業務プロセスは「見せる化」しよう!業務プロセス[見せる化]塾(1)(2/2 ページ)

» 2008年10月07日 12時00分 公開
[中村洋(株式会社レンタコーチ),@IT]
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業務プロセスに係る内部統制整備の課題

 金融商品取引法が規定する財務報告に係る内部統制は、その準備期間を終えて、来年3月末に決算を迎える事業年度を対象としてその適用が始まった。この内部統制は、全社的な内部統制と業務プロセスに係る内部統制から構成され、後者の整備のために重要な業務に関してその業務プロセスを記述し、それを基にリスクを識別し、十分な対策が講じられていることを確認しなければならない。

 業務プロセスを記述する目的は、財務報告に虚偽記載が起きる業務プロセス上のリスクを洗い出し、そのための対策が業務プロセスに組み込まれていることを確認できるようにすることである。そのために業務フローや業務記述書が書かれているのが現状であるが、その効果と課題について考えてみたい。

統一されない業務プロセスの記述法

 内部統制整備は初めての経験なので、手本も経験者もないに等しい。そんな状況で業務フローを書けば、業務単位の切り出し方、業務内容の詳細度、それに業務を構成する作業の組み合わせ方はバラバラになってしまう。記述法が不統一でも業務プロセスの見える化は達成できるが、記述された業務プロセスはそれを記述した人以外の関係者には分かりづらいという欠点を抱える。

不十分なリスク分析

 業務プロセスに係るリスクを洗い出すためには、その業務を担当する部門だけでなく、管理部門の担当者をはじめ、多くの人の目によって多角的に見ていくことが求められる。リスク対策の検証でも、同じように多くの関係者の知恵と経験が必要となる。時間と専門家が限られているという制約の下でも、十分なリスク分析を行うためには網羅性と効率性の両立が必要となるが、適切な手法がないのが現状である。

業務プロセスの見せる化

 業務プロセスの描き方を統一させ、十分なリスク分析を行うことは可能だろうか? 筆者は、そのために業務部門、情報システム部門、それに管理部門が連携を強化して、次のように分業することを提案する。

  1. 業務部門が、業務フローを比較的自由に書けるフローチャートを用いて下書きする
  2. 情報システム部門がその業務フローを、ある記述ルールに従ってBPMモデラーを用いて清書する
  3. 管理部門主体で清書された業務プロセスに関するリスク分析を行う

 この分業と手順は、業務プロセスを関係者に分かりやすいように見せているという意味で、従来の「見える化」ではなく「見せる化」と呼びたいと筆者は考えている。この見せる化は、業務単位の切り出し方に対する解決策にはならないが、業務プロセス記述を標準化し、リスク分析を効率化させることができる。

 手順に沿って、もう少し詳しく説明しよう。

業務部門がフローチャートで下書き

 まず、情報システム部門が、業務部門から業務内容を聞き出す代わりに、全社的なビジネスプロセス体系図を業務部門に提示する。業務部門は、自部門における個別業務をその体系図に位置付ける。

 そのうえで業務部門は、個別業務の内容を自らフローチャートを用いて記述する。この記述のルールとして、後続するBPMモデラーでの清書を効率的に行えるように、その構成要素を次のように限定する。

  • 作業
  • 書類
  • 判断

情報システム部門がBPMモデラーで清書

 次に、業務部門が作成した業務フローを下書きとして、ある記述ルールに従って情報システム部門が業務プロセスを清書する。このときの記述ルールとしては、内部統制整備に使うことを想定すれば、先ほど述べたBPMNによる作業パターン化のほかに、作業の入力、出力、それに作業承認の記述法を決めておけばよい。

 情報システム部門が従う記述ルールは、業務部門とそのほかの関係部門が理解できるものであり、情報システム部門が清書した業務プロセスを業務部門が理解し、確認することができる。

管理部門主体でリスク分析

 最後に、清書された業務プロセスを見ながら、管理部門主体で多くの関係部門が集まり、業務プロセスに係るリスクを分析する。業務プロセスは決められた記述ルールに従って描かれているから、関係者全員が同じ理解を共有できる。特に、虚偽記載のリスクを洗い出すためには、出力のある作業に注目すればよい。


 次回以降、見せる化の各段階を詳細に解説していきたい。特に、業務フローに係るリスクを網羅的に洗い出すために、連続プラントなどの安全性解析に使われているHAZOPという手法の活用を提案したいと考えている。

筆者プロフィール

中村 洋(なかむら ひろし)

株式会社レンタコーチ 代表取締役

日本BPM協会会員

1973年に株式会社東芝に入社し、コンピュータ部門、携帯電話機部門でソフトウェア開発、商品企画に従事。2006年から株式会社レンタコーチを起業し、プロジェクトマネジメント、ソフトウェア開発、商品開発に関するコーチサービスを提供している。


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