鍵はリーダーの力量と気になるお姉さまの魅力(第4話)目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(4)(2/4 ページ)

» 2007年02月28日 12時00分 公開
[三木裕美子(シスアド達人倶楽部),@IT]

“井の中の蛙”になるな

 八島は、坂口が戻るのと入れ違いで部署に戻ってきた。外部委託ベンダとの定例会議は、毎回淡々とした進ちょくの報告で、八島には退屈な時間以外の何者でもなかった。

谷橋 「主任、先ほどまで坂口さんと打ち合わせをしたのですが、詳細はまた別途ミーティングを設定することとなりました」

八島 「あぁ、そうなの。ま、適当に協力してやってよ。でも現業を優先にすることは忘れんなよー」

谷橋 「はい。それと、主任にこれを渡すようにとのことで」

八島 「はいはい、ご苦労さん」

入社以来、一貫して情報システム部の現場で仕事をしてきた八島には、社内SEとしての自負があった。そんな八島にとっては、子会社から来たばかりで何も知らぬ坂口が新システムのプロジェクトを実質的に任せられたのがしゃくに障ったし、目障りだったのだ。

八島 「(まったく……)」

 手にした資料はRFIDを取り入れ、新システムを構築したA社の事例資料であった。

『A事例(要約)』

 A社は90年代にクライアント/サーバシステムを一斉導入し、オフィスのOA化が一気に加速したが、小規模システムの乱立により、ランニングコストの上昇や、経営戦略や外部環境の変化に柔軟に対応できず、ビジネス機会の損失につながっていた。

 そこで新たなシステムを構築すべく社内プロジェクトを立ち上げ、1年半後にシステムを一新した。

 A社は全国に販売網を持つ中堅流通チェーンであるが、今回の新システムではRFID技術を取り入れたことで、全国の流通網におけるトレーサビリティを実現し、プロダクト管理の一元化と部門間の情報共有に大きな効果をもたらした。

<システムの概要>

 配送管理および在庫管理業務にRFIDシステムを導入。

 製品にICタグを付与し、ロット単位や配送単位での管理を実施。入荷・配送・検品チェックはICタグをリーダーで読み込ませることで行う。

 ICタグから読み取られたデータは、メインコンピュータを経由して社内の受発注システムに反映。

 社内での製品管理品質の向上と、情報共有を限りなくリアルタイムとすることで、顧客ニーズへの対応を早めることが狙い。

<プロジェクトリーダーのコメント>

 A社システム部企画課長の安部寛氏は新システム構築プロジェクトを振り返りこう語っている。

「(中略)当社の場合はシステムと業務が有機的に連携していなかったため、今回のプロジェクトでは全社的な観点での業務プロセス見直し、およびシステム構築が求められた。そのためには従来のシステム・業務プロセスとは違う、新たな視点をプロジェクトメンバーで共有することが、システム構築の成功の重要なファクターだった。第三者の視点という意味では、外部のコンサルやSI業者を活用することも選択肢ではあるが、組織の風土を変える意味では『チェンジリーダー』として周囲を巻き込みながら問題を解決していける人材を発掘し、活用することでも十分可能だと考えている。ヒト・モノ・カネとはよくいわれる言葉であるが、組織とITをうまく結び付けるのはやはりヒトがポイントではないか。(以下省略)」

八島 「システムの乱立ね……。どこも同じだな」

 俺ももうこの仕事を始めて14年か……。そろそろ頭がさび付いてきている時期なのか……。資料から目を見上げフロアで黙々と仕事をするメンバーを見ながら、八島は坂口の顔をなぜか思い浮かべた。

 そのころ……。

 IT企画推進室では、伊東が課題整理シートと格闘していた。書いてある内容もよく理解できないままの慣れない作業は、なかなかはかどらない。ふと気が付いて時計を見ると、12時を過ぎていた。

伊東 「(もうこんな時間か……。取りあえず、昼休みにしようかな)」

 最寄りのコンビニは、ランチを買うサラリーマンやOLでごった返している。温めてもらった弁当を下げてオフィスに戻る途中の書店で、伊東はふと立ち止まった。

伊東 「(そういえば、坂口さんはシスアドだっていってたけど、シスアドってなんだろ?)」

 ふらふらと書店に入り、きょろきょろ辺りを見回すと、一角に設けられた情報処理試験のコーナーで「シスアド」とタイトルの付いた本を見つけた。

伊東 「(なになに? 『シスアドとはユーザー企業において、情報技術に関する一定の知識・技能を持ち、部門内またはグループ内の情報化をエンドユーザーの立場から推進する者』か。何かよく分からないけど、難しそうだなぁ……。僕なんて、パソコン使うのがやっとだしなー。やっぱ坂口さんってすごいよなー)」

 伊東の手にした本には、シスアドに求められる役割や必要な知識、そして情報処理技術者試験に出題される内容が盛り込まれていた。

伊東 「(お、課題整理の考え方なんかも書いてある。そういや坂口さん、問題と課題点ってシートに作ってたよな)」

 そこには、総務にいたころはまったく知らない世界が広がっていた。温めてもらった弁当は冷めかけていたが、そんなことも忘れて伊東は立ち読みを続けた……。

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