事業イメージを書き出して表現するWebビジネスの立ち上げ、ステップバイステップ(1)(2/2 ページ)

» 2007年11月08日 12時00分 公開
[大川敏彦,ウルシステムズ]
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(2) 事業環境の分析・調査

 事業イメージが表現できたら、次にその事業・サービスの周辺環境を洗ってみます。周辺環境とは、大きく外部環境と内部環境があります。

 外部環境とは、その事業・サービスが含まれる業界の動向、市場環境、競合の動向などが挙げられます。これらの外部環境の動きの中で、新しい事業・サービスは業界の中でどのように位置付けられ、市場に受け入れられ、競合に対する競争優位性を持っているのかを考えます。

 内部環境とは、自社の経営方針、経営課題、既存事業の状況など自社を構成する諸要素を表します。新規事業・サービスが自社のビジョンや理念に対して、どういう位置付けにあり、意義があるのか、経営課題の解決につながるのかどうか、いま行っている既存事業とはどういう関係にあるのか、シナジー効果があるのかどうかなどを考えます。

(3) 事業・サービス詳細の検討

 事業のイメージが固まり、内外の周辺環境との位置付けが明確になったら、次に事業の詳細内容を検討していきます。ここで検討する項目は、サービスメニュー、対象顧客、サービスの提供形態・インフラ、フィースキームなどがあります。つまり、誰に、どんなサービスを、どのように提供し、その対価をどうやって得るのかを徐々に明確にしていきます。

 まず、事業・サービスメニューの詳細化では、(1)で考えた事業イメージをベースに、どんなサービスを提供していくのか詳細化していきます。また、事業・サービスメニューの詳細化を行うには、対象顧客を明確にする必要があります。対象顧客、サービス内容によって、サービスの提供形態も変わります。例えば、システムで提供するサービスを前提に考えると、ASPSaaSでサービスを提供するのか、クライアントの貸し出しなどにより、クライアント/サーバ型で提供するのかなどでもその後のシステム構築の方法が大きく異なります。このあたりも考慮しておく必要があるでしょう。

 また、事業・サービスとして実現するのですから、誰から、何を理由に、どのように料金をいただくのかを明確にする必要があります。これらの項目はそれぞればらばらではなく、1つ1つの項目が密接に結び付いているため、検討もばらばらに行うのではなく、必要に応じて柔軟に行ったり来たりしながら、確定していきます。

(4) 投資対効果の算出・評価

 投資対効果の算出・評価方法は、事業戦略本など市販本もたくさん出ているので、ここであらためていうまでもないと思います。代表的なのは、正味現在価値(NPV)、内部収益率(IRR)、投資利益率(ROI)などがあります。これらの手法を用いる前にはそれぞれ、対象となるサービス・事業について、ある期間の中での売り上げの推移、初期コストやランニングコストを見積もる必要があります。

 売り上げの試算は、これまでの検討で具体化させてきた項目を用いて、顧客数はどのように推移するのか、それらの顧客がどのようなサービスを利用することで、どのような客単価が得られ、最終的にどれだけ、売り上げに実現できるのかなどについて、売り上げ試算のためのロジックを考え、前提となる数値を設定し、最終的に計算を実行します。

 コストの試算では、今回システムを用いた事業ということですので、システムの開発規模、必要なインフラ設備、メンテナンスや管理、営業などの人件費などを詳細化したうえで、最終的なコストを求める必要があります。これらの売り上げ、コスト試算結果を材料に、上記評価を用いて事業の収益性を評価します。

 ただし、これらはあくまでもいくつかの前提条件を置いた仮説であるため、将来これが実現できるかどうかを確実にいうことはできません。従って、いくつかのシナリオを用いて、例えば、顧客数が1000ユーザーになった場合、5000ユーザーになった場合、10000ユーザー以上になった場合などに分けて幅を持って評価しておきます。

(5) アクションプランの作成

 事業イメージ、事業環境、詳細内容、収益性などが詳細化できたら、次は、これらをどのように実現するのかアクションプランを立案します。アクションプランの基本は、誰がいつのタイミングで、どのような作業をするのかを明確にすることです。例えば、今回はシステムを中心としたサービスの提供を考えているので、システムの構築をどのように進めていくのかを決める必要があるでしょう。併せて運用のための体制の確立や要員の育成なども考える必要があるのではないでしょうか。また営業面やプロモーションも考える必要があるでしょう。これらについて経営判断を伴うので、経営者への報告と意思決定のタイミングを考慮する必要があります。まだまだ具体的に考えるといろいろ出てくるでしょうね。

 平松は深夜にもかかわらず、長文のメールを返してくれた。北尾はこれを必死に読んだ。そして読み終えたときなんとなくほっとした。1つ1つの詳細はまだ分からないところがあるが、全体像がつかめたため、なんとなくゴールにたどり着けるような気がしてきたからだ。明日からはこれを1つ1つ実践していってみよう……。深夜のメールのやりとりを終えて、ようやく睡魔が襲ってきたときには、カーテンのすき間から朝日が差し込んでいた。

筆者プロフィール

大川 敏彦(おおかわ としひこ)

ウルシステムズ株式会社 ディレクタ


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