仮想テープライブラリは忘れられた選択肢?これなら分かるストレージのキーワード(3)(2/3 ページ)

» 2008年01月21日 12時00分 公開
[阿部 恵史、瀧川 大爾(日本ネットワーク・アプライアンス株式会社),@IT]

仮想テープライブラリとは何か

 では、VTLとはどういうものなのだろうか。VTLとは、実際にはディスクストレージシステムでありながら、VTL専用ソフトウェアまたはOSによって、サーバOSに対しては物理的なライブラリやテープドライブのごとく振る舞い、バックアップアプリケーションに対しては、透過的に物理テープライブラリをコントロールし、物理テープドライブに挿入されたテープメディアにデータの入出力をテープフォーマットで記録させることができる、テープライブラリの仮想化ストレージ製品のことである。

 一般的にVTL製品は、OSやアプリケーションが稼働するサーバとディスクシェルフなどを組み合わせて、ソフトウェアとしてサーバ上にインストールして使用する、あるいはサーバにインストール済みのパッケージ製品として提供されることが多い。

 一方、ストレージ製品でVTL機能が提供される場合もある。例えばネットワーク・アプライアンス(以下ネットアップ)では、FASシリーズと呼ばれるディスクストレージ製品とまったく同じハードウェアに、仮想テープライブラリの機能に特化した専用のOSを搭載し、信頼性とパフォーマンスの向上を同時に実現したアプライアンス製品である「NetApp NearStore VTLシリーズ」を提供している。

VTLの利用状況

 日本ではまだ導入が進んでいないVTLであるが、欧米では急速に普及しつつある。例えばネットアップの場合、国による差はあるものの、北米や欧州においては前年比3倍以上の売り上げを記録している国が少なくない。この地域におけるネットアップのVTLビジネスは、すでに新規立ち上げ事業という位置付けではなくなり、データ保護における主力ビジネスの一翼を担うまでに成長している。

 その一方、アジア地域では市場自体の成長が鈍く、とりわけ日本ではVTLの普及がなかなか進んでいないというのが実情である。その理由は幾つか考えられるが、SIパートナーやユーザー企業は、主に以下の2つを指摘する。

  • VTLの効果的な導入形態が分からない
  • VTLの利点が明確でない

 以下では、これらの内容について考えてみたい。

最適なVTLの導入形態

 D2Dバックアップは前述のとおり、その導入によって非常に大きな効果が期待される。しかしその一方で、テープストレージが完全になくなることは、ここしばらくはないであろうと考えられる。というのは、従来のテープストレージを前提としたバックアップシステム環境と運用管理フレームワークをすべてディスクストレージによるD2Dバックアップに切り替えることは、投資の保護や新たなシステム導入コスト負担の面から考えて現実的ではない。

 一般的なD2Dバックアップを実現するためには、従来のテープストレージの代わりにバックアップ用のディスクストレージを新規に導入する必要がある。さらにバックアップ形式は従来使用されていたテープフォーマットとは異なるため、既存のバックアップ済みテープの保管期限まではテープストレージも確保しておかなくてはならない。また、テープバックアップから完全に移行するのであれば、テープに保管されているデータをD2Dバックアップ形式へのデータ移行も必要となる。

 従って、現状のバックアップシステム環境と運用プロセスに極力影響を与えず、D2Dバックアップ・リカバリソリューションのメリットを得るには、最終的な長期的データ保管先としてのテープライブラリは残しておき、本稼働データストレージシステムと既存のテープストレージの間にVTLを導入し、短期・中期のデータ保管とリカバリ時の基になるバックアップデータはVTLに集約するアプローチが、多くの場合有効と考えられる。

 実際、VTLをデータ保護ソリューションの主力ビジネスの1つとして成長させている欧州および北米市場においては、NetApp NearStore VTLを採用したユーザー企業の90〜95%はテープストレージとの併用となっている。

 こうした実績からも、既存資産の有効活用とD2Dバックアップのメリットの両方を享受するには、多くの場合VTLと既存テープライブラリの併用を前提とするのがよいと考えられる。

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