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» 2008年09月02日 00時00分 公開

情報システム用語事典:ペルソナ(ぺるそな):

personas

[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 インタラクションデザインで用いられるデザイン支援ツールの1つで、製品やサービスをデザインする際にターゲットとして想定する架空のユーザー像のこと。実在の人々を調査・観察し、得られたデータに基づいて典型的ユーザーを定義することで、特定のユーザータイプのニーズに沿ったものを作るために利用される。

 インタラクションを含む製品・サービスをデザインするという作業は、ユーザーの行動パターンに合致したインタラクションパターンを構造化することである。このためにはユーザーが置かれた状況、ユーザーの興味や技量、真にやりたいことなどを深く認識し、その反映としてのユーザー行動のパターンを理解しなければならない。そのために用いられる概念ツールが「ペルソナ」である。

 ペルソナはユーザー調査の観察結果から抽出した振る舞い、態度、適性、目的、モチベーションなどを総合したユーザーモデルである。特定の人物ではなく、複数の実ユーザーを総合し、あるユーザーグループを代表するアーキタイプ(元型)として定義されたものである。しかし、ユーザー像がイメージしやすいように具体的な個性・属性を持つ。

 ペルソナ概念を考案したのは、マイクロソフトでVisual BASICを開発したアラン・アラン・クーパー(Alan Cooper)である。1999年の著書『The Inmates are Running the Asylum』で広く知られるようになった。彼が設立したコンサルティング会社のCooperが開発したペルソナ構築プロセスは、以下のとおり。

  1. 行動変数を見極める
  2. インタビューの被験者の行動変数に対応付ける
  3. 顕著な行動パターンを見出す
  4. 特徴とそれに関係あるゴールを総合する
  5. 重複や完成度をチェックする
  6. 態度や振る舞いの記述を拡張する
  7. ペルソナの配役を決める

 ペルソナ定義の第一歩は、ユーザー(潜在ユーザーを含む)へのインタビューや行動の観察を通じた調査でこれを終えたら、調査結果を行動変数ごとにまとめていく。これは活動・態度・適性・モチベーション・技量などが典型的なものだが、ユーザータイプを特徴付ける変数を選択する。次にインタビューの被験者を行動変数に対応付け、その分布を見極める。その結果、特に集中しているところが見つかればそこがユーザーグループの顕著な行動パターンを示していると考えられる。

 行動パターンを見つけたら、これに基づいてペルソナのディティールを箇条書きにしてその全体像を形作っていく。ディティールで最も重要なものはゴールである。このほかの個性も観察に基づいて記述していくが、氏名・年齢・居住地・肩書きなどについては虚構的なものとなる。ただし、これらはペルソナのイメージを具体化させるためのものであり、リアリティを失うようなものであってはならない。

 作られたペルソナの完成度をチェックしたら、3人称の物語の形でペルソナの態度や振る舞いの記述を拡張する。物語を作成する際にはペルソナの写真を選び、イメージしやすいようにするとよい。ペルソナがリアルな存在となったら、デザインターゲットの優先順位を定めるために役柄を与えていく。主要なターゲットを表す主役ペルソナのほか、脇役・端役・顧客・サービス利用者・黒衣ペルソナをキャスティングする。

 事情により調査が行えない場合には、手持ちのデータと推測によって作られる暫定ペルソナ(アドホックペルソナ)が用いられる。これを用いる際の注意点として「ビジュアル表現はスケッチとする」「推測に基づくデータは判別できるようにする」などが挙げられている。また、調査計画を立てる段階でデザイナーがおおまかなユーザータイプを把握するために、仮説的ペルソナを利用する場合もある。

 ペルソナのメリットはまず第1に、1つの製品に多くの機能を盛り込みすぎて、結果としてすべてのユーザーが満足しないものになってしまうことを防ぐことである。さまざまなユーザーがいる場合、固有のニーズを持つユーザータイプを寄り分け、それぞれに別のデザインを用意すべきで、そのユーザータイプを分類するツールとしてペルソナが有効である。

 第2にデザインする製品・サービスのターゲットユーザーを設計・開発チームで共有できるようになることが挙げられる。自分たちが作ろうとしている製品・サービスを実際に使うユーザーがどのようなゴールを持ち、どのような役割・環境でどのような行動をするのかを具体的にイメージできるようにすることで、細部にわたって気の利いたデザインや機能を統一された形で提供する手助けとなる。

 ペルソナはコンピュータ・ソフトウェアやデジタル機器のユーザーインターフェイスをデザインするために生み出されたアイデアで、ゴールダイレクテッドデザインペルソナ/シナリオ法)ではモデリングプロセスの活動に位置付けられている。近年では一般商品の企画やマーケティング、サービスなどの分野にも取り入れられ、商品開発から販売コンセプトやサービスプロセスの定義、さらには“社員ペルソナ”を作成しての組織活性化まで、幅広い領域で応用されている。

参考文献

▼『コンピュータは、むずかしすぎて使えない!』 アラン・クーパー=著/山形浩生=訳/翔泳社/2000年2月(『The Inmates are Running the Asylum』の邦訳)

▼『ユーザーインターフェースデザイン――Windows95時代のソフトウェアデザインを考える』 アラン・クーパー=著/テクニカルコア=訳/翔泳社/1996年5月(『About Face: The Essentials of User Interface Design』の邦訳)

▼『About face 3――インタラクションデザインの極意』 アラン・クーパー、ロバート・レイマン、デビッド・クローニン=著/長尾高弘=訳/アスキー・メディアワークス/2008年7月(『About Face 3: The Essentials of Interaction Design』の邦訳)

▼『ペルソナ戦略――マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする』 ジョン・S・プルーイット、タマラ・アドリン=著/秋本芳伸、岡田泰子、ラリス資子=訳/ダイヤモンド社/2007年3月(『The Persona Lifecycle: Keeping People in Mind Throughout Product Design』の邦訳)


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