信頼性(しんらいせい)情報システム用語事典

reliability

» 2009年09月22日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 製品やシステムについて、期待される期間(耐用寿命が尽きるまで)、不良や故障、性能劣化などがなく、使い続けられる性質のこと。狭義には「壊れにくさ(耐久性)」、広義にはこれに「直しやすさ(保全性)」を加味した性質とされる。

 JIS Z 8115:2000では、「アイテムが所定の条件の下で、所定の期間、要求機能を遂行できる能力」と定義されている。ここでいうアイテムとは「系、機器、部品など」で、製品やシステムおよびその構成要素であるユニット、部品など、信頼性を考える対象のすべてをいう。

 狭義の信頼性は非修理系(再生不能なアイテム、使い捨て品)を対象とした特性で、「使いたいときに故障していない性質」である。製造工程の良品/不良ではなく、使用する段階の品質を問題にしているが、あくまでも非修理系アイテムが対象であって保全による状態変更は想定されないことから、製造者によって作り出されるアイテム固有の特性といえる。

 広義の信頼性は修理系(修理可能なアイテム)を対象とした特性で、上述の狭義の信頼性(=故障しない性質)に保全性(=故障したときの修理しやすさ)を加えたものをいう。これはディペンダビリティということもある。

 信頼性の尺度には信頼度、MTTF、B10ライフ、故障率、MTBFアベイラビリティなどがある。

 信頼性という考え方は第2次世界大戦中、米軍が太平洋戦線に配備した航空機の大半が稼働できないという事態に直面したことに始まる。原因は真空管の故障だった。工場出荷時には良品と判断された製品が、現地では交換用在庫も含めて半数以上が使い物にならなかったのである。対策を迫られた米軍はMITに研究を依頼し、高信頼管(reliable tube)が誕生した。reliablityという名はここに由来するという。

 戦後になっても電子機器の“壊れにくさ”に関する問題意識は継続し、1950年になって軍や民間、学界の専門家を集めた委員会で調査研究が開始された。同じ年、朝鮮戦争が勃発すると電子機器が原因と思われる事故が続発、政治問題化したことから、1952年に委員会は電子機器信頼性諮問委員会(AGREE)に昇格した。ここでの研究は1957年にAGREEレポートにまとめられた。これが信頼性理論の基礎になったとされる。

 真空管(非修理アイテム)に始まった信頼性研究/信頼性工学は、アポロ計画などの宇宙開発、原子力発電プラント、日本国有鉄道(現JRグループ)の新幹線といった大規模システムにも適用され、対象領域と手法を拡大・洗練させながら今日に至っている。

参考文献

▼『おはなし信頼性〈改訂版〉』 斉藤善三郎=著/日本規格協会/2004年1月

▼『品質保証のための信頼性入門』 真壁肇、鈴木和幸、益田昭彦=著/日科技連出版社/2002年3月

▼『情報システム工学』 佐々木正文=著/共立出版/1990年2月

▼『信頼性・保全性の基礎数理』 三根久、河合一=著/日科技連出版社/1984年2月


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