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» 2008年08月18日 00時00分 公開

YouTubeらしい広告のあり方を模索、グーグルユーザーを巻き込んだブランディングの新手法が登場

[西村賢,@IT]

 現在、YouTubeにアップロードされる動画は1分当たり13時間ぶん――。8月18日、東京・渋谷の本社で定例記者会見を開いたグーグルは、YouTubeに関する最新情報や同社の取り組みについて紹介した。

 YouTubeプロダクトマネージャーで日本およびアジア太平洋地域担当の徳生裕人氏によれば、現在YouTubeにアップロードされる動画の数は1日当たり数十万本。2007年6月19日のサービス開始以来、日本での同サービスの伸びは順調で、現在世界2位の視聴数があるという。また、モバイル版では日本からのトラフィックが全体の50%を占めてトップ。また同社は「ハイスペックな端末が売れるとトラフィックが伸びる。まだ伸びしろがある」(徳生氏)と見ているという。

 順調に伸びるトラフィックを背景にマネタイズ(収益化)への模索を始めた。8月4日からはモバイル版YouTubeのトップにバナー広告を入れるパイロットテストを開始。ただ、「PC版とモバイル版では視聴形態が違うので、違う広告手法があるはず」(徳生氏)との判断から、あくまでも実験的な段階にとどまっている。

テレビCMとは違うYouTubeらしい広告のあり方

YouTubeプロダクトマネージャー 日本およびアジア太平洋地域担当 徳生裕人氏

 ユーザー投稿が主体で、テレビなど従来型メディアと異なりコンテンツ提供者が任意のタイミングで内容を変更できる動画サイトというYouTubeの特徴を生かした、新しい広告のあり方も同様に模索しているという。

 1つは動画の再生中に字幕のように広告が表示されるもので、外部サイトへのリンクだったり、別の映画のトレーラー動画へのリンクだったりするもの。ユーザーが邪魔に感じたらすぐに画面から消せるよう配慮しているが、それは、その表示方法が一番広告効果が高いからだという。

 YouTubeのトラフィックの約半分は検索の結果によるもので、ユーザーが発見して、それを他サイトなどで共有して広まっていくというのがYouTubeらしいあり方という。「動画のほうが勝手に有名になっていくのが理想的なモデル。次々に共有できてバイラルマーケティングな効果が大きい」(徳生氏)

 最近の大きな成功例として徳生氏は、アメリカでミキサー販売を行うBlendtecの例を挙げる。「Will it Blend?」(混ざるでしょうか?)と題された同社の一連のCMでは、通常はミキサーに入れないようなもの、例えばルービックキューブやテレビのリモコン、ナイキの靴、悪名高いPCゲーム「Grand Theft Auto」のCD-ROMなど次々に入れて破砕する映像で話題になった。間の抜けた科学者風の中年男が楽しげにミキサーを操る同シリーズはもともと人気があったが、中でもiPhone 3Gを粉々にする映像は160万以上の閲覧数を数えるヒットになった。動画サイト公開後にミキサーの売り上げが650%にアップし、ミキサーが売れすぎてWebサイトから動画を外すほどになったという。

 バイラルマーケティングだけではなく、ユーザーからの動画投稿自体もブランディングに生かす「ユーザーを巻き込む仕組みとしてのプラットフォームを提供していきたい」(徳生氏)という。そうした例として最近では企業が動画コンテストをYouTube上で開催する例が増えているという。ケチャップで有名な米ハインツは「TOP THIS」(超えられるものなら超えてみろ!)と題するキャンペーンを展開。4000近いコンテストへのエントリーがあり、エントリー動画の閲覧時間は約8万時間、ブランドとのユーザーのインタラクション時間は12万5000時間となったという。

動画投稿でユーザーの自作CMを募った米ハインツのチャンネル。

 ほかにも、YouTube上ではiPodのファンがiPod touchのユーザー広告を作る例などがあり、「消費者と対話でき、内容をリアルタイムに最適化できる」(徳生氏)という特徴を生かした広告のあり方が登場しつつあるという。内容の異なるものを同時に出して、どちらが反応が良いかを見て即座に結果を反映する手法も、テレビCMと異なるアプローチとして考えられるという。

何をアップしてもいい環境が理想

 現在、YouTubeの広告表示はトップページやパートナー企業のブランドチャネルページなどに限られ、動画ページにはほとんど広告を出していないという。「広告が出るのは、コンテンツの帰属がはっきりしているところだけ」(徳生氏)という方針があるからだ。

 ただ、日本でも公式コンテンツや、ユーザーが投稿した動画であってもお墨付きをもらうような動画コンテンツが増えていて、徐々に広告を出せるページが増えているという。YouTubeに限らず動画共有サイトは著作権侵害によるコンテンツの取り下げ騒動が絶えないが、徳生氏は「何をアップロードしても権利処理がYouTube側で全部できるような環境」が目標だと話している。

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