ベンダ任せにしないで情シスもPDCAサイクルを回せ!情シスをもっと強くしよう(4)(1/4 ページ)

一般的に予定通りにシステム開発が完了することはまれであり、追加コストやスケジュールの遅延が当たり前になっている。場合によっては機能をあきらめ運用でカバーすることさえ発生している。今回はこの状況を克服するために情シス部門が一緒にプロジェクト管理する方法を提案し、方法を紹介する。

» 2010年03月02日 12時00分 公開
[小林 博,@IT]

ベンダ任せがプロセスのギャップを生んでいる

「想定していたよりも複雑な機能を要求されており、見積もり時より工数がかかっています。追加コストやスケジュール変更の相談をさせてほしい」

 基本設計の工程がなかなか終わらないので、状況がどうなっているのかを開発ベンダに確認したところ、開発ベンダからこのような返事をもらったことはないでしょうか。

 仕方なく、ひとまずコスト追加やスケジュール変更をしたにもかかわらず、リリースの直前になって、今度は次のような要望を受けた方は多いはずです。

「テストで予想以上に不具合が出ているので、リリースを延期させてほしい」

「この機能はあきらめてもらって運用でカバーできないか」

 昨今の経済環境下では、経営層やユーザー部門からシステム開発に向けられた視線は厳しく、コストやスケジュール削減の圧力は高まるばかりです。その一方で、予定通りにシステム開発を完了させることは難しく、追加コストやスケジュール遅延、運用でカバーするというのが、多くの開発現場では半ば当たり前のようになってきています。

 筆者は、このように予定したコストやスケジュール通りにシステム開発が進まないという状態のことを、「プロセスのギャップ」と呼んでいます。この「プロセスのギャップ」が常態化している現場では、「システム開発のプロジェクト管理が開発ベンダに過度に依存している」という状況がよく見られます。

プロセスのギャップを埋めるのは情報システム部門

 それではプロセスのギャップを埋める、つまり狙い通りのシステムを予定したコストとスケジュールで完成させるためにはどうすればよいのでしょうか?

 これに対する答えとしてよく聞かれるのは次のようなものです。

「スキルの高い開発ベンダに発注をすることが大事であり、そのためにRFP(提案依頼書)に技術者の資格条件や、類似した開発事例の経験の有無といった制限を設けるなどして開発ベンダの選定プロセスを強化すべきである」

 確かにRFPによって適切な開発ベンダを選定するのは重要なポイントではありますが、RFPだけに頼ってベンダ選定をしても、ほとんどうまくいきません。

 なぜなら、RFPにどんな高度な条件を書いたとしても、当然ベンダ側はその条件を満たすように書いてくるからです。

 大きな開発会社ともなれば、技術者の数も経験案件数も多いので説得力は高く、安心して任せられると考えがちです。しかし、現在のシステム開発は、大手の開発会社であっても自社要員だけでは行っていません。それぞれの開発案件に本当にベストな要員を割り当てられる保証はありません。

 しかも、RFPに記述する条件によって整えられるのは、現実にはプロジェクトが開始する前の準備段階に過ぎません。プロセスのギャップを埋めるには、その先に長く続いていくプロジェクト期間全体にわたる取り組みが必要です。もちろん、RFPでの記述にも工夫が必要ですが、これについては最後に触れることにします。

 「プロジェクト期間全体を通して取り組む」ということは、つまり「最初に開発ベンダを選定し、後はお任せする」という従来的なやり方ではいけない、ということを意味します。

 筆者はプロセスのギャップを起こしている開発現場を多く見てきましたが、そうした現場でのプロジェクト管理は、ほとんどの場合開発ベンダがスケジュールを計画してそれに従って進み、進ちょく定例などで取り上げられる問題点の報告も、開発ベンダ視点で上がってくるという状態になっていました。

 そのため、「発注側で対処すればすぐに解決できたかもしれない状況」に気付かず、開発ベンダ側で空回りをしたり、手戻りを発生させたりといった、無駄な作業に時間が費やされたことで遅延してしまっていたのです。プロジェクト管理を開発ベンダ任せにしている限り、このような無駄な作業を排除することはできません。

 情報システム部門が、一緒にプロジェクト管理をすることで問題を早期に発見して解決し、開発ベンダに最大のパフォーマンスを発揮してもらえるようにすることが重要なのです。

 以下では、どうやって情報システム部門がプロジェクト管理に関わっていけばよいのか具体的な手法を紹介していきます。

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