あなたは、受託開発を行っているシステム開発会社の営業担当者だとします。2008年7月に販売管理システムの開発を、10億円で受注しました。開発プロジェクトの期間は2008年8月からの12カ月。2009年7月までにシステムを納品するという契約です。
それでは2008年7月現在、つまり受注した時点で、この販売管理システム開発案件の決算書上の売上はいくらでしょうか?
10億円と思われた方、残念ながら間違いです。正解は0円です。
なぜかといえば、「ソフトウェア開発を受注しただけでは商品を販売したことにならないため、まだ売上にしてはいけない」という決まりがあるためです。このような決算書上(会計上)の売上にすることを「売上計上する」といい、どのタイミングなら売上計上していい、という決まりのことを「売上計上基準」と呼びます。
一般的な製造業なら製品の出荷や納品、検収の時点で売上計上します。しかし、建築や造船、システム開発などサービスや物品の提供にある程度時間がかかる契約(工事契約といいます)では、「工事完成基準」と「工事進行基準」のどちらかの売上計上基準が採用されます。
さて、なぜいまIT業界で工事進行基準が騒がれているのでしょうか? それは、「2009年4月(3月決算の会社の場合)から始まるソフトウェア開発の売上計上には、原則として工事進行基準を適用しなくてはならない」と決められた(※)からなのです。
現在、多くのソフトウェア開発会社は、計算方法の簡便性から工事完成基準を適用していますが、今後は原則として工事進行基準に切り替えなければならなくなるのです。
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