Amazonのリコメンド機能と天気予報は同じ―捜査技術の第6条「捜査のプロは分類能力が極めて高い」―ビジネス刑事の捜査技術(11)(1/3 ページ)

蓄えた情報や知識を体系化すると、新たに出てきた問題が過去のどの情報や知識に関係するかを推理できるようになる。今回は、捜査の技術第6条「捜査のプロは分類能力が極めて高い」について、データに基づいて推測することの重要性を考える。

» 2006年12月13日 12時00分 公開
[杉浦司,杉浦システムコンサルティング,Inc]

 蓄えた情報や知識を体系化すると、新たに出てきた問題が過去のどの情報や知識に関係するかを推理できるようになる。これは、プロファイリングやリーディングのベースとなっているテクニックだ。最近の天気予報の当たる確率が高いのも同じ原理である。

 新たに取引が始まった顧客が、次に持つ関心事を先回りして推測し、リコメンデーションメールを送るインターネット事業者が操っているCRMシステムもまた、同じ原理だ。

 世の中には、「それと似たものがまったく存在しない」ということはまずあり得ない。人であれば誰か似ている人がいるし、見たことのないものであっても説明がつかないということはまずないだろう。本当の意味での未知との遭遇はなかなか体験することはできない。裏返せば、初めて出会った人やものであっても、過去の情報や知識から推測することができる可能性が高いということだ。

天気予報はなぜ当たるのか?

 現在の天気予報は、世界中から集められた観測結果を数値データに変換し、物理学と統計学を組み合わせた数値解析を行う数値予報と呼ばれるものとなっている。

 過去の観測結果から得られた天候変化の傾向をパターン化(実際には非線形偏微分方程式による数値モデル)し、現在の観測データと比較することによって、起こり得る可能性の高い天候変化を推測しているのである。

 地球上のすべての天気要素を観測することは不可能であり、観測結果は刻々と変化するため、予測する時点が先になればなるほど不確実性は高くなっていく。高い精度を求められる宿命を持つ天気予報では、少しでも外れたら文句をいわれるが、これがビジネスのこととなると話が違う。

 6割〜7割の確率で当たれば、競争力は圧倒的となるだろう。野球選手の打率は3割あれば一流となる。だが、好打者の条件は得点機会での高打率である。実は、プロファイリングやリーディングする者のヒット確率も同じようなものなのだ。

では、プロファイリングやリーディングはなぜ当たるのだろうか

 映画やテレビの捜査場面でよく登場するのが、プロファイラーやリーダーと呼ばれる犯人の心理を読み、追い詰めていくというものである。当たる場面ばかり目に付くので、なぜこんなに予言者のように見知らぬことが手に取るように分かるのか不思議に思ってしまう。

 しかし、彼らがやっているのは、予言者とは正反対で、ものすごく細かい反応テストを繰り返してターゲット像を絞り込んでいくという、粘り強い分析活動なのだ。最初はごく限られた物証や証言を基にして、犯人像の仮説を立てる。

 それを聞いた捜査員が捜査を行う中で新たに得られた物証や証言から、ターゲット像が正しかったかどうかを検証し、正しかった場合はさらに絞り込むためのより詳細なターゲット像を定義し、誤っていた場合は誤っていたという情報によって、より絞り込むことができた新たなターゲット像を定義するのである。

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