【Top10】「検索シェア」で失敗した先週のランキング

» 2009年01月19日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 @IT NewsInsightの先週のアクセスランキングトップは「Amazon S3」の利用モデルを分析する「クラウド型ストレージ『Amazon S3』は安いか?」だった。2位、3位もクラウド・コンピューティングについての記事。2009年もクラウドの話題が多くなりそうだ。

NewsInsight Weekly Top 10
(2009年1月11日〜1月17日)
1位 クラウド型ストレージ「Amazon S3」は安いか?
2位 クラウド隆盛でARMは、さらに伸びるか
3位 クラウド・コンピューティングバトル2009
4位 Windows 7ベータ版提供開始、マイクロソフト
5位 2カ月連続下落、派遣社員の2008年11月平均時給
6位 Linux用次世代ファイルシステム「btrfs」が統合へ
7位 インド大手IT企業が巨額粉飾 「インド版エンロン事件」の声も
8位 リストやガントチャートでタスク管理、ジャストが新ツール
9位 DNSキャッシュポイズニングへの対策、済ませましたか?
10位 ブリッジSEが不況を生き抜く

 ところで、記者は新年早々やらかしてしまった。昨年12月に掲載した記事についてブログで痛烈な指摘をいただいたのだ。記事は「Yahoo!の背中見えた? グーグル日本法人が『よい年だった』」。グーグル日本法人が公表した資料から、記者は「グーグルが示したNetRatingsのサーチシェア調査(2008年11月)によると、Googleのシェアは41%で、44%のYahoo!との差が縮まってきた」と記述した。この記事について複数のブログからご指摘をいただいた。1つは「SEM酒場」で、もう1つは「Insight for WebAnalytics」だ。

 ご指摘を受けたきっかけはネットレイティングスが1月15日に発行したメールマガジン。このメールマガジンの中で、同社代表取締役社長の萩原雅之氏は、検索サイトのシェアについて、「特にメディアが好んでとりあげる『シェア』に関しては、定義や集計方法次第で結果が大きく変わってしまうため、日本ではニールセン・オンラインから検索シェアの公表は一切行っていない」と指摘している。

 そのうえで、同社のネット視聴率調査システム「NewView」で示す「検索チャネル/サーチ・カテゴリ」の数値について説明している。グーグル日本法人が公表したのはこの「サーチ・カテゴリ」の数値だ。「検索サイト(Google、Ask.jp、Baiduなど)においては各サイトのトップページの利用状況(利用者数、ページビューなど)も含まれてレポートされている一方、ポータルサイト(Yahoo!、MSN/Windows Liveなど)においては各サイトのトップページの利用状況(利用者数、ページビューなど)が含まれていない」(萩原氏)。

 つまり、Yahoo!JAPANを訪れるユーザーは検索だけが目的ではなく、ニュースを見たり、オークションが目的かもしれない。その検索以外を目的とするユーザー数を「サーチ・カテゴリ」に含めることは適当ではない。そのため、同社ではYahoo!JAPANなどのポータルサイトのトップページを「サーチ・カテゴリ」の集計から省いている。

 一方で、Googleなどの検索サイトはそのトップページを集計しているが、Googleも日本向けサイトではGmailやYouTubeへの誘導を行っていて、検索が目的のユーザーだけではない。これらの要因から「サーチ・カテゴリ」は検索エンジンの利用シェアを正確に反映しているとはいえないのだ。特に「検索サービスの利用状況を双方のサービス間で比較する場合には適正ではない」(萩原氏)。しかし、グーグル日本法人が公表したのは、この「サーチ・カテゴリ」の数値だった。

 上記のブログから記者が受けた指摘はこのような状況を理解しないまま、単にシェアの数字として「Googleのシェアは41%で、Yahoo!は44%」と取り上げた配慮のなさに起因すると思っている。関係する方々にはご迷惑をおかけした。記事を公開する前にネットレイティングス広報担当者にきちんと問い合わせをすればよかったのだが、同社となかなか連絡が取れず、見切り発車で公開をしてしまった(1月19日付で記事に説明を追記した)。

 改めてネットレイティングス広報担当者に問い合わせたところ、グーグル日本法人が示す数値は、上記の「サーチ・カテゴリ」からで、「Yahoo!とGoogleの検索の利用状況を双方で比較する上では正当性を欠く」(ネットレイティングス広報担当者)というのが同社のコメントだ。「弊社のデータを公表する際に必要な、弊社のチェックを受けずに(グーグル日本法人から)発表されたものであり、一部、公平性に欠ける解釈がありました」としている。

 萩原氏はグーグル日本法人が公表し、記者が取り上げた「検索シェア」の数字が一人歩きするのを危惧したのか、上記のメールマガジンの中で「家庭+職場における主要検索サービスの検索結果表示ページビュー数」(2008年10月)を紹介している。検索サイト、ポータルサイトのページビューはユーザーの目的を反映していないが、検索結果ページはポータルサイトや検索ツール、Webブラウザの検索窓で調べても必ず表示されるページで「実情に近い指標と思われる」(萩原氏)からだ。

 結果は上位9サイトまでしか掲載していないため、必ずしもすべての利用状況を反映しているとはいえないが、それでも利用の大まかな割合は計算できる。トップのYahoo!JAPANの検索結果ページのページビュー数は約35億3600万で、Googleは約25億6800万。上位9位の合計数は約67億2900万なので、Yahoo!JAPANは約52.5%、Googleは約38.1%を占めることになる。

 ブログ「SEM酒場」ではほかに「家庭からのアクセス」と「家庭+職場」のアクセスとの違いなどを指摘している。「どういった数字であれ、それがどのように取得され、どのような傾向を持つ可能性があるか、理解したうえで使いこなすことが重要である」と記載されている。自戒のために「Insight for WebAnalytics」の言葉も紹介したい。「メディアにおかれては、通信社じゃないんだから、そのまま鵜呑みにして情報を流すだけでは、何の付加価値も無いということを自覚して欲しいものだ」

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