BPMプロジェクト成功の鍵[1] - コアアプローチBPTrends(10)(1/2 ページ)

BPMプロジェクトの成功には、BPM展開方法論が極めて重要だ。BPMI.org共同議長のデレク・マイヤー氏の論考を6回にわたって掲載する。

» 2007年08月27日 12時00分 公開
[著:デレク・マイヤー, 訳:高木克文(日本能率協会コンサルティング),@IT]
本稿は、米国BPTrends.comからアイティメディアが許諾を得て翻訳、転載したものです。

 本稿では、ビジネスプロセス・マネジメント(BPM)のベストプラクティスに関する考察を行う。

 まず、ガバナンスの確立を目指す推進委員会の設立とプロジェクトの選定に始まり、ビジネスケースの検討を経て、エグゼクティブ・スポンサーシップの獲得に至る過程における成功要因について論述する。プロジェクトに対する経営幹部からのコミットメントを獲得すれば、ビジネスプロセスを十分に理解・把握しなければならない。これに基づき改善機会が特定され、最終的にはBPMスイートの実装に結び付く。

 この筋道に沿って、幅広い観点から、BPMのベストプラクティスと陥りやすい過ちを取り上げる。

序:BPMプロジェクトのベストプラクティス

 BPMプロジェクトのコアドライバーは、コスト削減、生産性向上、および小回りを利かせたビジネスのかじ取り(俊敏性)に基づく、ビジネス・パフォーマンスの向上という成果である。

 それは第一には企業理念──すなわち人、それらの人の間の協働方式(ビジネスプロセス)、そこで用いられるテクノロジ、およびそれらのプロセスに支えられたパフォーマンス目標に関する企業理念である。そこにBPMテクノロジが加わり、このビジョンを実現する能力を持たせてくれるのだ。

 たいていの企業で続々とBPMプロジェクトが立ち上げられ、いまや、BPMプロジェクトを堅実にやり遂げる能力が、競争力の確保に欠かせない要件になった。依然として傍観者の姿勢を崩さない企業にとっても、もはやBPM指向のプロジェクトに着手するかどうかの問題ではない。いつやるかの問題なのだ。

 しかし、大幅な生産性向上の可能性を秘めている、あるいはオペレーションの敏しょうさと順応性を高める──などと聞けば、ERPプロジェクトをめぐる一時の興奮状態が記憶によみがえるであろう。失敗事例を取り上げた否定的な報道に触れたのは、後のことでしかなかった。

 ERPプロジェクトにとどまらず、CRMSCMシックスシグマTQMについても、同様の経緯が見られた。これらは、すべてビジネスプロセスと強く関連する手法であるが、ばらつきの大きい成功確率しか示せなかった。こうした経験を基に、BPMで主張するベネフィットは現実性を持つのか、と首をかしげるむきがあることは確かだ。

 BPMを取り囲む狂騒状態はさておき、現実を見ると、BPMプロジェクトの大半が成功裏に遂行されている。ガートナーが最近、BPMプロジェクトに関する調査を行った。その結果によれば、自社のBPMプロジェクトは成功であったとする回答が95%に上った。

 しかし、多くの企業は、その成功の内容を積極的に公開しようとしない。新たな競争を避けるためであり、むしろ、その成果を極秘事項として厳格に保護する傾向にある。一方、プロジェクトが失敗した場合には、的外れ、あるいは粗末なマネジメントの結果として自らを傷付けることになるのが世の常だ。詳細にわたる目配りがあれば、このような結末を完全に防止することができるのである。

 本稿では、BPMプロジェクトに関する一連のベストプラクティスを紹介する。読者としては、初めてBPMプロジェクトの立ち上げに携わっておられる方々を想定した。それらの方々は、プロジェクトの成功条件を整備し、行く手に現れる事柄に関する考察を行っておられるだろう。当初の見通しは困難な事態を予期させるかもしれない。しかし、本稿で取り上げたテクニックを駆使するとともに多少厳格な姿勢で臨めば、BPMプロジェクトは実に御しやすくなり、成功を確実に手にすることができるはずだ。

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