Twitterが新しい検索エンジンとして注目されている。ユーザーに新たな情報を提供するだけでなく、ビジネス展開の加速も予想される。ネットのつぶやきが流れる「貧乏人の電子メールシステム」(グーグル CEOのエリック・シュミット氏の発言)は、検索というパワーを得ることで、新たな次元に進化する可能性がある。
@ITが掲載したeWEEKの翻訳記事「Twitterの検索機能はグーグルを脅かすか」にあるように、検索エンジンとしてTwitterが注目されるようになったのは、3月上旬に行った検索機能の組み込みだ。Twitterは2008年7月にTwitterを対象にした検索サービスを提供していたSummizeを買収し、「Twitter Search」で検索機能を提供してきた。3月上旬には一部ユーザーのホーム画面にも検索窓を設けて、キーワードなどで検索できるようにした。さらに数多く検索されているキーワードを示す「Trend」メニューも組み込んだ。
Googleなどの検索エンジンは一般のWebサイトを主な検索対象とし、情報の深さや信頼性、広範さを提供する。対してTwitter検索が提供する価値は、リアルタイム性だ。ある事柄をWebサイトにまとめるのは時間がかかるが、140文字のポストなら数秒。1つ1つの情報は限られているとしても500万人以上といわれるTwitterユーザーのそれぞれの情報が集まることで、価値が増す。
記事「Google記事の裏にTwitterあり」で書いたように、2009年1月31日深夜に発生したGoogleの表示エラーを記者が最初に知ったのはTwitterのタイムラインだった。また、2月24日にGmailがダウンした際には、Twitterのポストに付けられたHashtagsを検索できる「#hashtags」で最新情報を確認した。「#gmail」で検索すると、このタグを付けたポストが表示され、世界中でGmailがダウンしていることや、グーグルの対応、復旧状況などをリアルタイムに知ることができた。Hashtagsはユーザーが独自に利用し始めた機能で、Twitterが正式に実装したわけではない。しかし、Twitterの「Trend」メニューには、検索されているキーワードとして#付きのキーワードがよく挙がっていて、利用が一般的になりつつあるようだ(参考記事:Twitterの裏技“Hashtags”)。
このような検索エンジンとしての利用法はTwitterが検索機能を組み込んだことで加速する可能性がある。特にTwitterが組み込んだ検索エンジンの結果ページは、キーワードを含むメッセージがポストされるたびに自動で検索結果が追加されるようになっていて、いままさに進展しているイベントを見守るのに最適といえる。
Twitterにポストされる膨大なメッセージを情報の宝庫と考えるサードパーティのベンダも多い。3月17日に開設された「TwitterJobSearch」はTwitterのポストから求職関係の情報だけを検索できるサービス。「Ajax」「Ruby」など関連するキーワードを入力することで求職情報を探せる。また、Diggの創設者のケビン・ローズ氏は3月15日、Twitter上で多くのフォローを集める著名人をカテゴリ別に分類した「WeFollow」をオープンした。各ユーザーに対して関連タグが付けられていて、そのタグを検索することでフォローすべきユーザーを探すことができる。信頼できる情報源に素早く到達できる可能性が高まる。
Twitterの検索機能強化が注目されるのは、Twitterの当面の課題といえる収益化の道が開かれる可能性があるからだ。検索キーワードに連動した広告の表示は容易に思い付く。加えて、マーケティングツールとしてTwitterを活用しているデルなどの企業にとっては、ユーザーにフォローしてもらい、Twitter経由でいかにユーザーを自社サイトに呼び込むかが重要になっている(参考記事:米デルに見るTwitter活用、特売情報の独占配信を開始)。
Twitter側から見ると、Twitterユーザーをうまく企業サイトに誘導することのお手伝いが収益となる。企業にとってはTwitterユーザー向けのSEOも重要になっているのだ。欧米のマーケティング関連サイトではすでにその手法が言及されている(Twitter SEO - How to Optimize Your Website For Twitter Search)。
もう1つ、Twitterのポストを対象にしたデータマイニングもビジネスに結び付く。ある商品についての満足や不平を、その商品を開発した企業にわざわざ電話やメールで伝えるユーザーはそれほど多くないが、Twitterにポストするユーザーは多くいそうだ。それら特定の情報を分析することで、Twitterのメッセージは企業にとって価値ある情報に生まれ変わるだろう。
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