米ヒューレット・パッカード(HP)が11月30日から12月1日にかけてスペイン・バルセロナで開催している「HP Software Universe 2010」で、米HPバイスプレジデントのロビン・プロフィット氏が基調講演を行った。
ビジネスに対するITシステムの重要性が高まる一方で、仮想化、クラウドなどシステムインフラが年々、複雑化している。その中におけるHPのグローバル戦略として、同氏は「いつでも、どこでも、あらゆる方法で、誰もが(必要に応じて)システムを接続できる/即座に結果が得られる/ビジネスとITを確実に連携できる/ビジネスの好機と競争優位を提供できる」環境を用意する――というキーコンセプト「The Instant-On Enterprise」を発表。併せて、「その実現に寄与する11の新製品を発表する」と報告し、欧州全土から集まった3000人超のユーザー企業のIT部門担当者らを大きく沸かせた。
ビジネスに対するITシステムの重要性がますます高まっている中、企業が競争優位を獲得するうえで複数の課題が指摘されている。プロフィット氏はそうした課題を整理し、大きく5つのポイントを挙げた。
1つ目は「“いま”の市場環境やビジネスニーズに対応できるアプリケーションへの刷新」、2つ目は「物理/仮想が混在した複雑なシステムインフラの確実な構築・運用」、3つ目はバンキングやEコマースなどWebアプリケーションが深く浸透しているいま、「ITシステムがハッカーによって常にセキュリティ上の脅威にさらされていること」だ。
一方で、企業には日々、大量の情報が蓄積され“情報の洪水”ともいうべき状況にある。そうした中、ビジネスに勝つためには、情報を効率的に選別、分析し、効果的に次のアクションにつなげていかなければならない。これが4つ目のポイント、「情報の爆発への対応」。そして5つ目として、自社ならではの強みやビジネスゴールに向けて、「ハードウェア、ソフトウェアを選別し、常に自社に最適化した環境を整備しなければならない」ことを指摘した。
プロフィット氏は、「これらは“ビジネスとITを確実に連携させ、迅速にビジネスチャンスや結果を確保する”ためのキーコンセプト『The Instant-On Enterprise』を実現するための鍵でもある」と指摘。そして、これら5つの課題を解決し、企業が勝ち残るためのキーワードとして「柔軟性/自動化/セキュリティ/洞察/スピード」の5つを紹介したうえで、これらを実現する具体的な製品名を挙げた。
まず『柔軟性』については、「ビジネスニーズに答えられる柔軟なアプリケーション・トランスフォーメーション」が必要だと指摘。これを実現する製品として、今回、発表する新製品群の中でも目玉といえる「ALM 11」を紹介した。
ALM 11はアプリケーション・ライフサイクル・マネジメントを支援する製品で、HPが買収した旧米マーキュリーのソフトウェア開発の品質管理製品、「Quality Center」のヘビーユーザー版「Quality Center Premier」のバージョンアップ版という位置付けとなる。Quality Centerは「品質管理」に重点を置いた製品だったが、新製品はフリーウェアの「Eclipse」、マイクロソフトの「Visual Studio」といった統合開発環境と連携できるほか、「要件」「品質」「開発」という3点の統合的な管理を実現。すなわち、開発の二大テーマ――「要件と品質」を確実に満たせる開発ライフサイクル管理を実現するという。
一方、『自動化』と『スピード』については、「物理、仮想、クラウドサービスが混在した環境を、統合的かつ効率的に運用管理することや、ビジネスの状況に合わせて、物理、仮想、クラウドサービスの中から必要なアイテムを選び、即座に最適化した状態で配備できることが必要」と解説。これについては、物理、仮想、クラウドサービスが混在した環境の運用管理を支援する「BSM 9」が実現するという。
具体的には、定型的な運用作業の自動化機能や各種管理・監視機能を持ち、複雑なシステムインフラの運用管理の労力を大幅に低減するほか、障害の予防や検知、問題個所の迅速な特定、復旧を支援し、ビジネスの円滑な遂行をサポートするという。
3つ目のキーワード、『セキュリティ』については、2010年8月に買収したセキュリティ分野のリーディング企業、米フォーティファイ・ソフトウェア、2010年9月に買収したセキュリティ・ソフトウェアベンダのアークサイトの製品と技術力をアピール。
特に、静的解析ツールに強みを持つフォーティファイについては、2007年に買収した動的解析ツールのリーディング企業、SPIダイナミクスの技術と掛け合わせることで、Webアプリケーションの脆弱性を、ハッカーの視点、開発者の視点の双方から検知可能とした新製品「Hybrid 2.0」(仮称)を提供予定というトピックがある。プロフィット氏は、こうしたセキュリティ分野の製品拡充について、「セキュリティの脅威は“防ぐ”のではなく、プロアクティブに“断つ”ことが不可欠。一連の買収によって、これを実現するラインナップを提供できる」と力説した。
そして最後の『洞察』については、「企業データを統合的に管理・監視し、効果的な分析や企業ガバナンスの徹底を実現すること」という要件を挙げ、これを実現する製品として「TRIM 7」を紹介した。この製品は、企業内の各種データを統合的に管理する製品で、企業が持つアプリケーションデータのボリュームを最大25%まで削減可能なほか、データの分析時間も最大80%カットできる機能を持つという。
このほか、IT資産を全社的な視点で統合的に管理・活用する重要性も指摘。各種アプリケーションのパフォーマンスや、セキュリティの状況、開発プロジェクトの進ちょく状況など、CIOが必要とするデータを1つの画面で一元的に提供するダッシュボード製品、「Executive Scorecard」も併せて紹介した。
プロフィット氏はこれらの製品について、「厳しい市場環境にあるいま、企業は仮想化、クラウドサービスの浸透により便利になった反面、ますます複雑化しているシステムインフラを効率的に活用できなければ、競争優位を獲得することはできない。その点、HPは既存のソフトウェア製品で企業のIT活用を強力に支援するほか、今回のSoftware UniverseでALM 11をはじめ、計11の新製品を発表し、製品ポートフォリオをより一層拡充する」と強くアピール。フォーティファイをはじめ、一連の買収によって獲得した技術力、ブランド力も効果的に生かしながら、「あらゆる企業に最適化した『The Instant-On Enterprise』の実現を強力にサポートしていきたい」と声を強めた。
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