金融機関のマネーロンダリング対策が加速、IT需要も拡大か今後の法規制強化は必須

» 2009年01月26日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 金融機関のマネーロンダリング対策が今後加速しそうだ。世界のGDPの2〜5%分はマネーロンダリングに関係があるとされ、テロ行為への流用などを危険視する各国が金融機関への規制を強化していることが背景にある。日本の金融機関もマネーロンダリング対策の強化が必至な状況で、その需要を狙うITベンダは営業強化に走っている。

 マネーロンダリング対策についての規制強化は1990年代から本格化した。国内でも「麻薬特例法」(1992年)、「組織的犯罪処罰法」(1996年)、「テロ資金供与処罰法」(2002年)、「金融機関等本人確認法」(2003年)など相次いで法規制が行われた。2008年3月には「犯罪収益移転防止法」が完全施行され、金融機関での本人確認の対象が広がったことは記憶に新しい。

 しかし、規制はこれだけでは終わらないようだ。マネーロンダリングを規制するために設立された政府間機関である「FATF」(金融活動作業部会)が2008年10月に日本のマネーロンダリング対策の状況を評価する文書を公表(財務省の発表文)した。その結果は本人確認や顧客管理、内部管理体制について「Non-Compliant」(不履行)を突きつける厳しい内容。今後、金融当局による何らかの規制強化が予想される。

 みずほフィナンシャルグループは2008年末に米フォーテント(FORTENT)のアンチ・マネーロンダリング・モニタリングシステムを導入し、みずほ銀行、みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行で使用開始したと発表した(発表資料PDF)。世界の金融機関、企業と取引する必要があるメガバンクは法規制の強化を織り込み済みで、すでに対策に動き出している。

日本オラクルのセールスコンサルティング統括本部 Financials SC本部 プリンシパルセールスコンサルタント 古瀬泰介氏

 金融機関にソリューションを提案するITベンダも同様だ。日本オラクルは金融機関のマネーロンダリング対策を見込んで営業体制の強化に乗り出した。オラクルは米本社が買収した旧i-flex(現Oracle Financial Services Software:OFSS)のソフトウェア製品「Mantas」を2006年から展開している。同製品はトランザクションモニタリング製品で、金融機関の取引ログを分析し、マネーロンダリングが疑われる取引を抽出することができる。マネーロンダリングで見られる取引パターンが「シナリオ」として約100パターン登録されていて、ルールベースで怪しい取引を探し出す。ソフトウェアのライセンス価格は5000万円から。

 オラクルが1月26日に開催した説明会で同社のセールスコンサルティング統括本部 Financials SC本部 プリンシパルセールスコンサルタント 古瀬泰介氏は「世界での導入は北米金融機関中心に40社。日本の金融機関にもMantasを選択肢として提供したい」と話した。同氏によると、国内では外資系金融機関の数社が使っているほか、ある国内証券会社がMantasを導入しているところで「稼働間近」(同氏)という。また、現在数社というMantasの導入パートナー企業を増やすことも検討していて、メガバンクから地方銀行まで広く導入を提案する考えだ。

 国内ではほかにSAS Institute Japanがマネーロンダリング対策のソフトウェア製品を提供している。同社のソリューション「SAS Anti-Money Laundering」は2008年、大手行を含む複数の国内銀行が採用したといい、今後の採用拡大に期待している。

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