地理的条件からのデータセンター選び間違いだらけのデータセンター選択(4)(2/2 ページ)

» 2006年10月26日 12時00分 公開
[近藤 邦昭,まほろば工房]
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接続可能なネットワークの種類

 接続可能なネットワークに関する条件は、地理的な条件でもありネットワーク的な条件でもあります。

 コロケーションを提供しているデータセンターの多くは、顧客にインターネットへの接続性を提供しています。顧客が自ら選んだプロバイダなどと接続することも可能な場合があります。

 データセンターが提供する接続性を利用する場合は、その接続されるネットワークのアップストリーム(上位プロバイダ)やネットワーク構成などを検討し、十分なネットワークサービスが得られるかを検討します。これで十分でない場合は、データセンターが提供する接続性を利用せずに自らほかのプロバイダと接続するか、データセンター提供の接続性と併用するかのいずれかで構築します。

 ほかのプロバイダを利用する場合には、データセンターの接続条件も併せて以下の点を考慮する必要があります。

  • キャリアフリー・データセンターか?
  • ISPのPOIはあるか?
  • IXへの接続は容易か?

 以下では、これらのポイントについて解説します。

キャリアフリー・データセンター

 「キャリアフリー」という言葉の「キャリア」とは、電話会社を意味します。ISPと接続する場合、接続先のISPが提供するネットワーク設備まで、データ回線(専用回線)を利用して接続する必要があります。このデータ回線は電話会社が提供しているサービスなのでデータセンターにその電話会社の設備が引き込まれている必要があります。

 データセンターは、電話会社と関係のない独立した会社が運営しているケースもあれば、電話会社が直接運営している場合も多くあります。

 電話会社が直接運営しているようなデータセンターでは、他社の電話会社の回線の引き込みを許していない場合が多く、おのずと利用する電話会社が限定されます。

 同様に接続しようと思っているISPも同じで、純粋にインターネット接続サービスを提供している独立した会社もあれば、電話会社が運営するISPもあります。

 ISPもデータセンターも独立であれば、おおむねその間を接続するデータ回線も自由に選べますが、どちらかが電話会社のサービスであれば、その会社が提供するデータ回線を選ぶ必要が出てきます。特に、接続しようとしているISPと、設置しているデータセンターが異なる電話会社によって運営されているような場合は、そもそも接続できないという場合も出てきます。

 自分のネットワークを中心に考えた場合、自分のネットワークにいくつものネットワークを自由に接続できるように考えたいと思うのが自然ですので、設置するデータセンターに接続するデータ回線の電話会社の制限がないことが一番望ましいといえます。このように、電話会社の制限がないことを「キャリアフリー」といいます。

ISPのPOI

 しかし、データ回線を引くと余計なコストが発生してしまい、データセンターが提供するサービスを利用するのに比べると非常に高価になってしまいます。

 このような不便に対応するため、いくつかのISPでは、データセンターの近く、または、データセンターの建物の中に顧客のネットワークを接続する接続点を持っている場合があります。この接続点をPOI(Point of Interface)といいます。

 ISPとのPOIは、データセンターと同じ建物内、もしくは同じフロアに用意されている場合が多く、そこへの接続は、ビルの配管を利用して光ファイバなどで直接接続ができるようになっています。このような、ISPとのPOIは、データセンターによっては複数社が用意されている場合がありますので、プロバイダやデータセンターにどのようなISPが利用できるかを事前に確認しておくとよいでしょう。

IXへの接続

 多くのネットワークへの接続を検討している場合には、IXへの接続も検討の対象となるでしょう。IXへの接続は、プロバイダが用いるようなBGPという経路制御プロトコルを利用することが前提となるためハードルが高くなりますが、複数のISPやネットワークと相互接続してネットワークの冗長構成を強固にすることができます。

 データセンターによっては、同一ビル内にIXが設置されている、またはIXへのPOIが提供されている場合がありますので、IXへの接続を希望する場合には、事前にIX事業者に確認しておくとよいでしょう。

 ただし、IXに接続したからといって、すぐにIXに接続しているほかの事業者とネットワークの相互接続ができるかというとそうではなく、IXに接続した後に、IXに接続しているほかの事業者と個々に交渉し、BGPによる接続をする必要がありますのでご注意ください。

 次回は、最初に挙げた検討点から、データセンターの電源設備に関してお話しし、データセンターが提供するネットワークの検討ポイントについて解説します。  

著者紹介

▼著者名 近藤 邦昭(こんどう くにあき)

1970年北海道生まれ。神奈川工科大学・情報工学科修了。1992年に某ソフトハウスに入社、主に通信系ソフトウエアの設計・開発に従事。

1995年ドリーム・トレイン・インターネットに入社し、バックボーンネットワークの設計を行う。

1997年株式会社インターネットイニシアティブに入社、BGP4の監視・運用ツールの作成、新規プロトコル開発を行う。

2002年インテック・ネットコアに入社。2006年独立、現在に至る。

日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ(JANOG)の会長も務める 。


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