CIOは、“効果額”で攻めのIT活用を啓蒙せよ進化するCIO像(8)(2/3 ページ)

» 2009年12月17日 12時00分 公開
[碓井誠(フューチャーアーキテクト),@IT]

“守りを固めて攻めとなす”で、作業負荷とコストを低減

 図1は、セブン-イレブン店舗の業務システムの概要である。図の左側に縦に並んでいる「経営・業務管理」「品ぞろえ・販促」「発注」から「月次会計」までが各店舗が行う基本業務であり、それぞれが店舗総合システムのサブシステムでサポートされている。

 重要なのは、これらの基本業務のさらに左側に縦に記した「業務プロセスのワークフローシステム化」という考え方である。

セブン-イレブンが「ITをものに」してきた軌跡 図1 セブン-イレブン店舗の各種業務を支援する店舗情報システムの概要。図の左側に縦に並ぶ「経営・業務管理」「品ぞろえ・販促」「発注」といった各店舗の業務をすべてシステムがサポートしている。さらに、店舗で取り込んだ情報は、営業マネジメントシステム、本部マネジメントシステムへとスムーズに流れ、それぞれの部門が求める情報に加工されていく点がポイントだ(クリックで拡大)

 まず第1に、先ほど紹介した左側に縦に並んでいる各種業務のうち、オレンジ色の部分――「仕入検品」から「在庫変更・棚卸」までの4つの業務を見てほしい。これらは仕入れ、売り上げ、在庫を管理する業務であり、ここで発生したデータがすべて会計処理につながっている。これらの業務はすべてバーコードスキャンによって行われ、仕入れ、在庫というモノの情報とカネの情報が、バーコードスキャンと同時に自動的に店舗総合システムにおける会計システム上でデータ更新され、さらに営業マネジメントシステム、本部マネジメントシステム用のデータへと瞬時に加工されていく仕組みだ。

 仕入れ検品を例に取ると、まず店舗からの発注データを本部のホストコンピュータで伝票データに加工する。そのうえで、商品の配送便ごとにグルーピングしたデータファイルを、店舗のスキャナターミナルに送り戻す。その商品の発注数がスキャナターミナルの画面に表示される。店員が納品された商品のバーコードをスキャンすると、表示された発注数と実納品数をチェックするだけで済む、といった仕組みになっている。

 その流れをより具体的に示したのが図2だ。あらかじめ発注し、届けられた商品「牛乳」のバーコードを店員がスキャナターミナルでスキャンすると、店舗マネジメントシステムは瞬時に、商品の製造会社を示す「ベンダコード」、その伝票番号のほか、「牛乳共配第○便の検品を開始した」と認識する。それと同時に、商品の発注数量をスキャナターミナル画面に表示する。同じ便で納品されるほかの商品についても同様だ。

セブン-イレブンが「ITをものに」してきた軌跡 図2 仕入れ検品システムの概要。「業務プロセスのワークフローシステム化」という考え方に基づき、店員はバーコードをスキャンし、発注数量と実納品数をチェックするだけでよい。“決められた業務を誰でもスムーズに遂行できる”仕組みが、業務効率化、データ精度向上に同時に役立っている(クリックで拡大)

 検品する店員は商品名もベンダコードも意識する必要はなく、商品をスキャンして画面に表示された発注数と実納品数を比較し、間違いがあった場合のみ、実納品数を入力するだけでよい。検品終了ボタンを押したとき、もし未検品の商品があれば、店舗マネジメントシステムが発注データと照合して検品漏れのアラートを出すなど、簡単かつミスが起きにくい仕組みを整えている。

 スキャンが済み、店員がスキャナを置台にセットすると、仕入れ金額、仕入れ数量のデータが自動的にストアコンピュータに入力され、単品在庫の更新と仕入れ金額の確定が行われる。

 一方で、在庫数量、仕入れ金額、仕入れ数量の3つのデータは、本部システムの会計処理、ベンダ用会計処理にも自動的に反映される。すなわち、その作業精度、データ精度の高さを生かし、スキャン検品データそのものを、本部マネジメントシステムにおいて仕入れ計上データとして処理するほか、ベンダ側の売り掛け管理システムにも配信、連動できる仕組みとした。

 以上のように、バーコードスキャンを介して仕入れ検品を行えるようにしたことで、仕入れ伝票が不要となり、2005年には全店舗から紙の伝票を廃止した。なお、伝票情報はWebシステムによって、店舗、本部、取引先が常時参照可能な仕組みにすることで、電子帳簿保存法にも対応している。

 また、従来、仕入れ検品は配送ドライバーと店員が2人で行っていたが、店員がスキャナターミナルを使って1人で行えるようになったことで、配送ドライバーは納品後、すぐに次の配送先に向かえるようになった。検品ミスが多かった店舗に対しても、データで管理するようになったことでミスの抑止効果が現れた。

 さらに、仕入れ・在庫数量データに加えて、レジで会計時に取り込む販売データもストアコンピュータに送ることで、各店舗の会計業務の自動化とリアルタイムの在庫更新も実現した。これにより、図1の右側、本部マネジメントシステムの機能として示したように、「リアルタイムでの単品在庫情報」「売れ筋情報、死に筋情報」などのデータベースを自動生成する仕組みを築き、情報活用の道を大きく拡大したのである。

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