“自律的なインフラ最適化”で仮想化はもっと生かせる──NEC特集:仮想環境はここまで管理できる(6)(2/2 ページ)

» 2010年05月13日 12時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]
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システム構成要素の関係性を可視化

統合管理ソフトウェア「WebSAM MCOperations」

 一方、「WebSAM MCOperations」(以下、MCOperations)は、WebSAMで提供する個々の管理機能を統合する製品だ。インフラを管理するSigmaSystemCenterをはじめ、アプリケーション管理製品、資産管理製品など「WebSAM」シリーズの製品群と密接に連携し、単一のコンソール画面上でシステム全体を制御する“統合管理コンソール”として機能する。

 本製品の最大の特徴は、物理/仮想が混在した複雑なシステム構成全体を可視化できることだ。仮想化技術を導入すると、仮想化レイヤが加わるほか、仮想サーバを任意に移動できることから、システム構成と管理が複雑化する。よって、仮想化技術が導入された環境の管理においては、システムの現状を正確に把握することが大前提となる。

 そこでMCOperationsでは、CMDBに格納されたOSとアプリケーションのデータを取得するとともに、SigmaSystemCenterから物理サーバの情報を取得。これにより、物理サーバ、ホストOS、ゲストOS、アプリケーションの関係を、図3の画面イメージのように、ツリー状に可視化する機能を確保した。

ALT 図3 MCOperationsの管理画面イメージ。物理リソースと業務システムの関連性を視覚的に把握できるため、障害の影響範囲がひと目で分かる。仮想化環境の構成が動的に変化しても、CMDBとの連携によりリアルタイムにマップを自動更新する(クリックで拡大)

 これにより、物理サーバ、仮想サーバ、およびアプリケーションの関係をひと目で把握できるため、ある物理サーバに障害が発生したときに、「どの仮想サーバが影響を受け、どのアプリケーションに支障が出るのか」、ひいては「どの業務に影響を及ぼすのか」まで即座に判断できる。さらに監視機能として、各物理サーバのCPU使用率やメモリ使用率などを可視化・監視できるほか、しきい値の超過時にはアラートを発信、障害の早期検知・対応することも可能だ。

 また、管理業務の効率化と作業ミスの抑制に配慮している点もポイントの1つだ。前のページで仮想サーバの動的な配置を可能にするSigmaSystemCenterの機能を紹介したが、実際のシステム運用においては、単に仮想サーバを追加・削除するだけでは不十分なケースも多い。

 例えば、あるハイパーバイザー上でWebアプリケーションの仮想サーバと、日中は利用されない夜間バッチアプリケーションの仮想サーバが稼働しているとする。このWebアプリケーションにアクセスが集中し負荷が増大した場合、これに対応するためにバッチアプリケーションの仮想サーバを一時的に停止させ、新たにWebアプリケーション用の仮想サーバを配備、ロードバランシングさせることで負荷を平準化するといったシーンがある。

 この場合、既存の仮想サーバを停止し、新たな仮想サーバを追加するだけなら、仮想化ソフトウェアの機能だけでも比較的容易に実行できる。しかし、Webサーバを追加するためには、アプリケーションサーバとの通信設定や、Webサーバを監視するソフトウェアの設定変更なども必要となる。こうした“付随作業”は手順が決められていることが多いが、人手で行うと作業ミスを誘発しやすい。

 そこでMCOperationsには、定型業務をあらかじめワークフロー化し、ワンクリックで自動実行する「シナリオ制御機能」を装備している。

ALT 図4 「Webアプリケーションの負荷増大に備えて、夜間バッチアプリケーション用の仮想サーバを一時的に待機させ、その代わりにWebアプリケーション用の仮想サーバを配備する」といった煩雑な最適配置作業でも、シナリオ制御機能によってスムーズに自動実行できる(クリックで拡大)

 また、業務システムへの「仮想サーバの追加・削除」など、よく使われる処理については、あらかじめテンプレートを用意。これらをカスタマイズすることで、自社の運用管理ニーズに合ったワークフローを容易に作成できるという。

サービスレベル維持に不可欠な、リソースプーリング自動化に注力

 さて、以上のような仮想化対応機能は「来るべきクラウドコンピューティング時代をにらんだもの」であり、2010年5月時点での最新バージョン「WebSAM Ver.8」も、「クラウドコンピューティングのIT基盤となるNECの次世代プラットフォーム・ビジョン『Real IT Platform Generation 2』の一翼を担うものだ」としている。

 これはシステム全体を「インフラ層」と「サービス層」に分け、それぞれを個別の仕組みによって最適化したうえで、密接に連携させ、クラウドサービスのサービスレベルを自律的に維持しようという概念だ。

 具体的には、インフラ層では全社のITリソースを管理しておき、上位のサービス層からITリソースの要求があった際、リソースプールからそのサービスの稼働に必要なだけのリソースを動的に割り当てる。そして、そのITリソースが不要になるとリソースプールに自動的に返却する。一方、サービス層はエンドユーザーに提供するITサービスの品質を担保する任務を担う。例えばサービスレベル低下を検知した場合には、自動的にその原因の分析を行い、必要であれば下位のインフラ層にITリソースの追加を依頼する。

ALT 図5 インフラ層とサービス層の密接な連携により、サービス実行状況を可視化するとともに、「サービスレベル低下の検知」から「根本原因の分析・特定」「リソース追加によるサービスレベルの回復」まで、一連の流れを自動化し、サービスレベルを自律的に維持する(クリックで拡大)

 すなわち、「必要なときに、必要なだけのリソースを割り当てる」??リソースプーリングの実現を目指す概念であり、SigmaSystemCenterとMCOperationsの各種仮想化管理機能は、この考えに基づいて実装したものだという。NEC ITソフトウェア事業本部の小池康夫氏は次のように説明する。

ALT NEC ITソフトウェア事業本部 グループマネージャーの小池康夫氏

 「サーバ仮想化はかなり普及してきたが、多くのユーザーはまだ物理サーバ上の環境をそのまま仮想サーバ上に移しただけの状態だ。しかし、仮想化技術を使ったITリソースの動的な最適化に踏み出し始めたユーザーも着実に増えつつある。われわれはそうした取り組みを行う際、具体的に何をすればよく、何が必要なのか、製品やソリューションを通じて示していこうと考えている。その軸となる機能がリソースプーリングであり、その実現に必要な機能開発に今後一層注力していく」

 一方、サービスレベル維持のための監視機能も、今後の機能強化のポイントだ。NEC ITソフトウェア事業本部の吉羽幹夫氏は次のように述べる。

ALT NEC ITソフトウェア事業本部 エンジニアリングマネージャーの吉羽幹夫氏

 「サービスレベルを維持するためには、従来のようなサーバ単位・機器単位の障害監視では、必ずしも対応できない。例え機器単位では正常に動作しているように見えても、ハードウェアやソフトウェア、ネットワークなど各構成要素が絡んだ“サービス”として見ると、エンドユーザーが期待するパフォーマンスが出せていないケースも少なくない。また、仮想化の導入に伴うシステムの複雑化によって、パフォーマンス低下の原因分析が長期化し、コストも膨らんでいる。NECは今後、“エンドユーザー視点で”サービスレベルを監視し、その低下の素早い検知から、独自技術による根本原因の分析、特定、対処まで、一連の流れを自動化することで、サービスレベルを自律的に維持する仕組みを実装していく予定だ」

 仮想化とその先にあるクラウドコンピューティングをターゲットとしたこれらの機能は、今後3年以内の完装をメドに、随時、WebSAMに実装していく予定だという。

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