柏レイソルの年間シート予約システムもForce.com上で実現セールスフォースがプライベートイベントを開催

» 2008年09月02日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 セールスフォース・ドットコムは9月2日、同社の開発者向けイベント「Salesforce LIVE '08」を開催。基調講演では、米セールスフォース・ドットコム プレジデント兼チーフカスタマーオフィサー ジム・スティール(Jim Steele)氏がクラウドコンピューティングの現状について語った。

すでにクラウドコンピューティング時代は始まっている

 スティール氏は冒頭、クラウドコンピューティングについて、現在「クラウドコンピューティングはいま実現し始めている」「クラウドコンピューティングのイノベーションは成功への最短の近道」「セールスフォースはクラウドコンピューティングのリーダー」「クラウドコンピューティングを中心にIT計画を立てるべき」という4つのテーマを挙げた。

スティール氏写真 米セールスフォース・ドットコム プレジデント兼チーフカスタマーオフィサー ジム・スティール氏

 同氏はクラウドコンピューティングを実現するプラットフォームとして「PaaS:Platform as a Service」が重要な位置をしめるとし、PaaS普及のポイントを「マルチテナント」と「従量課金制」とした。従量課金制によって、小さな企業から大企業までそれぞれの規模に合った投資で利用することができるうえに、マルチテナントを実現するプラットフォーム(PaaS)を提供することで、ユーザーはそれぞれの望む利用方法を構築できる下準備が整ったという。セールスフォースでは、PaaSを補完するサービスとして、セールスフォース専用の独自プログラミング言語である「Apexコード」を公開したり、GUI画面で開発できる「Visual Force」を提供するなど各種開発者向けのツールを提供し、サポートしている。

 その結果、動画サイトやネットバンキングをただ使うだけだった「Web 2.0」から、さらに自分でサービスを作る「Web 3.0」、つまりクラウドコンピューティングの時代へと移行し始めているとスティール氏は主張した。

 実際、セールスフォースはこれまでの創業から9年間はSaaSのアプリケーション開発に注力してきたが、今後10年間はこれに加えてプラットフォームとしてのPaaSにも注力していくとした。「もはやアプリケーションのスタンダードはSaaS形式になりつつある。今後、プラットフォームもPaaSがスタンダードになるだろう。つまり、今後クラウドコンピューティングは最高のアプリケーションを使えるプラットフォームとなっていくだろう。そして当社では、その状況をPaaSのリーダーとしてけん引していく」(スティール氏)と語った。

すでに8万以上のカスタムアプリケーションが稼働中

 現在、セールスフォースが提供しているPaaS「Force.com」では、主に3種類のアプリケーションが提供されている。セールスフォース自身が提供しているアプリケーションと、ISVベンダが提供しているアプリケーション、そしてユーザー自身などで作るカスタムアプリケーションだ。

 セールスフォースが提供しているアプリケーションというのは、SFAやCRMなどのアプリケーション群。ISVベンダが提供しているアプリケーションは、ISVベンダがユーザー企業向けに開発したもので、すでに800種類以上のアプリケーションが提供されている。カスタムアプリケーションは、自社のためだけに作ったアプリケーションなどで、すでに8万以上のカスタムアプリケーションが実装されているとした。

 カスタムアプリケーションを利用することで、部門内のビジネスプロセスを自動化したり、ExcelなどのデスクトップアプリケーションをForce.com上に移行することなどが可能。社内外のWebシステムとの連携もできるとした。キヤノンマーケティングジャパンの場合、このカスタムアプリケーションなどを利用することで、同社のモバイルユーザー(1100ユーザー)向けに全顧客情報へのリアルタイムアクセスを実現。22の異なるシステムを統合したという。

 また、現在セールスフォースの最大顧客である郵便局株式会社は、「お問い合わせ等報告システム」をForce.com上に構築した。このシステムは、全国2万4000局に散らばっている郵便局員が利用者から寄せられた問い合わせや利用者対応履歴を入力し、集約した情報を本社などと共有しているというものだ。現在6万5000ユーザー以上が利用しているという。

柏レイソルの年間シート予約システムもForce.com上で実現

 続いて、セールスフォース・ドットコムのパートナー企業代表として、日立ソフトウェアエンジニアリング 産業サービス本部 SaaSビジネス部 グループマネージャ 吉井淳治氏が登壇。同社が開発しているJリーグ柏レイソルの事例を紹介した。

 柏レイソルでは、ファンクラブ会員の管理や年間シート予約システムをセールスフォースのカスタムアプリケーションで開発中。間もなく実装されるという。

画面イメージ写真 開発中の柏レイソルのシステム画面。左は年間シート予約システムの画面で、スタジアムの見取り図を見ながら予約できる。右はその席からグラウンドを見た場合のイメージ写真を表示しているところ

 年間シート予約システムでは、例えば「バックスタンドで、2名続きの席」を探したい場合、グラウンド見取り図から希望した席を選べるほか、「大まかにその席からグラウンドがどのように見えるか?」までチェックすることができるという。そのため、ユーザーの満足度を高くすることができるほか、業務スピードの向上にも役立っているという。

 吉井氏は「このシステムはVisual Forceで構築した。これからの時代は『いかにユーザーニーズにフィットしたものを作るか』が重要になってくる。そのために、われわれのようなベンダがカスタムアプリケーションを作成できるプラットフォームは非常に魅力的だ」とコメントした。

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