function analysis systems technique / ファスト
考察対象の機能を体系的に分析するVEの中核的技法で、定型の質問を順次適用することで多数の構成機能の中から本質的な機能を見い出し、機能全体を体系化する。
FASTはVEの根幹をなす機能分析・体系化のテクニックで、対象(製品や設備、サービス、システム、プロセス、手続きなど)の機能を重要性や必要性を明らかにする。オリジナルはHow−Whyの観点から機能を整理する手法だが、その後にさまざまな発展形が派生し、現在では多数のFAST技法がある。日本で主流となっている機能系統図を使った技法もその1つである。
FASTの原形は米国スペリーランドのバリューエンジニアだったチャールズ・W・バイザウェイ(Charles W. Bytheway)がVA/VEの機能分析技法として考案したものである。VA/VEの基本技法は米国GE(ゼネラルエレクトリック)のローレンス・D・マイルズ(Lawrence D. Miles)によって1947〜1950年にかけて一応の完成をみていたが、大規模システムでは膨大な数になる要素機能をまとめるための定式的な方法が整備されていなかった。バイザウェイは多数の機能の中から重要なもの見出す手法として特定の質問を使うこと※を思いつき、FASTという名称で1965年に開かれた米国価値技術者協会(SAVE)の大会で発表した。
バイザウェイのトラディショナルFASTはすべての機能の間には原因−結果の関係があり、これをHow(どのように?)とWhy(なぜ?)のつながりとしてFASTダイアグラムに整理する。バイザウェイは結果としてのFASTダイアグラムよりもそれを作成する課程を中心に据えていたが、次第にFASTはダイヤグラム(分析成果)を重視する技法にシフトしていった。有名なものとしてはHowとWhyに加えてWhenの論理を使ったウェイン・ラグルス(Wayne Ruggles)のテクニカルFAST、便利さ・信頼性・満足度・魅力度の4つの補助機能を取り入れたトム・スノッドグラス(Thomas J. Snodgrass)のコンシューマFASTなどがある。
FASTの手順は次のとおり。まず考察の対象となる製品やサービス、プロジェクトを構成要素に分け、それら要素の機能を定義(名詞と動詞で表す)する。これらの個別要素機能の上位機能を明らかにするため、上位機能質問を行って機能グループを作る。これら質問に対する答えを質問を投げかけた機能とともに1つの機能グループとしてとらえる。
各機能グループの基本機能を明らかにするために基本機能決定論法を適用する。これは同じグループ内の機能同士を特定の質問に基づいて一対比較するものである。任意の機能を1つ選んで、そのほかの機能に対する質問の答えを×(yes)と−(no)で記録していく。続けてグループ内の機能のつながりを機能系統として配列・図化するが、このとき×−の記号によって機能相互の従属/独立関係が明らかになる。その結果、無関係な独立機能を別にして、すべての機能が従属する最上位の機能がその機能グループの基本機能であることが分かる。
対象全体の最上位機能を決定する。各機能グループの最上位機能を集めて機能グループを作り、これに基本機能決定法を適用する。最上位機能が不要であるなら、当該対象のすべての機能は不要ということになる。
クリティカルパス機能系列(プライマリーパス機能系列)を決定する。これは最上位の基本機能を達成するために不可欠な本質的な機能のつながりで、考察対象の設計着想を表すものとなる。この系列上にある機能を補助する機能/機能系列は補助機能と位置付けられる。
補助機能に対してもクリティカルパス質問を適用し、最上位機能とのつながりを確認してFASTダイアグラムを完成させる。
▼『機能分析――企業のシステム改革・効率化の基礎的ツール』 秋山兼夫=著/日本規格協会/1989年3月
▼『実践 価値工学──顧客満足度を高める技術』 手島直明=著/日科技連出版社/1993年4月
▼『ワンランク上の問題解決の技術 実践編──視点を変える「ファンクショナル・アプローチ」のすすめ』 横田尚哉=著/ディスカヴァー・トゥエンティワン/2008年7月
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