BABOKバージョン2を解説する本連載の第4回となる今回は、「エンタープライズアナリシスKA」や「ソリューションのアセスメントと妥当性確認」に続き、「ビジネスアナリシスの計画とモニタリング」の知識エリアを紹介する。
BABOKバージョン2を解説する本連載も第4回目となりました。前回までの「エンタープライズアナリシス」「要求アナリシス」「ソリューションのアセスメントと妥当性確認」の3つの知識エリアに引き続き、今回は4つ目の知識分野となる「ビジネスアナリシスの計画とモニタリング」を紹介します。
2009年12月7日に、「International Institute of Business Analysis(IIBA)日本支部」から待望の日本語版がリリースされました。すでに購入し、目を通した読者の方も多いでしょう。
しかし、BABOK 2.0は250ページを超えるボリュームがあり、すべてを読み通すのは大変です。これからも、この連載では各知識エリアの概要とポイントを分かりやすく説明していきますので、日本語版と併せて活用していただければと思います。
この「ビジネスアナリシスの計画とモニタリング」では、ビジネスアナリシスに関係するステークホルダーの識別や、その役割と責任、タスクや成果物とその見積もり、コミュニケーション方法、要求の管理方法などを定義します。また、ビジネスアナリシスの活動が、“期待される成果”を出すようなモニタリングと報告についても説明しています。
また、この知識エリアは、ほかの知識エリアとも深く関連します。以下に整理しておきましょう。
「ビジネスニーズ」を受け取る
「ステークホルダーリスト」「要求マネジメント計画」を引き渡す
受け渡す情報はない
「ステークホルダーリスト」「ビジネスアナリシスのコミュニケーション計画」「要求マネジメント計画」を引き渡す
「ステークホルダーリスト」を引き渡す
それでは、各タスクの概要とポイントについて見ていきましょう。
まずは、「ビジネスアナリシスへのアプローチを計画する」と「ステークホルダーの分析を主導する」タスクを見ていきます。
このタスクは、すでに明らかになっているビジネスニーズに基づいて実行されます。ビジネスニーズとは連載第2回でも説明したとおり、組織が現在直面している、あるいは将来直面しそうな問題や期待される結果のことで、何らかのソリューションを必要とするものです。
また、「ステークホルダーの分析を主導する」タスクでは、組織内の役割と責任や、ほかの組織、顧客、サプライヤとのやりとりの現状を、エンタープライズアーキテクチャとしてインプットします。
ビジネスアナリシスへのアプローチでは、プロセスの全体とタスクを実行する時期や成果物、使用するテクニックを定義します。平たく言えば、ビジネスアナリシスの全体計画を立てることになります。
BABOKでは事前にソリューションを十分に定義し、計画の確実性を高める計画駆動アプローチと、ソリューションの不確実性を受け入れることの引き換えに、短いイテレーションでビジネスの価値を提供することに焦点を置く、変化駆動アプローチの2つのアプローチを定義しており、プロジェクトの特性に基づいて選択を行い、プロセスを計画します。
ソフトウェア開発の場合であれば、計画駆動アプローチはウォーターフォール開発が、変化駆動アプローチはアジャイル開発などが該当するでしょう。
ステークホルダーの分析では、ビジネスニーズやソリューションによって影響を受けるステークホルダーを識別し、その役割、人数、影響や利害、権限レベルなどを明確にします。
ステークホルダーの分析する要素として、以下の点が挙げられています。
●ステークホルダーグループの複雑性
●ステークホルダーの態度と影響力
●ステークホルダーの権限レベル
ステークホルダーの候補としては、顧客とサプライヤ、スポンサーや経営幹部、ドメインの専門家、エンドユーザー、プロジェクトマネージャやプロジェクトチームなどのソリューションの作成にかかわる人々などが挙げられます。
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