リーマンショック以降、多くのプロジェクトにおいても「予算厳守」や「納期厳守」が厳命されている。このような厳しい状況下、デスマーチを回避するだけでなく、予算・納期を厳守したプロジェクトはどうすれば実現できるのだろうか。今回は、数々のコンサルティングファームでの経験を持つ日立コンサルティング ディレクター 篠昌孝氏に話を聞いた。
リーマンショック以降の世界同時不況によって、多くの経営陣は“コスト削減”が最大の関心事になっている。しかし、不況下でもプロジェクトが止まるわけではない。現在、プロジェクトマネジメントを任されている多くのプロジェクトマネージャは、現在のプロジェクトを円滑に進めつつ、「予算厳守」や「納期厳守」という経営陣からのプレッシャーとも戦わなければならない。
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このような厳しい状況下、デスマーチを回避するだけでなく、予算・納期を厳守したプロジェクトはどうすれば実現できるのだろうか。今回は、数々のコンサルティングファームでの経験を持つ日立コンサルティング ディレクター 篠昌孝氏に話を聞いた。
篠氏がまず強調するのは、「PMO(Project Management Office)」の必要性だ。組織としてプロジェクトを円滑に進め、さらにきちんとPDCAを回すためには、PMOが必須だという。
通常のプロジェクトは、プロジェクト発足とともに各分野のプロフェッショナルが集まり、プロジェクト終了とともに解散する。従って、プロジェクトマネジメントノウハウは、プロジェクトマネージャに集約される。
しかし、PMOを設立することで、そのノウハウを体系的に管理・集約し、新人PMなどに教育していくことが可能になるというのだ。このため、同氏は、まだPMOがない企業の場合、第一歩としてPMOを設立することを推奨する。
そして、その後のプロジェクトマネジメントで重要となってくる点として、「スコープの管理」「リスクを事前に把握する」「コミュニケーション管理」の3点を挙げた。
スコープ管理とは、プロジェクトの目標や成果物などをあらかじめ定義して、その後の承認や検収についてトータルで管理すること。スコープ管理では、まず工数などの見積もりをしなければならないが、その時点で忘れがちなのが「管理・マネジメントの見積もり」だという。
篠氏は「一般的にソフトウェア開発などの見積もりだと、設計→コーディング→テスト→リリースという工数見積もりしかしないケースが多い。これに加えて、プロジェクトを管理するための見積もりもしっかりとしなければならない」と指摘した。
しかし、日本のソフトウェア開発では一般的に要件定義や仕様が固まらないまま、開発を開始し、要件を変更しながら作っていくケースが多い。その場合には、最初の段階で正確な見積もりを作ることが難しい。そのようなケースについて、篠氏は「そのようなケースを想定して、バッファを積んでおくことが重要だ。ケースによってそれが10%なのか、20%なのかは変わってくるが、適切なバッファがあれば仕様変更があっても慌てずに対応できる。そして、プロジェクトマネージャの腕の見せ所はそのバッファをいかに使わないかという点にある」と説明した。
また、品質管理においては、従業員同士がお互いをチェックする「ピアレビュー(Peer Review)」を、仕様書やプログラム、テストなどあらゆる段階で実施することが重要だという。
ピアレビューを頻繁に実施することで工数は増えるが、仕様書の漏れやバグを早い段階で減らせるため、プロジェクト全体で見れば工数を削減でき、納期やコストを管理しやすくなるからだ。
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