これまで解説した見る技術と計る技術を理解したところで、例を挙げながら、実際の業務改善の進め方について解説する。
第1回「業務改善は業務の可視化から始めよう」と第2回「業務改善には計る技術とKPIも活用せよ」では、「業務改善には現状把握が重要である」ことを前提に、業務フローチャートによる「見る技術」、KPI(Key Performance Indicator)による「計る技術」という2つの現状把握の手法を紹介しました。さらに、業務フローチャートとKPIを利用して現状把握を業務改善につなげる着眼点についても解説しました。
本連載も最終回です。今回はいよいよ、実際に業務改善を実現するための「業務改善の進め方」について具体的に解説していきます。また、現場主導の業務改善を成功させるための要諦(ようてい)についても取り上げます。
業務改善の進め方には定石があります。業務改善を取り仕切るリーダーと現場の担当者たちがその定石を共有し、一丸となり、同じ進め方で取り組むことが、業務改善を成功させる近道となります。
ここで、業務改善とは何か、あらためて確認しましょう。
業務改善とは、品質向上(クオリティアップ)、費用低減(コストダウン)、納期短縮(スピードアップ)を妨げている問題を、業務プロセスの改善を通して解決することでした。すなわち、業務改善とは、広い意味での問題解決といえます。
問題解決には、「防止型」と「単発処理型」の大きく2つのパターンがあります。「防止型」は、再発防止や将来の問題の顕在化への対応を目的とし、「単発処理型」は単発の事象の収束や解決、事後処理を目的とします。業務改善はこのうち「防止型」に含まれ、継続的・反復的に行われる活動のメカニズムを解明していくことが、業務改善(すなわち、防止型問題解決)の重要な鍵となります。
前回までに、業務改善の進め方は大きく(1)問題発見→(2)問題分析→(3)解決策立案→(4)実行→(5)評価、で構成されていると解説しました。これを、業務改善が「防止型」問題解決であることを前提にさらに細分化すると、その進め方は、以下のようなります。
業務改善の進め方について、具体的に説明していきます。
連載第1回「業務改善は業務の可視化から始めよう」の「各ステップでの現状把握の役割」で述べたように、業務改善を進める際には、すべてのステップで現状把握が必要となります。
簡単なケースを例に、現状把握との関係を織り交ぜながら、各ステップの進め方を見ていきましょう。
今回のケースでは、会員制ゴルフクラブにおいて、会員申し込みの受け付けから会員資格判定のための社内申請までの業務プロセスを、時間の短縮によって改善することを目的とする。
業務改善の最初のステップである問題発見は、「何か変だぞ」「いつもと違うぞ」「思惑通りではないぞ」という違和感を感知すること(つまり現状把握)が契機(トリガー)となります。
このケースでは、部署のメンバーにとって当たり前となっていた状況を、新しい担当者が着任と同時に一般的な状況と比較し、「これはおかしいのではないか?」と感じたことで、問題を発見したとしましょう。
このように、問題発見は、担当者の直感やお客さまからのクレームといった、偶然もたらされた断片的な情報を通して気付くこともあれば、業務を改善しようという意識を持って、業務フローチャートやKPIに着眼点を置いて見ることで気付くこともあります。
現実的には、前者のように直感や断片的な情報に端を発する場合が多く、その意味では、違和感を見逃さない、マンネリや過去の常識にとらわれない視点を持つことが重要となります。
次のステップである問題分析では、問題発生のメカニズムを解明するため、仮説を持って、体系的・網羅例に現状把握をしていきます。このステップは、(2−1)問題確認、(2−2)目標設定、(2−3)原因分析という3つのステップに細分化されます。
問題確認では、「それは事実か?」「どれほどのことか?」ということを、KPIによる現状把握を通して、事実を確認し、問題の重要性、緊急性、あるいは具体的な影響などを判断していきます。
今回のケースでは、申請日数(「申込書の受け取り」から「申請」までの日数)がこの問題のKPIであることを確認し、それが2営業日であることが分かったとしましょう(図2)。
次に、申請日数2営業日というのは、時間がかかり過ぎているのか、それが顧客満足度や業務コストにどれくらい影響を与えているのかなどを、多様な観点から、本当に解決すべき重要な問題なのかを判断します。
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