経済産業省のBPO(業務プロセスアウトソーシング)研究会は、日本企業のBPO活用についての報告書を6月末に公開した。東証一部上場企業1729社へのアンケートと、BPOベンダへのヒアリング調査を行ってまとめた。日本企業にはBPOを活用して企業競争力を向上させようとする動きが乏しいと指摘し、ユーザー企業側、BPOベンダ側の両方に課題があるとしている。
報告書はBPOについて「総務・経理・人事業務における非コアな業務のビジネス・プロセスを外部にアウトソーシングすること」と定義する。BPOは海外で利用が急拡大していて、情報システムの運用(ITアウトソーシング)を含む世界のBPO市場は2006年から2010年にかけて年平均15.9%で成長するとしている。ITアウトソーシングを含まないBPO市場についても2004年から年平均8.8%の成長を続けているという。BPOベンダのトップ100のうち、7割弱を米国企業が占める。
国内のBPO市場も2006年から2011年にかけて年平均5.0%で成長する見込みで、海外ほどではないにしろ拡大している。2011年には約1兆650億円の規模になると見込まれている。ITアウトソーシングに限っていえば、2005年度から2010年度にかけて年平均28.1%の急拡大が予想されている。
ただ、国内でBPOを利用しているのは東証一部上場企業のうち46%といい、半数以上の企業はまだ使っていない。BPOを利用しない理由として企業から浮かび上がってきたのは「社内で対応できており必要性を感じない」(約33%)や「社内の人材が育たなくなる」(約21%)など、そもそもBPOの利用意向がないという答えだった。加えて、「コストメリットを感じない」(約11%)や「個人情報や機密情報の流出に不安がある」(約10%)などの声もあった。
しかし、これらの不安はBPOを使っていない企業の“食わず嫌い”の面もあるようだ。BPOを使っていない企業からは、BPOベンダに解決してもらいたい問題点として「価格が高い」「自社の業務プロセスやITシステムなどに対する柔軟性が乏しい」「セキュリティ対策が十分ではない」などが挙がっているが、すでにBPOを活用している企業の間からは上記の不安や要望の声は挙がってきておらず、代わりに「提案力が弱い」という問題が指摘されている。
すでにBPOを使っている企業は、BPO利用開始前に「コスト削減」や「経営資源のコア業務への集中」を期待するケースが多く、実際に得られた効果でも上記の回答を挙げた割合が高かった。「業務プロセスの改善」「業務継続性の確保」「専門的知識・スキルの活用」などの効果が出たとする回答の割合が、利用開始前の期待の割合よりも高く、報告書は「付加価値面で期待以上の効果が上がっていることが示唆される」としている。コスト削減効果についてはBPOを使うことで、2〜3割以上の削減ができたとする答えが40%以上あり、約半数の企業は今後、BPOの利用を拡大したいとしている。
報告書は企業がBPOを活用するための課題として「日本企業では“あ・うんの呼吸”や“ハイタッチのコミュニケーション”が重視され、業務は各個人に任されることが多いため、BPO活用が進みにくい」や、「BPOベンダを選定する際、自社の関連会社であることを最重視していて、導入後も効果を測定・モニタリングしていない企業が多い」「仕様がたびたび変更になり、仕様変更があっても別料金の請求が認められず、BPOベンダに対する負荷が必要以上に大きい」などと指摘する。
そのうえでBPOを活用するには、業務プロセスの可視化、マニュアル化、標準化が必要として、BPOを活用できるような環境整備を検討することが重要と提言する。また、サービス品質に基づくBPOベンダの選択や、適切な契約形態の確立が求められると指摘した。
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