「この開発プロジェクトは中止!」の基準/プロジェクトの状態を評価する:パート1(後編)The Rational Edge(1/2 ページ)

The Rational Edgeより:本稿では、従来のソフトウェアプロジェクトの評価基準に関する誤った考えについて解説し、「方向付け」フェイズにおける有効な評価値に焦点を当てる。

» 2007年04月19日 12時00分 公開
[Kurt Bittner,IBM新技術プログラムディレクター]

「方向付け」フェイズで評価するもの

 「方向付け」フェイズには以下の目標がある。

  • ビジネス、プロジェクト、資金のリスクを特定して緩和する
  • 技術と財政の両面からプロジェクトの存続能力を評価する
  • プロジェクトの範囲と目的の承諾
  • 前進に向けた全体計画の作成

 どのプロジェクトも、少なくとも「方向付け」フェイズの資金は確保しておく必要がある。それ以降のフェイズについては、「方向付け」フェイズの結果に応じて資金調達を行う。

ALT 本記事は、IBM developerWorksからアットマーク・アイティが許諾を得て翻訳、転載したものです。

  「方向付け」フェイズでは、プロジェクトが経済的に好ましくないか、あるいは技術的に実行不可能といったリスクの軽減に重点を置く。このためチームは、前進のための堅実な判断を下せるよう、プロジェクトの費用と便益を探求する必要がある。「方向付け」フェイズの最後では、プロジェクトが計画どおりに進めばプロジェクトの業務事例が実現可能であることを利害関係者が承認する。プロジェクトが生き残れるという点では全員の承認が必要だ。つまり、それが進める価値のあるプロジェクトであり、時間やコストの見積もりも確かだということの確認だ。これらの点で承認が得られない場合は、プロジェクトの実行を見合わせ、もっと価値のあるプロジェクトに目を向けるべきだ。

 このフェイズにおける評価では、以下の疑問への回答に重点を置く。

  • プロジェクトのビジネス上のメリットは何か?
  • ビジネス上のメリット実現で想定されるコストはどの程度か?
  • そのプロジェクトは完成させるだけの価値のあるものか?

 最初の2つの疑問に答えるのは難しく、これらが3つ目の質問に影響する。以下の2つのセクションでは、ビジネス上のメリットと予想コストの評価方法、そしてこれらの回答を全体の評価計画に組み入れる方法を説明する。

財政存続能力の評価

 予想されるビジネス上のメリットは、企業がこれらのメリットを得るために積極的に投入できるコストを制約する。このフェイズでは正確な見積もりは不要であり、プロジェクトを遂行する明確な価値を見いだすには大まかな見積もりがあれば十分だ。

 ビジネス上のメリットは、リスクに加えて取得する金銭の時価まで加味する正味現在価値(NPV)で表されるのが普通だ。数式で表すと以下のようになる。

  「プロジェクト終了時」は、実際にはソリューションの寿命を差し、rはプロジェクトの割引率(必要収益率)を指す。必要収益率を選択するときは、プロジェクトのリスクが適切に加味されているかの確認に注意すべきだ。一般的に、必要収益率は同等のリスクを持つプロジェクトを基盤にして計算される。

 初期投資(プロジェクトコストに関する次のセクションで説明する)を無視すると、今後ソリューションから発生するキャッシュフロー(売上増に関連するプラス方向のキャッシュフローと、予想される維持管理から発生するマイナス方向のキャッシュフローの両方)でビジネス上のメリットを見積もれる。

 ビジネス上のメリットを見積もる際にこれを補強する証拠としては、新製品やサービス市場調査データ、コスト削減重視のプロジェクト向けビジネスコストデータ、あるいはその両方がある。NPVの公式が示すように、予測の具体的なタイミングは重要だ。メリットを得るのなら、後より先の方がはるかに価値が大きい。

 順守規制で決まるプロジェクトのメリットの方が予測は簡単だ。プロジェクトのメリットは、不利益の回避によって見積もれる。しかし、順守のメリットを得る場合もタイミングが重要だ。

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