ワガママほーだい幹部の調整に苦しむ坂口は……(第2話)目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(2)(2/4 ページ)

» 2006年12月14日 12時00分 公開

キックオフの事前打ち合わせの段階から怪しい雰囲気が……

 IT企画推進室に戻った坂口は、プロジェクトの進め方について、室長の名間瀬に相談していた。

坂口 「西田副社長にお話を聞いてきたんですが、具体的な話はほとんどありませんでした」

名間瀬 「だろぉ?? そうなんだよ、まったく! どうせ、『具体的なところは任せた!』とかいわれたんだろ?」

坂口 「はい。これだけの情報じゃ、どうやってプロジェクトを進めていけばよいか……」

 進め方について考えあぐねる坂口。

名間瀬 「いまはっきりしてるのは何だ?」

坂口 「“新しい生産管理システムを作る”というところでしょうか」

名間瀬 「そうだな。まずは、それに関連するキーメンバーを集めて課題を洗い出すところから始めるしかないだろうな」

坂口 「そうですね。それではまずキックオフに呼ぶメンバーを整理するところから始めます」

名間瀬 「よし。伊東も手伝えよ。じゃ、後はよろしく!」

伊東 「は、は、は、はい。頑張ります!」

突然、名前を呼ばれて慌てる伊東を横目に、名間瀬は本務の経営企画部の方へ戻っていった。

 名間瀬が去った後、坂口は伊東と作業分担について話していた。

坂口 「伊東君、君は他社の動向を調べてみてくれないか?」

伊東 「えええぇ?!? ぼ、僕にスパイをしろっていうんですか!?」

 目を丸くして驚く伊東。

坂口 「いや、そうじゃなくて。インターネットや雑誌、新聞などで、他社の生産管理システムの動向を調べてほしいんだ」

伊東 「あぁ、そういうことですか」

 ホッと胸をなで下ろす伊東。

坂口 「他社に比べてウチがどのくらいのシステムを使っているのか。また、これから構築する“新生産管理システム”のヒントになる情報をつかんでほしいんだ」

伊東 「へぇ、坂口さんってすごいですね」

坂口 「シスアドっていうんだよ、こういうことをやる人のことを」

伊東 「シスアド?」

坂口 「そう。システムアドミニストレータ。情報処理技術者試験では初級と上級の試験が行われているんだ」

伊東 「じゃあ坂口さんは上級を持ってらっしゃるんですね?」

坂口 「俺は初級だよ。上級を目指して頑張っているところ」

伊東 「坂口さんでもまだ初級なんですか?」

坂口 「初級の試験ではシステムのことが幅広く出題されるから、その勉強をするだけでもかなり仕事に役に立つんだよ。そうだ、伊東君も勉強してみたら?」

伊東 「僕がですか? う?ん、考えておきます」

 伊東にはまだシスアドに対する興味は薄いようだった。

坂口 「きっとこのプロジェクトを経験すれば、俺も上級シスアドに合格できるんじゃないかと思ってるんだ。だから、頑張らないとな」

 坂口は、自分が上級シスアドとして活躍する姿を思い描いて、闘志をみなぎらせていた。

 それから数日後、「プロジェクト計画書(案)」を作成した坂口は、名間瀬、伊東とともに会議室で、そのレビューをしていた。

坂口 「今回のプロジェクトである“新生産管理システムの構築”は、これまでの課題を解決することに主眼を置いて取り組んでいこうと考えています。しかし、その課題すべてを把握できているわけではありませんので、まずはその洗い出しからスタートさせる必要があります」

 坂口は作成した「プロジェクト計画書(案)」を基に説明を始めた。

坂口 「とはいえ、対象部門を決めないと始まらないということで、資料に記載のメンバーでプロジェクトチームを編成し、取り組んでいきたいと考えています」

 3人は、プロジェクトチームの編成メンバー案が書かれた資料に目をやった。

坂口 「前にサンドラフトサポートのプロジェクトをやったときに、生産部門と関連する部門との連携で問題がいくつか出ていました。そのときにはプロジェクトの対象外だったため着手はしませんでしたが、今回は副社長もお考えのとおり、営業部門や配送部門などとの連携も視野に入れたシステム構築が必要だと考え、このメンバーを選出しました」

 プロジェクトチームの編成メンバーには生産管理部門だけではなく、配送部門や営業部門、子会社のサンドラフトサポートの担当者も含まれていた。

名間瀬 「プロジェクトオーナーは西田副社長、オブザーバに佐藤専務、プロジェクトメンバーには天海部長もいるのか……。これだけのメンバーを集めるとなると、日程調整が大変になるが、その辺はどう考えているんだ?」

坂口 「初回のキックオフミーティングでは全メンバーでプロジェクトの意識統一を図っておく必要があると考えています。その後は随時、必要なメンバーと打ち合わせを行い、月に1度の定例で進ちょく会議を開きたいと考えています」

名間瀬 「月1の進ちょく会議のメンバーからは、オーナーとオブザーバは外そう。役員は日程調整が難しいし、何より会議で発言されるとややこしいから」

坂口 「……。分かりました。それでは西田副社長、佐藤専務については、個別に報告させていただきながら、プロジェクトを進めていくという内容に修正します」

名間瀬 「プロジェクトメンバーにサンドラフトサポートの人間が入ってるが、これは要らんだろ?」

坂口 「営業現場の意見も必要だと思い、メンバーに入れたのですが……」

名間瀬 「会社をまたぐと調整もややこしいし、子会社のことはお前も分かるだろ。それに基本的に子会社は、親会社の営業企画部からの指示で動くわけだしな」

 坂口は、そうはいってもやはり現場の担当者を入れるべきだと食い下がったが、名間瀬は取り合わなかった。

名間瀬 「で、プロジェクトの落としどころは?」

坂口 「他社動向を調べたところ、RFIDを使った生産管理システムが続々と構築されているようです。当社でも、これをメインに据えたシステム構築が必要かと」

 坂口の横で伊東が、自分が調べた、とばかりに胸を張る。

名間瀬 「この資料には、RFIDが必要な理由として、他社が使っているから、としか書かれてないのが物足りないな」

坂口 「確かに説得力に欠けますね」

名間瀬 「坂口、お前、何年営業やってきたんだ?」

坂口 「……。顧客の視点……ですか?」

名間瀬 「そうだ。RFIDを使うことで、顧客にとってメリットがあるはずだ。それを盛り込むんだ」

坂口 「分かりました。追加します」

 こうして坂口の説明に、名間瀬が指摘するという格好で、1時間程度のミーティングが行われた。

 その間、伊東はただただ名間瀬と坂口のやりとりを眺めるばかりで、一言も発言するタイミングはなかった。

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