リーンソフトウェア開発(りーんそふとうぇあかいはつ)情報マネジメント用語辞典

LSD / lean software development / リーン開発

» 2008年03月10日 00時00分 公開

 製造業を中心に展開されているリーン生産方式(注1)の考え方(リーン思考)をソフトウェア製品に適用した開発手法。アジャイルソフトウェア開発(注2)手法の1つに数えられる。

 リーンソフトウェア開発は、具体的なプラクティス(実践手順)や体系的なフレームワークの形ではなく、プラクティスを各分野・現場に合わせて作り出す際の手助けとなる、「7つの原則」および「22の思考ツール」として提示される。「7つの原則」は以下の通り。

  • 原則1:ムダをなくす
  • 原則2:品質を作り込む
  • 原則3:知識を作り出す
  • 原則4:決定を遅らせる
  • 原則5:速く提供する
  • 原則6:人を尊重する
  • 原則7:全体を最適化する

 原則1の「ムダをなくす」は、リーン生産の原点であるトヨタ生産方式の基本理念である「ムダの徹底的な排除」に当たり、最も中核的な価値観である。同時にこれら原則は、最初から正しく計画・決定すること、仕事は分割・個別管理されるべきことを否定し、非中央集権的体制、学習と改善、協調と連携を前提としたものになっている。

 これら諸原則を具体化するためのアイデアが「思考ツール」で、「ムダを認識する」「バリューストリーム・マップ」「フィードバック」「イテレーション」「同期」「集合ベース開発」「オプション思考」「最終責任時点」「意思決定プルシステム」「待ち行列理論」「遅れのコスト」「自発的決定」「モチベーション」「リーダーシップ」「専門知識」「認知統一性」「コンセプト統一性」「リファクタリング」「テスティング」「計測」「契約」の22が挙げられている。

 提唱者のメアリー・ポッペンディーク(Mary Poppendieck)とトム・ポッペンディーク(Tom Poppendieck)は著書『Lean Software Development: An Agile Toolkit』で、リーン原則は広い分野で適用できるが、製造工程に適用されているリーン生産プラクティスを、そのままソフトウェア開発に移植できないと述べている。すなわち、ソフトウェアを作り出す活動は「製造プロセス」ではなく、「開発プロセス」であって、試行錯誤を含む学習プロセスだからだという。また、具体的適用については、「あるチームには薬でも、それが別のチームにとっては毒となる」ことを指摘し、どのツールからどのようなプラクティスを導き出し、どの程度実践するかは状況に応じて行われるべきだとしている。

参考文献

▼『リーンソフトウエア開発――アジャイル開発を実践する22の方法』 メアリー・ポッペンディーク、トム・ポッペンディーク=著/平鍋健児、高嶋優子、佐野建樹=訳/日経BP社/2004年8月(『Lean Software Development: An Agile Toolkit』の邦訳)

▼『リーン開発の本質――ソフトウエア開発に生かす7つの原則』 メアリー・ポッペンディーク、トム・ポッペンディーク=著/平鍋健児=監訳/高嶋優子、天野勝=訳/日経BP社/2008年2月(『Implementing Lean Software Development: From Concept to Cash』の邦訳)

▼『ムダなし企業への挑戦――リーン思考で組織が若返る』 ジェームス・P・ウォーマック、ダニエル・T・ジョーンズ=著/稲垣公夫=訳/日経BP社/1997年6月(『『Lean thinking』の邦訳)


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ