前回は、コンサルタントの中核的スキルである概念スキル(コンセプチュアル・スキル)は、会社全体、問題点全体を鳥観する能力であり、現状分析における問題点整理・分析およびシステム化方針策定における新ビジネスプロセス設計で必要とされることを述べた。今回は、この会社全体・問題点全体を鳥観するための知識に関して詳しく検討してみる。
コンサルタントは、会社の中の各部門がどのような役割を担い、それぞれがどのように関連しているかを理解し鳥観するためにヒヤリングを行う。ヒヤリングによって各部門の業務内容を把握し、相互依存関係を理解するのだ。
その際、ヒヤリングですべての情報を把握しようとすると、非常に多くの時間と労力を必要としてしまう。また、「情報をどのような形に整理すれば目的を達するのか?」が明確でないと、収集すべき情報も明確にはならない。
従って、これらを容易にするためには、会社の中に通常ある業務機能と、業務機能間の関係を整理したテンプレートを、知識として事前に習得しておく必要があるのだ。
テンプレートがあれば、ヒヤリングによって収集すべき情報は、テンプレートとの相違点(誤差)を明確にするためのものとなるので、的が絞れてくる。漠然と業務全体をヒヤリングするのとは大違いだ。また、情報の整理もテンプレートに沿って整理していけばよく、テンプレートに情報を追加・修正・削除すれば、目的を達することができる点も大きい。
しかし、問題点全体を鳥観するためには、業務機能と業務機能間の関係を整理したテンプレートだけでは足りない。
各業務あるいは会社全体で現在多くの会社が抱えている問題点・原因・解 決策を整理したテンプレートも必要になる。このテンプレートがあれば、問題点収集のためのヒヤリングにおいて、質問すべき項目が簡単に作れるばかりか、問題点の整理、原因の追究、解決策を考え出すことも容易になる。
つまり、会社全体と問題点全体を鳥観するためには、知識としてこの2種類のテンプレートが必要になるのだ。
会社全体を鳥観するために必要なテンプレートは、通常の会社で必要とする業務機能と業務機能間の関係を階層的に表したものである。
階層的に表すことにより、網羅性を上げて見落としを避けられるだけではなく、抽象度の高い見方が可能になる。また、これによりコンセプチュアル・スキルを育成するための教科書として使用することができるのだ。
階層的表現法としては、経済産業省のEA(Enterprise Architecture)で推奨されているDMM(Diamond Mandala Matrix)やDFD(Data Flow Diagram)を階層ごとに描くなどの方法がある(図表1、2参照)。
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