ワガママほーだい幹部の調整に苦しむ坂口は……(第2話)目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(2)(1/4 ページ)

» 2006年12月14日 12時00分 公開

第1回のあらすじ

親会社へ出向した坂口は、本社で新設された「IT企画推進室」に配属された。そこでは、サンドラフトグループ全体のIT化推進を加速させる「新生産管理システム構築プロジェクト」を担当することになった。しかし、役員フロアで出会ったCIOの佐藤や営業企画部長の天海などからは、早くも縦割り組織の悪い影響を感じ、不安になる坂口であった……。



西田副社長の思惑を聞き出そうとするが……

坂口 「IT企画推進室の坂口です。いま、お時間よろしいでしょうか?」

 ここは、東京の汐留にあるサンドラフトビール本社の25階。再び役員専用フロアだ。

 坂口は、今回立ち上げることになった「新生産管理システム構築プロジェクト」の提案者である西田副社長に詳しい話を聞こうと、伊東とともに副社長室に来ていた。

 大きな窓から見えるレインボーブリッジは絵画のように印象的で、窓寄りには執務用の机、中央には応接セットが設けられ、床には足音が聞こえないぐらい毛の長いじゅうたんが敷き詰められていた。

西田 「おぁ、坂口君か。よく来てくれた!」

坂口 「お忙しいところ失礼します。伊東も連れてきました」

伊東 「ど、ど、ど、どうも初めまして!! 伊東敦史と、も、申しまっしゅ!!」

西田 「まぁ、掛けたまえ。例のプロジェクトの件だな?」

 坂口と伊東は西田とともに、副社長室の中央に配置された革製のいすに腰を下ろした。そのフカフカな座り心地に、伊東が目を見張って驚いている。

坂口 「はい。西田副社長が提案されたと聞いておりまして、具体的な話をお伺いしたいと思って参りました」

西田 「そうそう、その企画を提案したのは私だ。坂口君も知ってのとおり、うちは十数年前に構築した生産管理システムをいまでも使っている。従って、業界内でもうちのシステムはかなり遅れておる。そこで、サンドラフトサポートのときのようにまた、パチパチ、ピッでドーン!! というのをやってほしいのだ」

坂口 「また、パチパチ、ピッでドーン!! ……ですか」

伊東 「パチパチ、ピッでドーン!?」

 目を白黒させる伊東を横目に、坂口はサンドラフトサポートのときと同じだ、と半分あきらめの気持ちが芽生え始めていた。

西田 「そうだ、パチパチ、ピッでドーン!! だ。生産部門だけじゃなく、営業や配送部門、子会社などとも連携して、どこでも簡単に使えるやつがいいな。そうだ、RFIDなんてどうだね? とにかく具体的なところは君たちに任せるよ。そのためにIT企画推進室という組織を用意したんだ」

坂口 「はぁ……。分かりました……。頑張ります」

西田 「ところで坂口君、あれから釣りには興味を持ってくれたかね?」

坂口 「いや、あの、その……」

 この後、西田から釣りの話を30分ほど聞かされた坂口たちだったが、プロジェクトに関しては、これ以上具体的な話は出てこなかった。

 話が一段落したところで、副社長の秘書が入ってきた。かなり美人だ。

秘書 「西田副社長、お約束のお客さまがお見えになりました」

 どうやら来客のようだ。

西田 「おぉそうか。それでは、坂口君、期待しとるよ。あ、もちろん伊東君もね。頑張ってくれたまえ」

坂口 「お忙しいところ、ありがとうございました」

 坂口は、一礼して副社長室を後にした。

 伊東が深々と頭を下げてそれに続く……が、入り口の扉に肩をぶつけて派手に転んだ。かなり痛そうだ。顔を真っ赤にした伊東は、肩を押さえて必死に謝りながら、部屋を慌てて出ていった。

 そんな2人を西田は笑顔と期待のまなざしで見送っていた。

坂口 「大丈夫かぁ?」

伊東 「す、すみませんでした。ところで坂口さん、さっき副社長がおっしゃっていたRFIDって何ですか?」

坂口 「ん? そうか伊東は知らないのか。ネットで調べてみれば?」

 伊東が困った顔をするのを横目に坂口は付け加えた。

坂口 「RFIDっていうのは、電波を使って製品の識別や物流管理をする技術のことさ。ICタグっていえば分かる?」

伊東 「電波……? ICカードのことですか?」

 坂口は頭を抱えたくなる気持ちをぐっと抑えていった。

坂口 「分かった分かった。取りあえず、「5分で絶対に分かるRFID」でも読んでおけよ。それでも分からなかったら、後でじっくりゆっくり教えてやるから」

 ちょうどエレベータの扉が開き、2人は役員フロアを後にした。

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