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» 2007年02月28日 12時00分 公開

鍵はリーダーの力量と気になるお姉さまの魅力(第4話)目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(4)(4/4 ページ)

[三木裕美子(シスアド達人倶楽部),@IT]
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気になるお姉さまの魅力

 会議の翌日。

 IT推進企画室の自席で、坂口は珍しくイライラしていた。もちろん原因はメンバーたちの発言やプロジェクトへの非協力的な態度だ。

坂口 「まったく……。みんななに考えてるんだ。これでは近いうちにプロジェクトが破たんするぞ!」

 半ば投げ出したい気持ちにとらわれつつも、坂口は営業企画部の天海の元に足を運んだ。

坂口 「失礼します、坂口です。昨日の進ちょく報告会の内容について、ご報告に参りました」

天海 「あらそう。時間が取れないから手短にお願いするわ」

 坂口は会議の内容を報告し、さらに天海の出席を再度要請した。

天海 「そんなこといっても、私も忙しいのよ。それはそうと、坂口くん、今晩は予定あるかしら?」

坂口 「いえ、これといって予定は……」

天海 「じゃあ、ちょっと付き合ってよ。たまにはいいでしょ! 私はこれからお客さまのところへ出てしまうから、現地集合でいいわね?」

坂口 「あ、はい……。承知しました」

 天海が指定した店は、銀座の表通りから少し入った小さな通りの地下にある和食屋だった。ほのかに照らされた階段を下り、店に入るとカウンターに天海が座っていた。

坂口 「お待たせしてすみません。へぇ?、部長はこういうところに来るんですね……」

天海 「あら、それどういう意味よ。ここはね、玉子焼きのおでんがおいしいのよ!」

 「ビールを飲みたいところだけど、たまにはお酒もいいわよね」と天海が燗酒を頼む。やがてお燗とともに店員が持ってきたかごには、さまざまなおちょこが入っていた。客は自分の好みの器を選ぶスタイルだ。坂口は茶色の土モノを、天海は四角形の白い陶器を選んだ。

 適度に燗された清酒「金陵」を一口飲むと、天海がポツリとつぶやいた。

天海 「私が入社したころは、まだ女性の総合職なんて本当に少なくてね。少ないうえに、結局結婚や出産でみんな退社してしまって……。同期で残っているのは私くらいのものよ。周囲にも、『女にビールの営業ができるわけがない!』なんていわれたけど、それが悔しくてね……。やっとここまできたわ。でも出世だけが目標じゃなかったの。私、サンドラフトで働くのが好きなのよ。もっとも、今時の子には会社が好きなんていったら古いって思われちゃうかしらねぇ(笑)」

 いつもピリッとした雰囲気を漂わせている天海しか知らない坂口にとって、天海の言葉は新鮮だった。

 周囲には強硬な発言や態度も、見方によっては、仕事への熱意や緊張感から来るものなのかもしれないな……。日本酒を口に運びながら話をする天海に、いつもの厳しさはなかった。

  むしろビジネスの世界で必死に戦って生き抜いてきた彼女が、ふと見せた弱さに坂口の心は揺れ、彼女の横顔から目を離すことができなかった。

坂口 「いやそんなことはないですよ。僕も前の職場で営業にいたころは、よくお客さんから無理難題をいわれて頭を抱えたこともありました。けれども、やっぱり『あぁ、この仕事やってて良かった』ってことありましたから」

天海 「ふふふ。私もほかの会社のビールからうちのに変えてもらうために、毎日お店に通ったりしたもんだわぁー」

坂口 「あっはっは! どうりでお酒が強いわけですね!」

 営業の仕事、業界の話。話題は尽きなかった。いつしか坂口は天海の仕事への思いに共感していた。そして、プロジェクトの成功のためには彼女の協力が必要であることをあらためて感じていた。

坂口 「天海部長、今日はありがとうございました! また誘ってください。それと、プロジェクトもよろしくお願いしますね!」

天海 「そうねぇ。考えておくわ」

 駅に向かう坂口の背中が見えなくなると、天海はバッグから携帯電話を取り出し、どこかに電話をかけた。

天海 「夜分失礼します天海です。彼、なかなか見込みがありますね。仕事に対する姿勢や観点は、本社採用メンバーと比較しても、かなり優秀な部類に入ると思います。さすが副社長が見込んだだけのことはありますわ」

 電話の相手……。副社長の西田の笑い声が受話器から聞こえる。

西田 「ん?、ん?そうかそうか! じゃー、そろそろ登場人物の追加といくか……」

天海 「……? 追加、といいますと……」

西田 「いや、シナリオをバラしたのでは観客も面白くないだろう? それより報告ご苦労。またよろしく頼むよ!」

天海 「はい、失礼します」

 天海は西田から、「坂口の人間性を見てほしい」との伝言を受け、今夜の席を設けたのだ。最初は仕事の一環と思っていた天海も、会話をするうちに坂口のキャラクターにすっかり引かれていた。

天海 「(少々真っ直ぐ過ぎるけど、いい子ね。折を見てうちの部署に引き抜きたいわぁ。それにしても……。誰かと一緒にいて気持ちがあったかくなったことって、随分久しぶりだった。また、2人で会えるかしら……)」

 なぜ、あんなに本音をいってしまったのか、彼女は戸惑っていた。ただ「坂口なら何をいっても受け入れてくれる」、そんな気がしたのだ……。

 そして、天海の足取りは知らぬ間に軽くなっていた。それは日本酒の酔いのせいだけなのか、それとも坂口への期待感のせいか。天海にはもちろん分からなかった……。

 場所は変わって深夜のサンドラフト本社ビル25F、役員室。

 副社長の西田は天海からの電話を終えると、窓の外を眺めながら、午後の佐藤との会話を反すうしていた。

西田 「進ちょく会議はどうだったかね」

佐藤 「はい、リリース1年後という点で、坂口から延長の提案がありました」

西田 「事前に話をしていたはずではなかったのか」

佐藤 「はい、そうなのですが、事務局内でも認識合わせができていなかった模様です」

西田 「(やはり、名間瀬にプロマネを任せたのは無理があったか……。うーん。いや、もう少し様子を見るか……)」

 しばらくして、西田は再度携帯電話を手にした。

西田 「夜分、すまんね。さて、例の件だが。そろそろご登場いただけないかと思ってね」

電話の相手 「そうですか……。もちろん、副社長のオファーであれば喜んで引き受けさせていただきます」

西田 「そうか、それはよかった。詳しいことは、追って部下から連絡させるから」

電話の相手 「はい、ではお待ち申し上げております」

西田 「(さて、ここからが本当の幕開けだな)」

 汐留の高層ビル群は深夜にもかかわらず、灯りがともっている。西田の手にした携帯のリダイヤル履歴に表示されていたのは……『マキシム豊若』。


◆次回予告◆

 次回は、第1回進ちょく報告会の失敗を受けて、名間瀬がプロジェクトマネージャとして先頭に立ち、巻き返しを図ろうとします。

 また、坂口はシスアドに興味を持ち始めた伊東を連れてサンドラフトサポート勉強会に参加します。そこで谷田に初めて出会った伊東は……、話は思わぬ方向へ向かいます。お楽しみに。

「目指せ!シスアドの達人-第2部」の登場人物関係図

ALT 「目指せ!シスアドの達人-第2部」の登場人物関係図
(クリックで拡大)

IT企画推進室

室長 名間瀬 勝也(なませ かつや) 46歳


主任 坂口 啓二(さかぐち けいじ) 31歳


社員 伊東 敦史(いとう あつし) 24歳


今回登場メンバー
(注:SD=サンドラフト、SDS=サンドラフトサポート)

SD 副社長 西田 義行(にしだ よしゆき) 59歳


SD 専務取締役兼CIO IT企画部長 佐藤 光一(さとう こういち) 52歳


SD 営業企画部長 天海 有紀(あまみ ゆうき) 39歳


配送センター副センター長 岸谷 小五郎(きしたに こごろう) 42歳


製造部主任 藤木 直哉(ふじき なおや) 34歳


情報システム部主任 八島 秀樹(やしま ひでき) 36歳


マキシムアンドコンサルティング シニアコンサルタント 豊若 越司(とよわか えつし) 39歳


マキシムアンドコンサルティング シニアコンサルタント 松嶋 七海(まつしま ななみ) 38歳


筆者プロフィール

シスアド達人倶楽部

「シスアド達人倶楽部」は、経済産業省が実施する情報処理技術者試験の1つ、上級システムアドミニストレータ試験の合格者9名で構成される執筆チーム。本連載「目指せ! シスアドの達人」は、シスアドの日常を知り尽くしたメンバーが、シスアドの働く現場をリアルに描くWeb小説だ。

執筆メンバー9名は、上級システムアドミニストレータ試験合格者と試験合格を目指す人々で構成される任意団体:上級システムアドミニストレータ連絡会(JSDG)の正会員。


三木 裕美子(みき ゆみこ)

上級システムアドミニストレータ連絡会正会員。銀行勤務


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