product-market growth matrix / 成長マトリクス / アンゾフ・マトリクス
事業を拡大するうえで、今後の成長戦略の方向性を分析・評価するためのツール。企業戦略の分野で使われるほか、マーケティング領域においてもよく利用される。
製品と市場を軸にした2次元の表を作り、成長戦略を「市場浸透」「製品開発」「市場開拓」「多角化」の4つに分類する。
製品 | |||
既存 | 新規 | ||
市場 | 既存 | 市場浸透 |
製品開発 |
新規 | 市場開拓 |
多角化 |
現在の市場で、現在取り扱っている製品の販売を伸ばす成長戦略。例えば、既存顧客に広告や値引きなどを通じて、既存商品をより多く買ってもらえるようにする方法である。
新しく顧客を開拓して、既存製品の販売を伸ばす成長戦略。例えば、国内向け商品を海外にも販売するという方法である。
既存の顧客層に向けて、新製品を開発して販売する成長戦略。製品のモデルチェンジやバージョンアップなどが該当する。
新しい製品分野・市場分野に乗り出し、新しい事業を展開することで成長する戦略。例えば、航空会社が音楽流通ビジネスを展開するような方法である。
製品−市場 成長マトリクスは、経営学者のH・イゴール・アンゾフ(H. Igor Ansoff)が示したもので、Harvard Business Review誌(1957年)掲載の論文「Strategies for diversification」が初出。アンゾフは戦略経営の中で、企業戦略の要素である成長ベクトル(成長の方向性)の説明にもこのツールを使用した。そのため、このマトリクス自体を「成長ベクトル」と呼ぶことがある。このほかにも「アンゾフ・マトリクス」「成長マトリクス」「成長ベクトル・マトリクス」「2×2成長ベクトル要素マトリクス」「製品/市場拡張グリッド」「製品/市場グリッド」「事業拡大マトリックス」など、数々の別名がある。
アンゾフは、「市場浸透」「市場開拓」「製品開発」を拡大化戦略と呼んだ。これらは部門戦略に属するものと位置付け、残る「多角化」が全社戦略に当たると考えたのである(もともとアンゾフの研究は多角化に重点を置き、多角化のリスクと潜在的利益を分析・評価する手法として構築されている)。なお、アンゾフは多角化戦略をさらに、「水平多角化」「垂直的多角化」「同心円的多角化」「コングロマリット的多角化」の4つに分類している。
▼『企業戦略論』 H・I・アンゾフ=著/広田寿亮=訳/産業能率大学出版部/1969年(『Corporate Storategy』の邦訳)
▼『戦略経営論』 H・I・アンゾフ=著/中村元一=訳/産業能率大学出版部/1980年1月(『Strategic Management』の邦訳)
▼『アンゾフ戦略経営論〈新訳〉』 H・イゴール・アンゾフ=著/田中英之、青木孝一、崔大竜=訳/中村元一=監訳/中央経済社/2007年7月(『Strategic Management』の邦版新訳)
▼『「戦略経営」の実践原理――21世紀企業の経営バイブル』 H・I・アンゾフ=著/中村元一、黒田哲、崔大龍=監訳/ダイヤモンド社/1994年10月(『Implanting Strategic Management. second edition』の邦訳)
▼『43の図表でわかる「戦略経営」』 中村元一、崔大龍、嶋田淑之=著/毎日コミュニケーションズ/2004年12月
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