情報活用に必要な“捨てる技術”と“残す技術”“見える化”によるグループウェア再生術(3)(2/3 ページ)

» 2006年09月21日 12時00分 公開
[砂金 信一郎(リアルコム株式会社),@IT]

情報の消費スタイル

 一般の買い物でもネットを使う人と実店舗に行く人がいるように、Notesのコンテンツにもさまざまな利用の仕方がある。中でもNotesで特徴的なのはレプリカとクライアントの視点である。

 レプリカはオフィスの自席にいることの少ない営業職や客先常駐のSE職にとっては、非常に便利な機能である。インフラが整ってきた現在においても、常時オンラインを保つのは難しく、VPN越しにDominoサーバにアクセスしようとすればさらにハードルは高くなる。Notesのレプリカに取って代わるほどの手段はいまだ現れていない。

 しかし、セキュリティ上の懸念もある。DBを暗号化できるとはいえ、レプリカを取った状態でパスワードが破られれば、クライアントのディスク上にあるすべてのデータが情報漏えいの危機にさらされることになる。自社のリテラシーやモラルを考え、利便性とリスクのバランスをうまく取る必要がある。

■レプリカの利用状況

 前述のとおり、レプリカはNotesユーザーにとって非常に便利な機能の1つである。しかし、セキュリティ上の懸念もある。

 レプリカ関連で最ももめ事になりやすいのは、Notesクライアントを撤廃し、アクセス手段をWebブラウザだけに限定しようというケースである。レプリカなどクライアントに依存した機能を多用しているユーザーは猛反発することになろうが、どのようなユーザーが、どの程度レプリカを使用しているかを把握していれば、声の大きいユーザーのいいなりにならずにすむかもしれない。

図6 部門別レプリカ使用状況

代表的な仮説

レプリカはNotesオタクの一部のユーザーのみが使用している機能であり、現場で使いこなしている営業マンは少ない



■Webブラウザ vs. Notesクライアント

 ユーザーの利便性を考慮して、Webブラウザやケータイ端末などさまざまなアクセス手段を許容している組織もあるだろう。しかし、せっかく追加投資をして利便性を高めたにもかかわらず、効果を確かめていないNotes管理者も少なくないのではないだろうか?

 クライアントをハイブリッド構成にしている場合、想定される状況とのギャップや、時系列での変化の度合いを把握しておくべきであろう。将来的にクライアントを残すのかどうかを判断する際に、重要な指標となる。

代表的な仮説

Webブラウザを利用可能にしたことで、多くのユーザーは、Notesクライアントを使わなくなっているはずである



図7 クライアントの分布状況

行動分析:セグメンテーション

 上記DBの棚卸しや情報の消費スタイルを、ユーザーの属性ごとにクロス集計を行うことで、さらに状況が見えてくる場合がある。

■ヘビーユーザー/アクティブユーザー/ノンアクティブユーザー

 パレートの法則は、Notesの利用状況にも当てはまるケースが多い。各ユーザーの閲覧数を一定期間カウントし、下図のようなチャートを作ると、大体の場合において、全体の80%のアクセスをしている20%のヘビーユーザー、残り20%のアクセスを分け合うアクティブユーザー、ノンアクティブユーザーの3段階に分類できるケースが多い。後者2つの区分けにはログオンの頻度を用い、例えば連続3日間ログオンしていない、あるいは一度も文書にアクセスしていないユーザーをノンアクティブユーザーとすることができる。

図8 利用状況に基づくユーザーの分類

 閲覧数を分類のキーにしているので、その状況が異なるのは当たり前だが、さらに投稿・更新と閲覧のバランスや、レプリカの使用状況、Webブラウザの使用率などの状況も変わってくる。

 一部のヘビーユーザーのわがままを抑えたいのか、利用度の低いユーザーを切り捨てたいのかで、情報基盤整備の方向性も変わってくる。誰のためのシステムか? を考える際には重要な切り口である。

代表的な仮説

3日間一度もNotesを使わないユーザーなどほとんどいないはずである。これまでEUCを推進してきたのだから、ヘビーユーザーと呼べる存在は少なく見積もっても全社の4割はいるだろう



■マネジメント/ライン/現場

 職位によって、Notesの利用状況が異なる組織も多い。ほとんどの場合、職位が上がるにつれ、利用度は低下する傾向がある。Notesの状況について理解度の低い上司に口出しされたくないという場合、調査・分析を通して事実を見える化したうえで報告してみてはいかがだろうか。「偉い人には分からんのです」と胸を張って説き伏せていただきたい。

 しかし、マネジメントは決裁・判断が仕事であるので、Notesのワークフローが必須ツールになっている状況では、意外と使いこなしている割合が高い場合もあるので注意していただきたい。

代表的な仮説

Notesは全社情報共有基盤であるので、どのような職位であれ、利用度は高いに違いない



■本社/支社/グループ会社

 昨今、これまで各事業所に点在していたWindows NTベースの小規模Dominoサーバを本社管轄のデータセンターに集約したという話をよく耳にする。また、グループ経営やシェアードサービスの名の下に、グループ企業共通のNotes環境を使用している場合もある。

 そのような状況では、共通のNotes環境ユーザーでありながら、やはり本社・支社/グループ会社でNotesの活用方法も変わってくる。ありがちなのは、本社が情報を発信、支社・グループ会社が消費する構図だが、現場力の高い組織では、支社・グループ会社の横の連携や本社へのレポートが適切に機能しているものである。

代表的な仮説

ほとんどの情報は本社がコントロールしており、営業店同士の勝手な横の連携は起こっていないはずである



■正社員/非正社員

 近年、非正社員の比率はあらゆる業界・職種で高まっている。また、任せる仕事の範囲も広がっており、NotesIDを発行している組織も多いだろう。業務における非正社員の役回りの重要性を十分に認識せず、情報へのアクセス権を正社員の特権としているような企業の未来は明るいものではない。

 実態調査をしてみると、Notes以外の情報源を持ち、情報飽和状態にある正社員よりも、情報が枯渇している非正社員の方がNotes利用度が高い場合もある。社内人脈などの代替手段を持たない非正社員にとって、Notesは重要な情報リソースなのである。

 しかし、情報漏えいの危険が高いのも現実である。セキュリティの確保には、ガチガチの権限管理だけに固執せず、何かあった場合の原因追究能力で担保し、ある程度の自由度を持たせることも必要であろう。さじ加減の難しい判断には、関係者の納得感を高めるためにも利用状況を見える化することが非常に重要である。

代表的な仮説

非正社員は正社員に比べコミットメントが低く、コストを掛けてライセンスを提供する必要はない



■新卒採用/中途採用/新入社員/退職間際

 転職経験者の方はすでに経験していることと思われるが、同期の桜に支えられている新卒組とは情報流通のやり方が大きく異なる。中途入社直後、右も左も分からないときに、Notesのコンテンツがその道しるべとなり得ているだろうか? 期待したほどのアクセスがない場合、Notes利用方法の研修内容やコンテンツ自体に問題があることも考えられる。

 また、退職間際のユーザーによる一括レプリカのようなアクセスは非常に危険である。性悪説に基づけば、社外に情報を持ち出される危険性が高いことから、集中的に監視すべき対象であろう。アクセスログを取得しておくのは当然として、未然に出来心を鎮めるために、ログを取って監視していることを本人に伝えてもよいかもしれない。

代表的な仮説

Notesには新入社員に有益な情報が多く掲載されており、入社後間もなく業務知識に乏しい人々のよりどころとなっているはずである



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