ビジネスモデルからシステムを見いだす実践! UMLビジネスモデリング(6)(3/3 ページ)

» 2007年10月22日 12時00分 公開
[内田功志,システムビューロ]
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システムの初期ユースケース図を作成する

 これまでビジネスモデルに加えてきた検討を基に、計画管理システムと材料管理システムの初期のユースケースを導きます。

計画管理システム

 まず、計画管理システムについて検討してみましょう。システムのユースケースは、そのシステムに課せられた責務(Responsibility)から導くことができます。シーケンス図でシステムが受信するメッセージが、そのシステムの責務になります。これまで作成してきたビジネス設計シーケンス図から、計画管理システムには以下の責務が課せられていることが分かります。

ALT 図13 計画管理システムの責務

 これら個々の責務をユースケースとするのが、初期のユースケース図作成に当たっての基本的な考え方になります。計画管理システムの初期のユースケース図は、以下のように作ることができます。

ALT 図14 計画管理システムの初期のユースケース図

 ここでは、「製造状況を登録する」と「製造結果を登録する」に分かれていたものを「製造を登録する」に統合しました。同様に、「販売状況を登録する」と「販売結果を登録する」を「販売を登録する」に統合しました。

 「製造結果を登録する」や「販売結果を登録する」は計画立案者の作業でしたが、実際にはパティシエや店員の作業を計画立案者が肩代わりしているので、「製造を登録する」のはあくまでもパティシエの作業、「販売を登録する」は店員の作業として扱うことにしました。

材料管理システム

 同様に、材料管理システムの責務は以下のようになります。

ALT 図15 材料管理システムの責務

 これらの責務を基に作成した材料管理システムの初期のユースケース図は、以下のようになります。

ALT 図16 材料管理システムの初期のユースケース図

初期ユースケース図の完成以降

 初期のユースケース図が完成したら、それ以降はシステムの開発工程になります。開発が進むと、システムに置き換えられたビジネスオブジェクトがシステム内部のオブジェクトとして出現してくることになります。

 ユースケース図もさらに検討を重ねて、システムとして必要なユースケースを洗い出していきます。これら開発の手順に関しましては、また別の機会に紹介したいと思います。

本当に有効なシステムの発見

 ここで注目していただきたいのは、一般的でありきたりなシステム化とは多少異なるであろう結果が導かれていることです。今回の洋菓子店のシナリオであれば、通常は振る舞いを中心に「販売管理システム」「製造管理システム」「在庫管理システム」「仕入れ管理システム」などを切り出して、システムを作っていくところでしょう。しかしこれまで説明してきたように、ビジネスモデルから見ていくと、通常とは違ったシステムが見つかることがあります。

 ここで紹介している方法論では、特にビジネスのビジョンや戦略の観点からシステム化を検討するので、「計画」や「材料」などのビジネスエンティティに注目して、今回はこのような結果になりました。

 これが唯一絶対の解、というわけではありません。しかし少なくとも、視点を変えてみると本当に有効で必要なシステムが見えてくる、とはいえると思います。

筆者プロフィール

内田 功志(うちだ いさし)

システムビューロ 代表。日立系のシステムハウスで筑波博に出展した空気圧ロボットのメインプログラマを務め、富士ゼロックス情報システムにてオブジェクト指向の風に触れ、C++を駆使して印刷業界向けのシステムを中心に多数のシステムを開発。現在、ITコンサルタントとして、システムの最適化や開発の効率化などの技術面、特にオブジェクト指向開発に関するコンサルティングやセミナーを実施してきた。最近ではビジネスに即したシステム化のコンサルティングを中心に活動している。



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