運用自動化は、システムの可視化が大前提──日本ヒューレット・パッカード：特集：仮想環境はここまで管理できる（3）（2/2 ページ）

[内野宏信，＠IT情報マネジメント編集部]

複雑化した環境でも、資産管理、バックアップ作業を効率化

IT資産管理ツール「HP Asset Manager 5.1 software」

　一方、仮想化によってシステム構成が大幅に複雑化すると、確実・適切なIT資産管理はなおのこと不可欠となる。特にライセンス管理はコスト面のみならず、コンプライアンス面からみても非常に重要な取り組みとなる。こうした問題に対応するのが、全IT資産の購入から廃棄までのライフサイクル全般を管理する「HP Asset Manager 5.1 software」（以下、AM）だ。

　AMは、ソフトウェアライセンスなどを管理する「ソフトウェア資産管理」、IT固定資産の原価償却費などを計算する「ファイナンス管理」、利用可能な既存資産の確認などができる「調達管理」、各モジュールで把握する情報項目を一元管理する「資産ポートフォリオ」など、各種オプションモジュールと組み合わせて使う。使用開始時のみ既存のIT機器リストや契約リストなど、初期情報を登録する必要があるが、その後はAMがuCMDBを自動的に参照して、各種資産管理に必要な現物情報をuCMDBから収集し、AMの管理対象として追加登録する仕組みとしている。

　仮想環境への対応としては、物理／仮想サーバの依存関係をひも付けたライフサイクル管理が行える。例えば「ソフトウェア資産管理」を使えば、インストールされているソフトウェアのライセンス条件を、物理／仮想サーバごとに確認できる。

　これにより、同種のソフトウェア製品でありながら物理サーバ用とは別のライセンス体系を持つ仮想サーバ用ソフトウェアを使っている場合も、適切な運用を支援する。

データ保護・バックアップ管理ツール「HP Data Protector 6.11」

　「HP Data Protector 6.11」はマルチベンダのOSやストレージ環境における一元的なバックアップとリカバリの作業を可能にするデータ保護ソフトウェアだ。仮想化ソフトウェアとしてはVMware、Hyper-V、Xenに対応しており、物理環境と同じ管理画面でイメージバックアップ、ファイルバックアップ実行できる。特にVMwareとHyper-Vに対しては、スクリプトを作成することなく、GUIベースで仮想環境のバックアップを統合でき、物理／仮想の統合バックアップ環境の構築・運用の手間を削減できる。

　また、日本HPのストレージ製品「HP StorageWorks EVA／XP」のBusiness Copy機能と「HP Data Protector」自身がもつゼロ・ダウンタイム・バックアップ／インスタント・リカバリ機能とを連携させることで、アプリケーションの無停止バックアップも可能だ。

2010年春、Hyper-Vにも対応。SaaS提供製品も拡大

　仮想化技術の日本企業における浸透状況について、同社 マーケティングプログラム担当の星野敏彦氏は、「ハードウェアを集約して少ない運用管理者で一元管理するスタイルに変わりつつあるいま、極力人手を介さず、正確に作業できる自動化の推進が、リソース配分の最適化、システム構築の標準化といった仮想化のメリットを十分に享受するカギになっていくはずだ」と指摘する。

　ただ、最終的には自動化の体制を狙うにしても、星野氏は「まずは物理／仮想が混在したシステム構成と稼働状況を正しく把握し、リソース配分に関するルールなどを明確化したうえでなければ、自動化のオペレーションを設計することはできない」とし、“現状の可視化”の重要性を強調する。

日本HP HPソフトウエア・ソリューションズ統括本部 ビジネス・テクノロジ・ソリューションズ事業本部 マーケティング部 マーケティングプログラム担当 星野敏彦氏

　今後の製品発表の予定としては、2010年春ごろに、稼働状況監視製品であるOMのプラグイン製品「HP Operations Smart Plug-in for virtualization」に、Hyper-V対応版（日本語）を計画している。これにより、VMwareをはじめ各仮想化ソフトウェアが混在した環境でも、システムの構成情報のマップ表示ができるようにするとともに、稼働状況を一元的に監視可能とする。

　また、「OMとuCMDBの機能を連携・統合し、より効率的に稼働状況を監視できる新製品」のSaaS提供を予定しているほか、既存製品のSaaS提供範囲も順時拡大し、より多くの企業の仮想化技術活用を支援していきたいという。

「特集：仮想環境はここまで管理できる」バックナンバー

• “自律的なインフラ最適化”で仮想化はもっと生かせる──NEC
• クラウド化に向けて、リソースプーリング機能を提供──日本IBM
• 可視化とプロセス整備が仮想化を生かす必須条件──富士通
• 運用自動化は、システムの可視化が大前提──日本ヒューレット・パッカード
• 自動化で、集中管理による作業負荷を低減──野村総合研究所
• “業務視点の機能強化”で、仮想環境の運用を効率化──日立製作所