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» 2010年10月25日 00時00分 公開

CA Technologiesに聞く、買収戦略の狙い:CA、「ITマネジメント、運用管理力がクラウドの成功要因」

[内野宏信,@IT]

 CA Technologiesの買収攻勢が止まらない。2009年6月のデータセンター自動化技術を持つCassatt社の買収を皮切りに、2010年10月までに立て続けに8社を買収している。その動きだけを見ていると展開の速さばかりに目を奪われてしまいがちだが、一連の買収先を俯瞰すると、クラウド戦略に対する同社の明確な方向性が伝わってくる。では実際、同社はどのような戦略を考えているのだろうか――米CA Technologiesのエグゼクティブ・バイス・プレジデント アージェイ S.ゴーパル氏に話を聞いた。

クラウド時代、運用管理とセキュリティが一層フォーカスされる

 同社は2009年、データセンター自動化技術を持つCassatt社を6月に、ネットワークとアプリケーションのパフォーマンス追跡技術を持つNetQoSを9月に買収。2010年に入ると、1月にはサービスレベル管理ソフトを持つOblicoreを、2月には新規/既存アプリケーションをクラウド環境に導入する開発プラットフォームを持つ3Teraを、3月にはアプリケーションの性能・可用性監視製品を持つNimsoftを買収した。

 さらに、8月にはクラウド関連のコンサルティング事業を行う4Base Technologyを、9月にはクラウド環境における不正行為防止/認証技術を持つArcot Systemsを、そしてこの10月12日にはキャパシティ管理製品を持つHyperformix社の買収を発表している。こうして振り返ると、その数とスピードに圧倒されがちだが、中身を見れば同社が仮想化・クラウド環境における「運用管理」と「セキュリティ」に的を絞っていることがよく分かる。この点について、ゴーパル氏は次のように解説する。

 「弊社では“クラウド”という言葉を“ITの提供方法の変革”と受け止めている。実際にサービス提供形態のバリエーション、柔軟性は一段と高まりつつある。だがその半面、ITインフラも確実に複雑化している。しかし、企業のCIOはそうした中でも自社にとって必要なサービスをシビアに見極め、その安定稼働を確実に担保しなければならない。すなわち、クラウド時代になってサービスを利用しやすくなればなるほど、複雑な環境を安定的に活用するための『運用管理』『セキュリティ』というテーマがより一層フォーカスされることになるわけだ。一連の買収も、この考えを基に製品ポートフォリオを拡充することが狙いだ」

写真 米CA Technologiesのエグゼクティブ・バイス・プレジデント アージェイ S.ゴーパル氏

 実際、クラウド化への布石として仮想化技術を導入したことを受けて、システムインフラが複雑化し、その安定運用に課題を感じているケースは多い。その解決の1つのカギとされているのが、「いま、何が、どこで稼働しているのか」というシステム構成情報の確実な管理と、アプリケーションのパフォーマンスが低下したり、システムに何らかの問題が発生した際に、迅速に問題原因を特定できる“仮想・物理をひも付けた一元的な管理”だ。

 ゴーパル氏はそうした点を指して、「NetQoSやCassatt、Nimsoft、Hyperformixなどを買収したのも、そうした物理・仮想の混在環境の可視化やパフォーマンス管理機能などを提供することが狙い。弊社は以前から構成管理データベースなどを提供してきたが、そうした運用管理分野の製品群に、さらに有用な機能を追加してラインナップを強化することで、仮想化導入企業が陥りがちな問題を解決し、クラウド化の展開を後押ししていく考えだ」

 また、「ビジネス展開を速める」「無駄なコストを抑える」といった仮想化・クラウドのメリットを十分に享受するためには、種類の異なる仮想化ソフトウェアを単一のダッシュボードから一元的にコントロールする、仮想サーバの追加・削除・移動といった定型作業の手間を削減するといった、“日常的な使い勝手”も1つのカギとなる。

 ゴーパル氏はこの点についても、「弊社の運用管理製品はVMware、Hyper-V、Xenに対応しており一元管理が可能なほか、今回の買収により、定型作業の自動化機能も強化している」と指摘。また「Arcot Systemsのクラウド認証の技術を、弊社既存のアイデンティティ管理、アクセス管理製品に統合することで、仮想化・クラウド環境のネックとなりがちなセキュリティ面の問題についても効果的なソリューションを提案できる」と解説する。

ビジネス展開のスピードアップ、コスト削減に役立つ機能を網羅

 ただゴーパル氏は、「大切なのは、各種の問題に個別に対応することよりも、ITサプライチェーン――すなわち、アプリケーションやデータストレージなど、ビジネスの遂行に求められるあらゆるリソースを必要に応じて用意できる環境――の整備に向けてロードマップを描き、効率的に実践していくことだ」と主張する。

 「そうした環境が整えば、CIOは初めて日々の運用管理上の問題、コスト削減の問題だけにとらわれることなく、より中長期的な視点から、ビジネスをいかに進展させるかという本来のミッションに注力できるようになる」

 とはいえ、そうした環境は一朝一夕に実現できるものではない。そこで同氏はクラウド化に向けた基本ステップを紹介しながら、「“クラウド化へのロードマップをサポートするもの”という視点で俯瞰すると、今回買収したものに限らず、弊社の製品体系を理解しやすいはず」として、各製品がどの段階で役立つのか、あらためて解説してみせる。

 例えばクラウド化の最初のステップとなるのが、IT資産の棚卸しだ。そのうえで自社のビジネス目標を基準に、残すもの/廃棄するもの、クラウド環境に移行するもの/移行しないものを整理する作業が求められる。その際には、「全サービスのポートフォリオを把握し、ビジネスに対する重要度、優先順位を判断することが不可欠。ここではプロジェクトポートフォリオ管理製品であるCA Clarity PPMが役立つ」。

写真 サービスのポートフォリオを把握し、ビジネスに対する重要度、優先順位の判断を支援するCA Clarity PPMの画面イメージ

 その後は、アプリケーションによって、既存の物理環境で動かすべきもの/仮想環境で動かすもの、SaaS提供を受けるものが混在することになる。「ただ、そうした環境でもビジネスの円滑な遂行と、確実なセキュリティを担保するためには、複数のWebアプリケーションに対するシングルサインオンなどが求められる。これにはアイデンティティ/アクセス管理製品のCA SiteMinder、クラウド上で認証機能を提供するArcot Systemsの製品が貢献する」という。

 さらに、アプリケーションを稼働させる環境としては、PaaSによって外部のプラットフォームを使う、自社のプラットフォームを使う、ハイブリッド環境で使うといった複数のパターンがある。このようにクラウドとオンプレミス、物理・仮想の混在した環境において、ビジネスを円滑に遂行したり、状況に応じてサービスを立ち上げたり、ワークロードに応じて必要なリソースを割り当てたりする――すなわち“クラウドのメリット”を享受するうえでもさまざまな機能が必要になる。

写真 メインフレームや分散環境、物理・仮想の混在環境など、あらゆる状況にあるITインフラに対応し、各社ごとのペースでクラウド化のロードマップ実現を支援する。左下に表記されている買収各社も「包括的ラインナップを強化するため」

 これについては「物理・仮想の混在環境、クラウド環境におけるサービスレベルなどの計画を支援する自動キャパシティ管理製品のHyperformix、パブリック/プライベートクラウド環境におけるシステム構成要素の稼働状況をモニタリングするNimsoft、ネットワークのパフォーマンス追跡技術を持つNetQoS、エンドユーザー視点で『いま何が起きているのか』サービスレベルを監視できるOblicore、またWindows、Linux、UNIXといった異機種の混在環境でも任意のサービスレベルに応じて、自律的にリソースを割り当てるCassattの技術・製品が役立つ」という。

 「企業によって、メインフレームを使っていたり、クライアントサーバシステムのような分散環境にあったり、また物理・仮想の混在環境にあったりと、各社各様のITインフラを有している。そのそれぞれに対応し、各社の要求とペースに合わせてクラウド化を支援していくことが弊社の狙い。その点、ITマネジメントや運用管理、セキュリティ分野に対する豊富な知見と、それを実現する包括的なラインナップは弊社の大きな強みと言える」

今後は高度なITマネジメント、運用管理力が不可欠に

 2010年、「クラウド」という言葉はIT業界の一大キーワードとなった。その実現にはまだまだ課題があるものの、ゴーパル氏は「日本市場は先進国の中でもクラウド化に非常に前向きと言える。コンサルテーションも含めて、その実現を親身になって支援していきたい」とあらためてエールを送る。

写真 「クラウド化には、クラウドだけにフォーカスしたベンダ、パートナーではなく、従来型のITインフラの理解、運用管理ノウハウに長けたベンダ、パートナーを選ぶべき。CA Technologiesはそうしたパートナーになれると確信している」とゴーパル氏

 また、クラウドについては「先進国に限らず、これまでITインフラにさほど投資してこなかった発展途上国でも強い関心を示している」と話す。ゴーパル氏は「そうした国々では電話機にしても固定電話というステップを飛び越えて、いきなりワイヤレスが普及した経緯を持っている。ITインフラについても、オンプレミスのインフラを飛び越えて、いきなりクラウド活用に踏み出すという可能性もあるかもしれない」と話す。

 これもテクノロジが隠ぺいされ“サービス”がフォーカスされるクラウド特有の事象と言えるのではないだろうか。ただ、アプリケーションやプラットフォームをサービスとして柔軟・迅速に利用可能となることは、一歩間違えば、サービスやシステムの乱立、コストや手間の増大につながりやすい、ということでもある。この点で、必要なサービスの選択、優先順位付け、また導入後の構成アイテム管理、運用管理には従来以上にシビアになる――すなわち、ビジネス目標にひも付いたITマネジメントや運用管理という“基本”を徹底する力が、従来以上に強く求められることになる。

 ゴーパル氏はそうした点を受けて、「クラウド化に乗り出す際には、クラウドだけにフォーカスしたベンダ、パートナーではなく、従来型のITインフラの理解や、運用管理ノウハウに長けたベンダ、パートナーを選ぶべきだろう」と指摘。そのうえで、あらためて同社の運用管理・セキュリティ分野の知見と、それを実現する包括的な製品ポートフォリオ、クラウド化のコンサルテーション力を挙げ、「弊社ならそうしたパートナーとして、“クラウド接続型エンタープライズ”の実現を強力に支援できると確信している」と力説した。

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