第2回 事例に学ぶビジネスブログの設計ノウハウビジネスブログはじめの一歩(1/2 ページ)

ブログはHTMLを生成するツールです。誰にでも簡単に扱える便利なツールですが、ツールである以上中身を書くのも方向性を決めるのも、使う人(企業)次第です。(本文より)

» 2007年09月18日 12時00分 公開
[中山順司,シックス・アパート株式会社]

 ビジネスブログは企業のWeb コミュニケーションの手段として業界を問わず、すっかり定着してきた感があります。

 情報発信用ツールとして、マーケティングの一環として始まったビジネスブログは、いまでもこの用途で使われることが多く、最もポピュラーな使われ方といって間違いないでしょう。その用途もバラエティに富み、ビジネスブログは大きく「企業のWebサイト構築(CMSとして)」「物販サイト運営(ECとして)」「マーケティング(情報発信として)」、そして「社内利用(イントラブログとして)」の4つに進化しています。

 ここでは、CMSやEC、イントラブログといった用途については割愛し、いわゆるビジネスブログとして語られることの多い「マーケティング(情報発信)」用途にフォーカスしてお話しすることにします。

 始めるからには多くの人に読まれ、大きな反響を呼ぶビジネスブログを作りたいものです。そこで今回はビジネスブログ導入企業例を紹介しつつ、失敗しないブログ設計のコツについてお話ししたいと思います。

「何を書くか」ではなく、「何のために書くか」

 ブログはHTMLを生成するツールです。誰にでも簡単に扱える便利なツールですが、ツールである以上中身を書くのも方向性を決めるのも、使う人(企業)次第です。

 ビジネスブログを始めるに当たり、明確にすべきはその「目的」です。なぜ書くのか、なんのために公開するのかを、事前によく考えましょう。こんなことをいうと、「何をいまさら当たり前のことを」と思う方もいらっしゃるかもしれません。ところが、世の中には目的があいまいなままスタートしてしまっているブログが実は少なくないのです。

  • なんとなくSEOによさそう
  • 頻繁に情報発信ができる
  • みんながやっている

 それらは確かにブログのメリットではありますが、どんな狙いを持ったSEOなのか、なぜ情報発信する必要があるのか、などがクリアになって初めて意味を持ちます。目的が定まらないブログは情報の一貫性が保てず、ターゲットはぼやけ、結果的にメッセージが届かないことになります。つまり、初めに議論されるべきは、「何を書くか」ではなく、「何のために書くか」なのです。

 ブログで情報発信することで、誰にどんなメッセージを送り、どんな変化や成果を手に入れたいかを自分(自社)でリストアップしてみましょう。

 トラックバックで消費者の声を集めたいのか、資料請求の窓口として機能させたいのか、母屋のサイトへの誘導となる情報発信基地として使いたいのか、製品について詳細情報を告知しつつSEO効果も狙いたいのか、会社を紹介して親しみを持ってもらうためのサイトなのかなど、迷ったときに立ち返ることのできる、判断のよりどころとなるコンパスを持つことです。目的を持つということは、そのブログに一本筋を通すことになるのです。

 「何を書くか」を考える時間は心配しなくても十分にあります。スタートしてからブログの目的を考えるのではなく、まずは目的をしっかり据えましょう。

対照的な目的を持つトヨタと日産

 1つ例を挙げましょう。

 日産とトヨタは、それぞれ自社コンパクトカーのティーダとラクティス用のビジネスブログを運営しています。細かな製品特徴は異なるものの、ほぼ同じ価格帯のコンパクトカーが主役のブログですが、目的は対照的といってよいほど違います。

 日産のティーダブログは、“従来のメディアでは伝え切れない製品の特徴を、担当者目線で語る”という、製品について深く掘り下げた情報を発信することを目的としています。

 メーカーだけが知る開発秘話やパーツ1つ1つへのこだわり等、製品に対する愛情が伝わってくる記事にあふれ、トラックバックによるコミュニケーションにも積極的なのが特徴です。

 良い意見も欠点を指摘する声も隠さず公開することで、メーカーの押し付けがましさを感じさせない内容になっています。ティーダブログは、ビジネスブログの先駆け的な事例としてメディアに多く取り上げられ、多くのビジネスブログに影響を及ぼしたといえます。

 それに対し、トヨタのラクティスブログは正反対の目的を持っています。

 ラクティスブログでは、車の性能や内装、装備についてまったくといってよいほど触れられていません。語られているのは車そのものではなく、“コンパクトカーで出掛けること、コンパクトカーと過ごす楽しさ”についてです。

 全国各地の観光情報やオススメスポットを地元ラジオ局と連動して紹介し、読者のコメントでご当地情報を交換し合う目的で始められました。車に興味の薄い人が購入を検討するとき、ラクティスを選択肢として想起してくれるための刷り込み効果を狙ったものです。

  ティーダブログ (日産) ラクティスブログ (トヨタ)
コンテンツ ティーダに限定された詳細情報 観光情報 ・お薦めスポット紹介がメインで、製品については多くを語らず
書き手 社内の担当者 (一人称) タレント本人とラジオのパーソナリティ (共同)
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ターゲット&目的 ティーダに興味を持つ限定された層への製品告知 ラクティスを知らない人も含めた幅広い層への自動車で出かける楽しさの伝達

 「すでにその車を知っていて、買うかどうか迷っている人に対し、既存メディアで伝え切れない製品特徴を伝え、より深い製品への理解を促す」のが目的のティーダブログであるなら、「メーカーや車種の絞り込みをする前段階の層に対し、広告らしさを徹底排除した“クルマと出掛ける楽しさ”を訴求させる」ことが目的のラクティスブログと、方向性がまったく異なるコンテンツになってきます。

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