BABOKで効果的なソリューションを実現しようBABOK 2.0を読んでみよう(3)(3/3 ページ)

» 2010年01月28日 12時00分 公開
[辻 大輔 (豆蔵),@IT]
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構築したソリューションの妥当性を確認する

 新ITシステムや新しい業務ルールなどのソリューションが完成した後は、それらがどのくらいビジネスニーズを満たしているかどうかを確認し、ソリューションの不足部分や弱点を特定し、必要な対応を検討します。

 これらの活動は、今回の知識エリアの「ソリューションを妥当性確認する」タスクにて定義されています。各要求と照らして、ソリューションが生み出す効果が組織やステークホルダーの受け入れ基準を満たしているかを判断します。

 判断の結果特定された欠陥や問題は手当たり次第に修正せずに、発生頻度やビジネスに与える影響のインパクトなどを考慮して、解決すべき欠陥と受容できる欠陥に分類します。解決を要する欠陥については、次善策での対応や根本的にソリューションを見直すための代替策検討などのアクションを決定します。

ALT 図4:「ソリューションを妥当性確認する」タスクのイメージ(クリックで拡大)

導入後のパフォーマンスを評価する

 前回から今回にかけて、要求を明らかにし、それに基づいてソリューションを構築してきました。しかし、「本当の意味でソリューションが組織のニーズに応えられているのかどうか?」は、運用してある程度時間が経ってから評価してみないと分かりません。

 システム開発や業務改善のプロジェクトで忘れられがちなのが、この“運用後の定期的な効果測定や評価”です。

 今回の知識エリアで、この活動は「ソリューションのパフォーマンスを評価する」タスクとして取り上げられています。投資したコストに対する効果を分析することも、もちろん大切なことですが、ソリューションが生み出している(あるいは、生み出せていない)価値を理解して、次の改善機会を特定することを狙いとして強調しています。

 実施のタイミングは半年後なのか、1年後なのか、その時期は明記されていませんが、適切な周期で、「導入されたソリューションが実際にどのように使用され、どのような効果を生み出しているのか?」を調査します。

 例としては、ビジネス要求とともにメトリクス(評価尺度)を事前に決めておき、実際のパフォーマンスを測定して定量的な評価を行ったり、現場からの変更要求の傾向を分析して定性的な評価を行ったりします。

 評価の結果としては、要求を定義した当時の狙いを達成している成果もあれば、問題が発生し現場レベルでルールや書式の変更、データの追加を行っているケースもあります。

 ここで大事なことは、いつ、どこで、なぜ、これらの変更が発生し、組織にどのような影響を与えているのかを評価し、次の組織改善やシステム改善の活動につなげていくことです。

ビジネスアナリストは、要求とソリューションの整合を確認するべし!

 今回は、ニーズや要求を達成するための実現手段(=ソリューション)に焦点を当て、達成目標との整合を常に確認していくことで、適切なソリューションを実現する活動を紹介しました。

 BABOKは企画や要求定義段階で、適正な要求を定義するために使うものというイメージが先行しがちですが、プロジェクト活動の全期間にわたって、適正な要求に基づく効果的なソリューションの実現と組織への展開まで包含しています。

 つまり、ビジネスアナリストには、ソリューションが業務オペレーションレベルで、組織のゴールやニーズに適合した効果を発揮できるように、今回紹介したような活動を支援することが求められるのです。

 次回は、第2回、第3回で紹介した各活動をプロジェクトの中でどのように計画し、どのように進ちょくを測って進めていくのかといったことを定義している「ビジネスアナリシスの計画とモニタリング」の知識エリアを紹介します。

注:
「IIBAR」「Business Analysis Body Of KnowledgeR」「BABOKR」は、International Institute of Business Analysisの登録商標です。

 

筆者プロフィール

辻 大輔(つじ だいすけ)

株式会社豆蔵

ソフトウェアベンダ数社でソフトウェア開発やSPI活動などに携わった後、2008年より株式会社豆蔵に在籍。現在はコンサルタントとして、ソフトウェア開発プロセスのアセスメントや展開支援に従事している。


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