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» 2006年10月14日 12時00分 公開

目指せ!シスアドの達人−番外編(4):上司にITを使わせる秘訣は1ページのマニュアル!? (1/2)

前回、坂口が作ったマニュアルをテストしていた谷田だが、すぐに行き詰まってしまう。そこに現れた松嶋の指摘によって、坂口のマニュアルには「複数の操作を1文で説明しており、分かりにくくなっている」という欠点があることが分かった。その後、谷田の協力もあり、坂口はその欠点に気付き、ついにマニュアルを完成させるが……。

[石黒由紀(シスアド達人倶楽部),@IT]

いよいよ坂口が作ったマニュアルの真価が問われるときが

 坂口と谷田が協力して作ったマニュアルが完成してから、1週間後の新営業支援システムプロジェクト定例会。議題を一通り終えたところで、坂口が口を開いた。

坂口 「皆さん、お願いがあるんです。今後の討議をスムーズに進めたり、情報共有したりする手段として、やはり電子会議室を使いたいんです。いまからマニュアルを配りますので、これだけ覚えて使ってみませんか?」

 そういいながら、反論が出るすきを与えず、坂口はマニュアルを配布した。

松下 「え? マニュアルって、これだけ? 紙1枚じゃない。坂口、さぼったんじゃないでしょうね」

坂口 「ポイントを絞り込む方が、難しいんですよ。まぁ、だまされたと思って、やってみてくださいよ」

 坂口の配ったマニュアルは、A4判1枚だけだった。マニュアル配布といわれて、てっきりボリュームのある紙の束を渡されるのかとうんざりしていたらしいメンバーも、逆にこれには肩透かしを食らったらしい。

岸谷 「こんなもんで、本当に使えるようになるのか?」

坂口 「なります!」

 いぶかしげな岸谷にも、坂口はきっぱりといい切った。坂口は先日の「宿題」に対し、自分の家にあるマニュアル類を並べて、アイデアを練ったのだ。そして、携帯電話やデジタルカメラのように多機能で、使い手も多種多様である製品には、簡易版のマニュアルが付いていることに気が付いた。

 1枚または数ページだけで使い始められるように情報をまとめ、イラストなどを多用した、初心者向けの「クイックスタートガイド」とでもいうべきものだ。まず、こちらを読んで基本機能から使い始め、さらに詳細が知りたい場合は、機能を網羅したマニュアルを読めばいいようになっている。

 自分の作るマニュアルは、サンドラフト版クイックスタートガイドだ、と坂口は考えた。2、3度見ながら操作をすれば覚えられるぐらいの情報に絞ることで、定着も狙っている。

 通常のマニュアル作成では、このように、それぞれの役割と位置付けを考えてマニュアルを分冊し、体系付ける作業を“企画”フェイズで行うということも、松嶋から教わった。

坂口 「分厚いマニュアルだと読む気がしないけど、逆に少ないと心配になったりしますよね。でも、大丈夫です。これだけで、絶対に使えるようになります。いまから、このマニュアルと実際の電子会議室を使って説明しますから、ぜひ30分だけ、僕に時間をください。お願いします!」

 深々と頭を下げる坂口の熱心な言葉に、皆もそれなら少し説明を聞いてみようかという気持ちになった。本当に紙1枚のマニュアルだけで使えるようになるのか、興味もある。

 坂口は、用意してきたノートPCをセッティングし、電子会議室を開いた。

坂口 「岸谷さん、このタイトルを見て、興味を引かれるものはありますか?」

 坂口は、事前にダミーの会議室を用意し、あらかじめいくつかの書き込みを作っておいたのだ。岸谷が興味を持ちそうな発言も用意済みだ。案の定、岸谷はその発言に目を留めた。

坂口 「じゃあ、読んでみましょう。マニュアルの表側を見てください」

 マニュアルの片面には、発言を読むために必要な操作が書いてある。文字入力が苦手だといっていた岸谷や藤木を想定し、マウスだけで操作ができること、タッチ数を少なくして操作を効率よく行えること、この2点を意識して作ったので、岸谷も楽に操作ができたようだ。

 ほかのメンバーも、岸谷を取り囲んで、画面とマニュアルを熱心に見比べている。

 通常、製品に付いてくる操作マニュアルは、1つの目的達成のために複数の操作方法、例えば、メニューを選ぶ、ボタンで操作する、ショートカットを使う、などがある場合、「間違いなく操作できる方法」を優先して説明する。

 これを坂口は、「一番タッチ数の少ない方法」に書き換えた。ただし、この操作方法は、間違いに気付きにくい点や、一度間違えるとリカバリが難しいといった弊害がある。実際、谷田の操作ミスも、これに起因するものだった。それならば、操作ミスが出やすいと認識したうえで書き方を工夫し、教育でフォローすればよいと判断したのだ。

坂口 「読むだけなら、とても簡単でしょう?」

岸谷 「なるほど。自分の知らないところで、こういう話が出ているよりも、いつでも見られるところに書いてあれば、便利かもしれないな」

坂口 「そうですね。これに答えていただけると、発言者も喜ぶと思いませんか?」

 岸谷が読んでいた発言の内容は、2つの案を出してどちらが良いと思うか、意見を請うものだった。答えやすさを考慮して準備した内容だ。坂口の意図を察したらしい情報システム部の福山が、助け舟を出してくれた。

福山 「岸谷さん、僕らもときどき配送センターに意見を聞きたいときがあるんですよ。Yes、Noや、数値のようなものだけでもいいので、教えていただけると助かるんですが」

岸谷 「それぐらいなら大丈夫だ」

坂口 「じゃあ、この発言に答えてもらえますか? コメントの付け方は、裏に書いてありますから」

 どうにか操作を終えた岸谷は、坂口と福山の顔を交互に見た。

岸谷 「これでどうだ?」

 たった1行のコメントだが、坂口も福山も大きくうなずいた。岸谷も、まんざらではなさそうだ。

 電子会議室を情報共有に役立てるには、やはり発信者が多く、新しい情報が提供されていることが一番だ。少しずつでも参加してもらえれば、これほどありがたいことはない。今後、書き込みの質が上がってくるところまで持ってこられれば、大成功だ。

坂口 「いまの感じで参加していただければうれしいです。ありがとうございました!」

 坂口は、さらにグループウェア製品に付いてきたマニュアルの目次を印刷してみんなに配布した。今回レクチャーした以外の操作は、マニュアルを活用して行えるよう、読み方を説明するためだ。

坂口 「今回説明した部分は、目次に丸が付けてあります。ほかにもいろいろな機能があることが、この目次から分かるでしょう? もし、もっといろいろなことをやってみたかったら、これを参考にしてどんどん使ってみてください。いま時間がある方は、残っていただければ、追加の説明もします。皆で電子会議室を使って、たくさん話をしていきましょう!」

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