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» 2007年07月09日 12時00分 公開

「IT人材不足」をどう乗り越えるか?CIO、もの申す(3)(1/2 ページ)

かねてからIT人材の不足が語られてきたが、ここ最近のひっ迫感はかなり強烈なようだ。IT人材難の原因とは何か、それを乗り越える方法とは何かを考察していく。

[佐藤 良彦,@IT]

2007年のIT人材不足

 前回「CIOと情報システム部門の役割を見つめ直せ」では、CIO設置に関する企業動向やその期待される役割について解説するとともに、情報システム部門の役割が戦略的経営情報部門へと変化する時代的過程にあることを指摘しました。そうした流れの中で情報システム部門のスタッフは、経営的視点から企画したり、プロジェクトを運営したりという能力が必要になることについても触れました。

 こういうと読者諸氏の中には、プロジェクトマネージャ的な役割を任せられる人材がいないこと──とりわけ、経営的視点で活動できる人材の不在をお嘆きの方が多いのではないでしょうか?

 先日、あるヘッドハンティング会社の社長・副社長と、最近のIT関連人材市場の状況を話す機会がありましたが、バブル期を上回る強烈な人材難に陥っているようです。これは、情報システム部門長として採用活動にも携わる小生自身も実感するところです。いまから5年ほど前、小生がコンサルティングファームに属していた時代には、毎日50通程度のレジュメに目を通し(つまり、それだけ応募があったのです)、そしてふるいに掛けて残った数人を面接するという毎日でした。しかし昨今では、IT関連の求人に応募が殺到することもなく、特に一般事業会社の情報システム部門では人材難が続いているように思われます。

 現在のような人材不足は、2003〜2004年ころから見られたように思います。当時、ユーザー企業/IT企業の人事担当者や役員、事業部門長の幾人かから、現状と似たような話を聞いた記憶があります。そのときといまで“人材難”の内容は、何ら変わっていません。すなわち、経済産業省の施策が影響してのことなのか、足りないのは「高度IT人材」──つまりITSSUISSなどでいうところの上流工程を活動領域とする人々が「いない」といわれているのです(IT業界で約42万人の人材不足とされていました)。

図1 IT職種の人材不足領域(出所:経済産業省 ITスキル標準)(クリック >> 拡大)

 2003年前後というのは、コンサルティングファームやシステムインテグレータ(SIer)にとって、バブル期のように提案すればすぐに案件が取れるといった、豊富に案件需要のある時期ではありませんでしたから、いかにして案件を創出して受注するか、受注後のSI案件を失敗なく(損失を出すことなく)回していけるかが、企業存続の鍵でした。

 そこで、営業コンサルタントやプロジェクトマネージャの必要性に注目が集まったわけです。単なるシステム開発だけではやっていけない、だからソリューション営業を強化すべきだ、という安易な風潮もこのころにまん延しました。

 ちょうどこのころ、小生は某上場企業の情報システム部門がMBOをしてできたSI会社で、コンサルティング事業部の立ち上げに携わっていました。小生もこの“風潮”に乗っていたわけです。このときの状況は、結構エキサイティングで印象も深いので、いずれ本欄でご紹介したいと思います。

ユーザー企業の苦悩

 さてユーザー企業にとってもこの時期は、IT戦略/IT投資を見直す機会だったようです。バブル期/ITバブル期に雨後のタケノコのようにできてしまったIT関連の「負の遺産」──事業部ごとに業務システムを乱開発したり、ROIを顧みることなく手当たり次第に業務システムへ修正・追加を施したりしていたのです──の整理が行われていました。つまり、統一的なITガバナンスやアーキテクチャを欠いたまま、IT資産を肥大化させてしまい、そのシステムの複雑さゆえに運用コストの膨張を招き、企業収益が脅されるという状態でした。そこで企業は戦略的IT投資を行う資金を捻出するために、システム運用コストの削減に躍起でした。

 こうした全体的ITの見直しには、経営的財務的視点をもってBPRを推進できる強力な情報システム部門要員が必要でした。この期に及んで、プロジェクトをコンサルティングファームやSIerへ丸投げすることの弊害が語られるようになり、ユーザー企業の内部に“目利き”が必要だという認識がようやく芽生え始めたのです。ところが、そんな人材を外部から採用しようとして人材市場をあさったところで、なかなか要件に見合う人物に出会うことはできません。

 下図はIT投資DIのグラフですが、2005年から2006年のITの投資動向を見ると、大企業も中小企業もおのおの活発に動いていることが分かります。この状況は2007年も継続することは間違いありません。しかし、上述のように提供される側、提供する側ともにITプロジェクトの実行者は人材難で、しかもその不足状況は継続化、深刻化しています。これは笑い事ではなく、どこにも“目利き”がいないとなれば、経営者は一体、何を信じてIT投資をすればいいのか、難しい判断を迫られ続けるわけです。

図2 2005−2006年度 IT投資動向(出所:日本情報システム・ユーザー協会 2007年4月記者発表会資料)

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