strategic business unit / 戦略事業単位
戦略の策定と実行、業績管理を独立して行える事業区分のこと。マネジメントやオペレーションを行うための組織体系と一致する必要はなく、複数の組織を束ねて設定したり、仮想的な単位を置いてSBUとすることもある。
企業の組織は「製造/営業/経理」というように機能別に編成されるか、「北米/欧州/アジア太平洋」「一般消費者向け/企業向け」などの市場別に編成されるのが一般的である。それに対して経営戦略は、指揮命令系統や個別事業単位に策定することが必ずしも適しているとは限らない。社内では異なる事業と認識されているものを組み合わせて考えた方が将来性や投資効率がよく見えるという場合が少なくない。だからといって、それに合わせて組織部門を解体して戦略単位に組み変えることも必ずしも効率的ではない。そこで実体的な組織に重ね合わせる形で設定されるのがSBUである。組織論的にはマトリクス組織の1種であり、管理会計的には投資対収益や事業将来性を集計・検討する責任センターといえる。
SBUの形態は企業によってさまざまである。1つの事業部が1つのSBUと看做される場合もあれば、いくつかの事業部を組み合わせてSBUとする場合もあるし、1つの事業部が複数のSBUに属する場合もある。またはブランド/ブランド群の切り口で設定する場合もあれば、市場競合の関係性から設置される場合もある。カテゴリマネジメントでは消費者/買い物客の利便性の視点で定義される“カテゴリ”をSBUとすることになっている。
SBUを世界で最初に導入したのは米国のGE(ゼネラルエレクトリック)である。1963年にGEの社長に就任したフレッド・J・ブーチ(Fred J. Borch)は多角化戦略を標榜してさまざまな事業領域に進出したが、その結果として売上高では成長したものの収益性の低下を招いたため、1970年になって組織改革に取り組んだ。その中心的アイデアがSBUであった。
この改革においてGEの本杜経営会議は、次の条件を満たすものをSBUとした。(1)独立の事業ミッションを持つ、(2)明確な競争会社を持つ、(3)外部市場において独立した競争者となり得る、(4)製品・市場・設備・組織に関して、ほかのSBUとは独立に統合的な戦略計画を策定できる、(5)管理者がその事業分野の成功にとって決定的に重要な技術・製造・マーケティングに関する手立てを計画の範囲内で自由にとり得る。
当時のGEには170にも及ぶ製造部門があったが、この改革では43のSBUに整理され、それぞれに長期・短期の経営責任を負う管理者(SBU長)が任命された。本社経営陣は170製造部門ではなく、43SBUを対象に戦略(資源配分)を考えればよく、その分のマネジメント負荷が軽減された。このSBUを対象とする資源配分の評価・検討・計画手法として、BCG(ボストン コンサルティング グループ)によって開発されのがプロダクト・ポートフォリオマネジメント(PPM)である。
▼『GE――世界一強い会社の秘密』 ウィリアム・E・ロスチャイルド=著/中村起子=訳/インデックス・コミュニケーションズ/2007年10月(『The Secret to GE's Success: A Former insider Reveals the Leadership lessons of the World's Most Competitive Company』の邦訳)
▼『GEの組織革新――リストラクチュアリングへの挑戦』 坂本和一=著/法律文化社/1989年4月
▼「SBU管理」 加護野忠男=著/『国民経済雑誌』/神戸大学経済経営学会 143(2)/1981年2月
▼『ポートフォリオ戦略――再成長への挑戦』 ジェームス・C・アベグレン、ボストン・コンサルティング・グループ=編著/プレジデント社/1977年4月
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