ストレージ・ネットワークの拡張上司のためのストレージ・ネットワーキング (5)(2/2 ページ)

» 2006年09月21日 12時00分 公開
[辻 哲也,ブロケードコミュニケーションズシステムズ]
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拡張における手法とそれぞれのメリット・デメリット

 では、実際にはどのようにしてSANを拡張すればよいのだろうか。大きく分けると、2つの手法がある。

 1つは、図2のように既存SAN同士をスイッチ間カスケード接続(Inter Switch Link : ISL)して「統合された巨大なSAN」を構築する手法である。この場合、複数スイッチから構成される巨大なファブリックが構成される。この際、サーバおよびストレージを収容する「エッジスイッチ」と、エッジスイッチ間をつなぐ「コアスイッチ」から構成される「コア・エッジ」型のトポロジーで接続し、拡張性に配慮するケースが多い。全体が単一のファブリックとなるため、SANの一元管理が可能となり、統合後の運用管理コストは低い。しかし、統合に伴って必要となる作業負荷は大きい。例えば複数SANを統合して大規模SANを構成する場合には、以下の点に注意が必要である。

・スイッチに空きポートが確保されているか

 スイッチをカスケード接続する際には、カスケード用のポートが必要になる。つまり、SAN拡張に伴ってスイッチを増設する場合にはあらかじめISL用ポートを考慮しておく必要があり、すべてのポートを使い果たす前に拡張作業を実施しなければならない。冗長化とパフォーマンス向上のため、ISLは複数本用いるのが一般的である。またスイッチをよりポート数の多いものと交換するようなケースでは、既存スイッチの活用方法についても検討しておくべきだろう。

・それぞれのファブリックのゾーン情報に不整合がないか

 それぞれのファブリックでは、デバイスのアクセス制御のためにスイッチで「ゾーニング」を行うのが一般的である。ファブリックを統合する際にそれぞれのファブリック同士のゾーン情報に不整合があると、ファブリック統合が成功しないため、事前に確認しておく必要がある。

・スイッチのドメインIDに重複がないか

 ファブリック内のそれぞれのスイッチには「ドメインID」と呼ばれる番号が割り当てられている。この番号はファブリック内で一意である必要があり、ファブリックを統合する前に重複がないかを確認しておく。重複があった場合には、統合前に変更しておかなければならない。

・スイッチのパラメータが一致しているか

 FCスイッチではさまざまなパラメータを設定できるが、一部のパラメータはファブリック全体で統一しておく必要がある。これらのパラメータがスイッチ間で一致しない場合、ファブリック統合が失敗するため、こちらも統合前に確認のうえ、必要に応じて変更しておく。

・接続構成が変更しても、サーバOSがストレージを問題なく認識できるか

 スイッチの構成変更に伴ってドメインIDが変更されるケースなどでは、サーバのHBAやOSによっては、ストレージデバイスを再認識させるための設定が必要となる場合がある。サーバ停止を伴うことになるため、事前確認が欠かせない。

 上記の注意点は、使用しているスイッチやサーバOS、ストレージ装置などにより違いがあるが、いずれにしても事前に調査しておくべき事項だ。

 もう1つの手法は、ファブリック同士を「SANルータ」と呼ばれる機器で接続し、ファブリックを統合することなく、必要なデバイスのみを共有するものである。例えばバックアップ用のテープライブラリを、ほかのファブリックからアクセス可能にするといった使い方ができる。SANルータによって、それぞれのファブリックは一種の「サブネット」のように位置付けられる。各ファブリックは物理的にはSANルータ経由で接続(結線)されているが、論理的には独立して存在している。つまり、ファブリック内のルーティングアルゴリズムであるFSPF(Fabric Shortest Path First)の計算処理や、ファブリック内で機器の状態変更を通知するRSCN(Registered State Change Notification)といったファブリックイベントは、SANルータを超えては伝播しない。また、それぞれのファブリックにおいてゾーン情報やネームサーバ情報を保持することになる。このようにファブリック同士をSANルータで接続した巨大なSANインフラを、当社では「メタSAN」(Meta SAN)と呼んでいる(図5)。

ALT 図5 SANルータによるメタSANの構成

 メタSAN内のファブリックは統合されていないため、すでに接続されている機器に対する影響はない。従って、上記で説明したようなファブリック統合時の注意点に関しても、SANルータ接続環境では考慮しなくてよいため、より簡単に実現できる方法である。しかしファブリックは独立して存在し続けているため、個々のファブリック単位で引き続き管理を行う必要がある。「管理負荷を少なくする」という観点では、SAN統合に比べてメリットはない。

 最終回となる次回は、「ストレージ・ネットワークはどこへ向かうのか?」と題し、今後この分野で登場してくると思われる、さまざまな技術を紹介しようと考えている。最終回もぜひお付き合いいただきたい。

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