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» 2009年04月28日 00時00分 公開

タイムベース競争(たいむべーすきょうそう)情報システム用語事典

time-based competition / タイムベース競争

[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 企業の競争戦略において“時間”こそが希少資源であると考え、時間短縮をもって競争優位を築こうとする企業間競争のこと。コスト競争、品質競争に代わる競争コンセプトである。

 似たような価格や機能、品質の製品・サービスを購入する場合、いつまでも待たされるよりも即座に入手できるものの方が顧客の利便性や満足度が高い。従って、迅速に製品・サービスを提供できる企業の方が競争力が高いといえる。また、同じ時間で効率的に多くの活動が行えれば、コスト競争力の面で有利である。このように「時間こそが競争力の源泉である」と考え、時間短縮に焦点を当てるコンセプトが「タイムベース競争」である。この競争に打ち勝つための戦略を「タイムベース競争戦略」、この戦略を実践している企業を「タイムベース競争企業」という。

 タイムベース競争戦略は上記の「顧客価値の向上」「生産性の向上」のほかにも、同じ時間でより多くの企画や開発に取り組めることから「多様な製品投入による市場対応力の向上」、見込みで生産や仕入れを行う際により需要期に近いタイミングで判断が行えることから「リスクの軽減」、在庫リスクや欠品リスクが回避できることから「売上・利益の向上」といった競争優位につながる。

 タイムベース競争を提唱したのは、ボストン コンサルティング グループ(BCG)である。1980年代、米国BCGのパートナーであるジョージ・ストーク・ジュニア(George Stalk Jr.)らは、日米自動車企業の開発・生産体制を比較し、日本企業の強さはリードタイム短縮によるユーザーニーズの早期充足であると説明した。

 例えば日本企業は新車の開発から発売までを36カ月で行うが、米国企業は60カ月かかる。この差は、企画・開発部門と製造部門、原料調達先、部品メーカーなどが早い段階から情報共有を行って仕事の重複を排除し、同時並行でできる仕事は必ず同時並行で行う、といった日本企業が持つ時間の使い方にあるというのである。

 ストークらはその著書『Competing Against Time』で、タイムベース競争の幕開けとして、本田技研工業(ホンダ)とヤマハ発動機(ヤマハ)の「HY戦争」を挙げている。これは1979年にヤマハがオートバイ市場の盟主となると宣言し、市場リーダーのホンダに挑んだものだ。経営史では一般に「激烈な消耗戦」と評価される争いだが、ストークらはホンダがわずか18カ月の間に60だったモデルを113に拡大、前代未聞の新製品ラッシュでヤマハの挑戦を退けたことを挙げ、その過程でホンダは経営システムを抜本的に作り変え、「タイムベース競争の先駆者となった」と評価している。

 タイムベース競争の実践は、ただ単に作業を急ぐというわけではない。実際の企業活動を分析すると多くの場合、付加価値作業に用いられている時間は総時間の5%にも達していない。残りのほとんどは価値を生み出さない「待ち時間」であり、これを改善することがポイントとなる。BCGでは、これを「0.05?5の法則」と呼んでいる。

 このようにタイムベース競争のコンセプトは、日本企業の「改善活動」「ムダ取り」に由来するが、その実践は業務現場にとどまることが指摘されている。タイムベース競争は、企画・設計・製造・営業・事務といった現場業務だけではなく、経営意思決定にも活用できるとされており、意思決定や情報フィードバックについても“タイムマネジメント”や“情報過剰・滞留の削減”の面から制度作りやシステム設計を考えていくことが有効と思われる。

参考文献

▼『タイムベース競争戦略??競争優位のための新たな源泉…時間』 ジョージ・ストーク Jr.、トーマス・M・ハウト=著/中辻萬治、川口恵一=訳/ダイヤモンド社/1993年11月(『Competing Against Time: How Time-Based Competition Is Reshaping Global Markets』の邦訳)

▼『タイムベース競争??90年代の必勝戦略』 堀紘一、島田隆、井上猛、森啓太郎、内田和成、古谷昇、ボストンコンサルティンググループ=著/堀紘一=監修/プレジデント社/1990年9月

▼『BCG戦略コンセプト??競争優位の原理』 水越豊=著/ダイヤモンド社/2003年11月


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