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» 2007年11月13日 12時00分 公開

The Rational Edge:自己管理型チームの利点と弱点/パート3:役割とポリシー(前編) (2/3)

[Scott W. Ambler, Per Kroll,IBM]

自己管理チームの推進

 「自己管理チーム」には、それが活動するガバナンス構造の範囲内で実行する作業の選択権限があり、自身が選択する方法で作業を行う責任を負う。これは、意見を出し、意思決定プロセスに耳を傾ける機会が誰にでも与えられる参加型アプローチによる意思決定だ。自己管理チームの重要な特性には以下のようなものがある。

1.チーム自身が作業を決める。反復作業当初はチームが優先順位を付けた作業項目の一覧から作業項目をまとめて選択する。作業項目リストには、プロジェクトの利害関係者により定義され、優先順を付けられた要件が含まれ、実際のビジネスニーズとチームが実行するものをカップリングしている。

2.各個人が自分の仕事を選ぶ。個人には、反復作業の作業項目から自分の作業を選択する権限が与えられている。作業者は、a)自分が得意で、効果的な作業方法が分かっているから、b)何かについての知識を深め、経験のある人と一緒に働くことでスキルセットを高めたいから、あるいはc)単に作業の必要性があって、自分の順番が来たからなど、さまざまな理由で作業を選ぶ。ただ、個々のスキルセットを完成させたい場合などは特に、選択する作業についてプロジェクトマネージャ がいつでも意見できることにも注意したい。

3.作業の進め方はチームが決める。当面の作業と、それに関連した必要な作業の進め方に関する全体戦略はチームで決める。より詳細なプランニングが必要な場合は、直前に各作業者がこれを行う。高レベルの長期プランニングは、当初はプロジェクト開始時点にチームが行い、それから適宜プロジェクトマネージャが発展させていく。

4.全員が職責を果たす。チームは着手に同意した作業を反復作業の終わりまでに完了させる責任を果たし、個人は自分が引き受けた作業の責任を果たす。

5.チームは定期的にコーディネーションを行う。作業を確実に完了させ、適切なすべてのチームスキルが完全に活用できるよう、チームはミーティングを定期的に開いて作業を効果的にコーディネートしなければならない。

6.責任の所在がマネージャにあることは変わらない。チームが全体責任を取っても、最終的な責務と、これに関連する判断はマネージャの義務である。同時に、マネージャが介入し、権力を使う機会はさほどないはずで、これは最小限に抑えるべきだ。チームはプランニングと作業を担当し、マネージャはプランの伝達や外部グループとチームとのコーディネーションを担当する。

メリット

この手法には以下のような複数のメリットがある。

1.ソフトウェアの経済的側面の向上。チームのメンバーが自分たちの作業をコントロールできるため、意欲が高まり、生産性も向上する。

2.意思決定の向上。作業を完了させるための責務と職権がチームに与えられるため、組織構造内の適切な場所で判断が下される。

3. 品質の向上。幅広い層からの貢献があると、品質計画、アーキテクチャ、および完成品も向上する。

4.欠陥発生率の減少。一般的に、自己管理チームでは成果物が個人間を移動する回数が減少し、コミュニケーションが改善され、それによって製品の欠陥発生率が減少する。

5.個々のスキル向上機会の拡大。個人が新しい作業に挑戦する機会が増え、それによりスキルセットと全体の生産性が向上する。

トレードオフ

 この手法では、組織が十分に発達し、各自が協力する文化が根付いている必要がある。このようなことから、この手法にはいくつかの代償が伴う。

 責任のある成熟したチームメンバーが必要。チームのメンバーには、そもそも自己管理能力が必要であり、それは各自が進んで自分の判断の責任を果たすことを意味する。また、プロジェクトの進行に欠かせない「あまり面白くない」作業の必要性を受け入れる成熟度も必要になる。

 チームを信頼する必要がある。プロジェクトマネージャは日常的な指示を減らし、チームに対してもっとレベルの高い指示を与える必要がある。

 プロジェクトマネージャはコーチやリーダー的存在になる。これは、最高の生産性を目指してチームを鼓舞したり、素晴らしい業績の達成を複数に求めるのが仕事だと考える従来のプロジェクトマネージャには難しいかもしれない。だが長い目で見れば、このような取り組みはチーム全体にとって逆効果であることが多い。

 マネージャには、どうしても取り組み全体に対する責任がある。規制当局の指針への準拠に必要な書類や、事前に合意したスケジュールや見積もりの達成など、必要なことすべての完了を保証する責任は、必ず誰かが取らなくてはならない。

アンチパターン

 チーム組織には以下のようなアンチパターンがある。

 権限のない責任。チームは、システムに対する責任があると伝えられていても、重要な作業を行ったり、重要な判断を下す権限は与えられていない。例えば、チームがミッションクリティカルなアプリケーションをアジャイル手法で開発するよう指示されても、データベースしか開発できないと主張するアジャイルとはほど遠いデータ運用グループや、総合要件定義書がないとテストを開始できないと主張するテストグループとの協力を余儀なくされるような場合だ。「アジャイル」チームは事実上身動きが取れない。これは、ほかの作業方法を反映した作業方法に必要なデータのエキスパートやテスターに対する権限がチームメンバーにはないためだ。

 大人が子供のように扱われる。高給・高学歴のエキスパートチームには、善意のプロジェクトマネージャによって強制される詳細なプロジェクト計画がある。これらのエキスパートは実作業をこなすスキルはあっても自分たちだけでは最善策を判断できない、との仮定が基盤にあるためだ。プロジェクトマネージャは、計画に対する最終的責任を持つが、実際の作業の担当者たちと一緒に計画を立てる責任も持つ。

 総意の凡庸。総意による判断は、誰もが同意できる最低限の共通項を持った質の低いものになる場合が多いが、これでは効果的に作業を遂行することはできない。自己管理は総意ベースのアプローチではない。時には判断に同意できない人も出てくるが、チームの意思に従った選択を行い、それが誤りになる場合もある。マネージャは、折に触れて少数意見も検討し、場合によっては不人気のアプローチにも成功のチャンスを与えるべく、大多数の説得に努める必要がある。効率的なマネージャは総意を要求してばかりではないが、これが除外するものでないことも確かだ。

 無秩序による大失敗。あらゆる問題に関する決定権が与えられたチームは、組織全体の戦略を反映しない判断を下すことが多くなる。自己管理チームのコンセプトは無秩序を包含するものではない。自己管理は、優れたプロジェクトマネージャの指導によって強化される。また、組織の基準、インフラ、そして外部規制によっても強化される。「自己管理」とは、完全に何でも好きなことができることを意味するわけではない。

推奨デフォルト

 プロジェクトチームには、自分たち自身と、作業環境と、そして自分たちが統括するプロジェクトで効果的成果を収めるのに適当だと思われる全体的アプローチを管理する権限が必要だ。チームが受ける企業指針のような制約は、すべてを適宜チームに説明し、話し合っておく必要がある。

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