統制ニーズで注目の電子メールアーカイブ製品ストレージ関連製品データベース ソフト/ハード

» 2006年12月02日 12時00分 公開
[三木 泉,@IT]

 法令順守や内部統制をきっかけとして電子メールアーカイブ製品が喧伝されるようになってきました。ではいったい、電子メールアーカイブとは何なのでしょうか。バックアップとはどう違うのでしょうか。

 一般的なバックアップは、データをそのまま読めるような形で保存するわけではありません。リストアという作業を行って保存データをバックアップ対象のコンピュータに戻すことによって初めて、こうしたデータにアクセスすることができます。ユーザーが過去にサーバ上から削除したメールを完全に復活できない場合もあります。バックアップはサーバの障害復旧を目的とするものであるため、こうした制限があるのは当然です。

 これに対し、電子メールアーカイブでは、送受信されるメールをすべてコピーして長期保存します。メールのコピーは自動的かつ継続的に実施され、管理者やエンドユーザーは介在しません。コピーされた電子メールデータを対象にインデックスが作成され、保存されたデータすべてを対象とした検索と読み出しが、即座に行えるようになっています。いったん保存したメールに対し、削除や改ざんができないような機能を備えた製品もあります。

 こうした機能のため、米国などでは裁判における法的証拠としてメールを利用する備えとして、あるいは法令に定められた要件を満たすために電子メールアーカイブ製品を利用してメールを長期保存するケースが多いようです。

 これだけだと日常業務におけるメリットがないようですが、電子メールをアーカイブすることで、エンドユーザーが自分自身の過去のメールを適宜検索して利用できるようになれば、エンドユーザーにとっての利便性は向上します。誤って自分のメールを消してしまった場合にも、アーカイブから即座に該当メールを参照することができ、エンドユーザーにとって時間の節約になるし、ユーザーがセルフサービスで自分の問題に対処できるので管理者の手間もはぶけます。さらに、例えば過去1年にわたる電子メールを、添付ファイルに含まれる文字列を含めて統合的に検索できるのであれば、これはエンドユーザーのためのナレッジ支援ツールだという位置付けさえ可能になります。

 一方で、電子メールアーカイブ製品を使うと、電子メールサーバのストレージ容量を抑えることができます。添付メールの肥大化などで各ユーザーのメールボックス容量を拡大せざるを得ず、ストレージの拡張が常に迫られるような状況に陥っている管理者にとっては福音です。多くの電子メールアーカイブ製品では、メールを圧縮して保存するため、アーカイブに必要なストレージ容量が小さくなります。

 電子メールアーカイブ製品はさまざまなベンダから提供されていて、以下のような点に違いが見られます。

  • 製品配置とアーカイブ対象(社外との送受信メールだけか、社内メールも含むか)
  • 選択的アーカイブの可否
  • データ量の削減効果
  • インデックスサイズ、インデックス作成速度
  • クライアントからの検索可否とユーザーインターフェイス
  • 添付ファイルの文字列検索
  • 検索オプション(自然文検索など)
  • 検索速度
  • 改ざん防止、暗号化機能
  • アクセス履歴保持機能
  • 拡張性

メールデータ量をどれだけ削減できるかもポイント

 電子メールアーカイブ製品は、まずどこに配置するかによって大きく2つに分類することができます。電子メールサーバとインターネット接続の間に配置するものと、そうでないものです。前者は電子メールフィルタリング機能を兼ね備えていたり、電子メールフィルタリング製品のオプションであったりすることがあります。「電子メールフィルタリング」とは、電子メールサーバからインターネットへ送出されるSMTPトラフィックを捕捉して、送信メールに含まれる文字列をチェックし、不適切な文字列を削除したり、特定メールの送信をブロックするなどの機能を指します。受信メールについても不適切なものを削除する機能を持ったものがあります。

 前者の場合、アーカイブの対象となるのは外部との間での送受信メールです。社内ユーザー同士のメールは対象となりません。また、SMTP中継の設定が必要であれば、導入作業が多少面倒になります。後者の場合では、メールアクセスプロトコル(POP、IMAP、MAPI)で電子メールサーバにアクセスするなどしてデータを吸い出します。こちらの場合は社内、社外を問わずすべてのメールをアーカイブ対象とすることができます。後者の製品には、電子メール以外のデータ(一般的なファイルなど)もアーカイブできる製品があります。

 特定の条件を満たすものだけをアーカイブの対象にできるように、アーカイブ対象を限定できるフィルタリング機能を備えた製品もあります。

 データ量の削減効果は電子メールアーカイブ製品のTCOを左右する大きな要因です。電子メールアーカイブ製品で提供されている機能には、データそのものの圧縮に加え、重複する同一のメールを削除してしまい、単一のメールへのポインタに置き換える機能(「シングルインスタンス化)などと呼ばれる)などがあります。データ量削減ではさらに、すべてのデータを細かなブロックに分けて比較することで、完全に同一ではなくともほとんど同一なデータの重複をストレージにおいて排除するテクニックもありますが、ここまでの機能を現時点で実装している製品は少ないようです。こうした機能を持つファイルデータ量圧縮専用のアプライアンスを組み合わせて使うことも考えられます。

インデックス作成や検索に製品間の違いが出る

 インデックス作成と検索については、まず作成インデックスファイルの大きさや作成速度に、製品による違いがあります。検索機能については、エンドユーザーによる利用が可能かどうかを確認する必要があります。エンドユーザーによる利用を実現するためには、アーカイブされたデータに対してユーザー認証が適用されなければなりません。

 エンドユーザーが利用できるインターフェイスとしては、Webブラウザで検索画面にアクセスできるもののほか、ユーザーのメールボックスに実データへのポインタが残されることで、電子メールソフトウェアからそのまま検索やアクセスができるようにしたものがあります。

 検索対象として添付ファイル内の文字列を含められるようにした製品は多いのですが、検索対象のファイル形式が限定されているものもあります。

 検索機能は、製品間での違いが大きいポイントです。FROM、TO、CC、BCC、件名の各項目や、本文や添付ファイル内の文字列検索は一般的ですが、このレベルの検索機能も持っていない製品も存在します。一方、文字列検索だけに留まらず、自然文入力による類似検索なども実現しているものがあります。

  メールデータ改ざんや削除の防止は、監査や法的証拠としての利用のためには重要ですが、これについては電子メールアーカイブ製品自体に機能として備わっているものと、改ざん防止効果のある記憶媒体、つまり「WORM」(Write Once, Read Many)と呼ばれる一度書き込んだデータへの修正が不可能なディスクストレージやリムーバブルメディアの利用を可能にすることで対処しているものもあります。また、監査の正当性を確保するために、アーカイブへのアクセス履歴を保持する機能を備えた製品もあります。

 最後に、拡張性は電子メールアーカイブ製品で非常に気になるポイントです。どのようなストレージ装置が利用できるか、インデックスの整合性を保ったまま、アーカイブ用のストレージの容量をどのように拡張していけるのか、ストレージ装置間のデータの移行はどのように実現できるのか、といった点が、実際の運用に響いてきます。

電子メールアーカイブ製品一覧
(それぞれの製品名をクリックすると説明を表示します)

Mirapoint ComplianceVault
アプライアンスとしてオールインワン・ソリューションを指向

Enterprise Vault
Exchange Serverに関して特に豊富な機能を誇る

Livelink for Email Archiving & Monitoring
同社アーカイブ製品群の1つとして強力な監査機能を持つ

HDE Mail Filter 3
メールフィルタ機能と組み合わせて提供

WISE Audit Version 3.2
監査機能とアーカイブを統合的に提供

TERAFILE Mail Archive
高機能なデータベースを生かした検索機能

Mail Watcherメールアーカイブオプション
豊富なメール監視にアーカイブ機能を追加

ZipLip Unified email Archival Suite
暗号化アーカイブ機能も備える

MailBase
コスト効率と使いやすさも特徴

SAVVY/MailRetriever
強力な全文検索機能が大きな特徴

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