仮想化のメリットを引き出す5つの条件仮想化時代のビジネスインフラ(8)(2/3 ページ)

» 2010年03月18日 12時00分 公開
[大木 稔 ,イージェネラ]

自社システムの“いま”と“先”を見据える

ビシネスに対するITの有効性を理解している

 これは一見、誰もが理解しているように思われています。しかし、新しいITシステムを導入しようとすると、抵抗する向きが現れるケースが多いものです。 これは多くの場合、システムの導入によって仕事の流れや組織が変わることを嫌うためです。これまでやってきた仕事を否定されるような気がするのでしょう。

 コンピュータは人間よりもはるかに早く、正確に計算をします。プログラミングを誤ったり、天災などによってハードウェアが何らかの強い衝撃を受けたり、高熱にさらされたりしない限り、まず誤作動はありません。そうしたコンピュータの浸透により、多くの企業が飛躍的な業務効率化を果たしてきました。

 例えば、ほんの四半世紀前までは「ある製品を1万個製造する際、どの部品が、何個必要か」という部品展開作業を手作業で行っていた工場もありましたが、コンピュータの導入によって、1週間ほどかかっていた作業が数時間で済むようになりました。その後も多くの企業がコンピュータを導入して、単純作業に充てていた人件費を削減したり、単純作業から解放された労力を“人にしかできない作業”に割り当てることで、品質、付加価値の向上を果たしたりしてきたのです。

 そしてコンピュータの技術は日進月歩で進化しています。今後も、新技術とそれを率先してヒジネスに生かす企業は続々と登場してくるでしょう。技術とビジネスがスピーディに進化し続ける中で、現状にとどまっているのは衰退しているのと同じことです。

 私は、技術の進化がビジネスにもたらしてきたメリットや、進化のスピードを意識することなく、システムの導入によって仕事の流れや組織が変わることを嫌っているうちは、「ビシネスに対するITの有効性を理解している」とはいえないと思います。新しい技術やITシステムを組み込んだ、人と業務の双方にメリットがある業務フローを設計したり、その有用性をユーザーに説得したりすることができない場合も同じだと考えています。

 ビジネスの現状と目標、目標を果たすために必要な業務を把握し、人がすべきこと、コンピュータがすべきことを切り分けて、ユーザーの納得を得ながら新しい技術を導入する――こうしたことができてこそ、IT利用の有効性を理解しているということですし、企業が成長することもできるのです。

 以前まではメインフレームで使われていた仮想化技術が、オープンシステム環境で使えるようになったことも、進歩の過程の1つです。これを自社のシステム環境にどう取り込めば、ビジネスとユーザーの双方にメリットを確保できるのか、熟考することが大切です。

現時点で利用可能なIT技術と、3年先の動向を理解している

 仮想化技術には、物理サーバの統合から、システムインフラの標準化、必要なときに必要なだけ各仮想サーバにCPUリソースを割り当てるITリソース・プーリングなど、さまざまなレベルの活用方法があります。こうした仮想化技術を、自社の状況や目標に合わせて「どう取り込んでいくのか」を考えることも大切ですが、日進月歩で進化する技術動向を見据えて、「いつ取り込んでいくか」を考えることも大切です。

 そのためには「いまできること」「今後、可能になること」を随時確認しながらプロジェクトを進めていく必要があります。そうしないと、自社の目標を実現するためのチャンスを逃してしまうほか、周囲が進歩するスピードに置いていかれてしまいます。最新の技術動向を把握しておくことは、ベンダからの提案内容を精査する際にも不可欠です。

 ちなみに、弊社のユーザー企業である某大手証券会社のCIOは、「自社のシステム環境について、常に3年先を見据えている」と述べています。こうした姿勢が、より確実な発展につながっていくのです。

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