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» 2006年10月21日 12時00分 公開

何かがおかしいIT化の進め方(28):有能なプロジェクトマネージャを育てるには(1) (1/3)

団塊の世代が定年を迎えようとしている。しかし、団塊の世代が持っているノウハウは若い世代に受け継がれているのだろうか。今回から3回にわたって、2007年問題ともいわれているノウハウ継承の問題について、特にプロジェクトマネジメント能力の育成に焦点を当てて考えていく。

[公江義隆,@IT]

 団塊の世代が組織から去りつつある現在では、プロジェクトマネージャの量的不足・能力不足を懸念する企業が多い。システム開発のプロジェクトマネジメント能力の育成について、今回から3回にわたって考えてみる。

問題とその背景

団塊の世代が歩んできた道

 団塊の世代を中心にその前後を形成する世代は、日本企業のIT化の進展とともに、その中で能力をはぐくんできた。この世代の人たちが社会で活躍を始めた1970年代は、日本企業が本格的に情報システム化に取り組みだした時期でもある。

オンライン化やデータベース化などにより、情報システムが業務の形態を抜本的に変えていく中で、文字通りそのけん引役として新しい技術を適用していく過程を通じて、自らの能力を育成してきた。

 同時に、団塊の世代が初めて経験するこれらの情報システム開発プロジェクトの運営や管理には、それ自体に新しい考え方や方法論が求められた。時代の先兵であったから周囲に指導者を求めることは難しかった。幸いにして優れた先輩が身近にいた場合にはそのまねをし、そうでないほとんどの場合には、自分たちで調べて、考え、試行錯誤を重ねながら管理技術を自らのものにしていった。このようにして、次々に遭遇する新しい問題を題材に、苦労しながら階段を1段1段上るようにして力を付けていった。

 息をつく間もない上り続けの階段であったかもしれない。しかし、その1段1段は、その時々の「自分の身の丈を少し上回る」水準の、能力育成には格好の課題として提供し続けられてきたという見方もできる。

 その一方で、走り続けてきた団塊の世代は、自分たちが身に付けてきたプロジェクトマネジメントのノウハウを、部下を育てるために方法論として整理したり、知識の体系化を考える余裕や機会はほとんどなかった。「その場その場で必要なことを調べて、考え、経験して身に付けてきた」ということ以外に、具体論を体系的に語れる人は少ない。

先代が到達したレベルへ〜短期間でキャッチアップを迫られるいまの世代

 一方、団塊の次の世代、そのまた次の世代の人たちには、20年〜30年間かけて団塊の世代のベテランたちが到達したレベルへ、それよりはるかに短い期間で到達すること――つまりはるかに急な階段を駆け上ることが求められている。さらに、20年〜30年前には「初めてやることだから」と多少の失敗は大目に見てもらえる余裕が組織にあったが、現在はそんな雰囲気ではない。

 またこの期間に団塊の世代が先頭の役割を担い続けた結果、次の世代には良い仕事や役割はなかなか回ってこなかった。10歳年を取って肩書が少し変わっても、組織の中での実質的な立場や、やっている仕事の内容は10年前とあまり代わり映えせず、「相応の能力を育てる機会が見付けられないまま、時間だけはたっていく」という環境の中で過ごさざるを得なかった人も少なくない。「団塊の世代がゴソッと抜けた後を、急に“引き継げ”といわれても、ハードルが高過ぎる」というのが本音であっても不思議ではないのだ。

 ある意味では、目先の手しか打ってこなかった経営やマネジメントの不作為による結果という面もある。「経験不足、指導者不足、やがて人がいなくなる」(JUAS?企業IT動向調査2005)がプロジェクトマネージャ問題の現実だ。

団塊の世代から学ぶべき、“自ら問題解決に立ち向かう姿勢”

 団塊の世代が歩んできた、いわゆる「徒弟制度」的な方法では時間がかかり過ぎて、また効率面からも、いま求められている問題解決には合わないことが明白だ。ぼやいていても始まらない。いまの世代が団塊の世代から学ぶべき点は、「自分で考えて自ら問題解決に立ち向かっていった姿勢」だ。

 最短時間で能力育成が図れる新しい方法を考えて、覚悟して実行することが必要なのだ。それには求められる能力の内容を整理して、知識として修得できることと、ノウハウとして経験に期待すべきことを明確に区別して、後者に対して最小限の経験を有効に生かせる仕組みを自ら作り上げるしかない。

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