で使う製品があります。

 ファイルレベルの仮想化では、各サーバのOSが異なっていても、同一のファイルシステムを導入するため、これらのサーバが同じファイルを共用できることになります。従って、ボリュームは1つあればよいことになり、各サーバが専用のボリュームを持つ場合と比較すると、ストレージの利用効率が向上します。

 また、例えばコンピュータ間のクラスタリングで、いずれかのコンピュータがダウンしたためにほかのコンピュータが処理を肩代わりする際に、ストレージの高速な引き継ぎを実現できます。

 複数のNASやファイルサーバを単一のものに見せかける製品も存在しており、こうした製品も複数のファイルシステムをまとめ上げています。従って、ファイルレベルの仮想化を実現しているといえます。

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▼著者名 三木 泉


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