このようにデータのライフサイクル管理作業が楽になることは、ストレージの仮想化の大きなメリットです。
ただし、複数のサーバが同一のファイル群を利用することはできません。各仮想ボリュームは1台のサーバに占有され、それぞれのサーバが自分のファイルシステムを通じて管理します。
結局、仮想ボリュームとサーバとの接続は1対1の関係になります。サーバが1台なら仮想ボリュームは1つでよく、複数のストレージ装置から1つの仮想ボリュームを作成すれば、それぞれのストレージにあった空き容量を1つにまとめられるという意味で、ディスク利用効率を向上することができます。しかし、サーバが複数台あれば、サーバの数だけ仮想ボリュームをつくらなければなりません。
「NASゲートウェイ」と呼ばれるジャンルの製品も、ファイルサービスに用途が限定されてはいますが、ブロックレベルの仮想化と同様な機能を提供するといえます。「NAS」(Network Attached Storage)はストレージ装置とサーバが一体化したファイルサービス専用装置ですが、そのサーバ部分、つまりNASの頭脳部分に当たる機能のみを提供しているのがNASゲートウェイです。
NASゲートウェイにさまざまなベンダのストレージ装置が接続できるようになっていれば、NASゲートウェイの持つ単一のファイルシステムでこれらのストレージ装置をまとめ上げ、あたかも単一のものであるかのように扱うことができます。
これに対し、ファイルレベルの仮想化は、「ファイルシステムの仮想化」といい換えることができます。先ほどのブロックレベルの仮想化とは異なり、複数のサーバが、場合によっては異なるOSを用いていたとしても、同一のファイルシステムを介して単一のボリュームを共用することができます。複数のファイルシステムを単一のものとして管理するには、こうした製品が、「グローバルネームスペース」あるいは「グローバルファイルシステム」と呼ばれる、より構造的なファイルの管理機能(名前空間)を備えている必要があります。
ブロックレベルのストレージ仮想化製品例
ファイルレベルの仮想化製品例
実装のしかたにはいろいろありますが、例えば各サーバに専用の同一ファイルシステムをインストールし、さらに複数サーバがファイルアクセスの際の排他制御などをつかさどるメタデータサーバを配置する構成で使う製品があります。
ファイルレベルの仮想化では、各サーバのOSが異なっていても、同一のファイルシステムを導入するため、これらのサーバが同じファイルを共用できることになります。従って、ボリュームは1つあればよいことになり、各サーバが専用のボリュームを持つ場合と比較すると、ストレージの利用効率が向上します。
また、例えばコンピュータ間のクラスタリングで、いずれかのコンピュータがダウンしたためにほかのコンピュータが処理を肩代わりする際に、ストレージの高速な引き継ぎを実現できます。
複数のNASやファイルサーバを単一のものに見せかける製品も存在しており、こうした製品も複数のファイルシステムをまとめ上げています。従って、ファイルレベルの仮想化を実現しているといえます。
▼著者名 三木 泉
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