運用管理を無理なく自動化する秘けつ特集:運用自動化を生かすポイントを探る(2)(1/2 ページ)

いま、多くの企業にとって不可欠となりつつある運用自動化。だが、日々の運用管理作業もある以上、大々的に自動化に取り組むことも難しい。では、どうすれば無理なく、着実に運用自動化を推進して行けるのか? 効率的な取り組みのポイントを聞いた

» 2011年01月27日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT情報マネジメント編集部]

日々の作業をこなしつつ、自動化を推進するためには?

 リーマンショック以降、一層顕著になったコスト削減志向、それに伴う仮想化技術の浸透、そして以前よりも少ない人材で物理/仮想が混在した複雑な環境を管理しなければならなくなった情報システム部員の負荷増大??前回は、運用自動化が注目されている背景として、これら3つの問題があることを紹介した。

 だが、企業間競争が年々激化している中、企業が生き残っていくためには、コストを絞りながら、スピーディにビジネスを展開していかなければならない。このトレンドが今後も続くことを考えれば、仮想化技術の活用と運用自動化の取り組みは、多くの企業にとって避けられない課題になっていると言えるだろう。

 ただ問題は、ひと口に自動化といっても、その種類、レベルはさまざまであり、「コスト・労力の低減」という効果を享受するためには、然るべき“計画”が求められるということだ。自動化支援ツールもベンダ各社から提供されているが、「導入すればすぐに何でも自動化できる」というわけではない。だが、導入以前に「自動化すべき作業の切り分け」など、“自社に最適な自動化の在り方”を策定しておくべきとはいえ、日々の運用管理作業もある以上、大々的に自動化に乗り出すことも難しい。

 では、そうした中、自動化の取り組みを着実に推進するためには、どうすれば良いのだろうか? 今回は、日々の運用管理業務の中で自動化に取り組むためのポイントについて、仮想化技術とシステム運用管理に詳しい、日本仮想化技術 代表取締役社長兼CEOの宮原徹氏に、より現実的な観点から話を聞いた。

真のテーマは自動化ではなく「標準化」

 まず宮原氏は、「運用自動化」が注目され始めた時期について、「2008年終盤から2009年辺りだろう」と、前回話を聞いたIDCジャパンの入谷氏と同様の見解を示しながらも、「この時期は、“標準化”という従来からの運用管理の問題が顕在化し始めた時期でもあったのではないか」と付け加えた。

 「例えば、パッチ当てなどの日常的な作業も、物理サーバしかなく、台数もさほど多くなかったときには手作業でも対応できた。そこに仮想化技術が加わり、仮想マシンの数が急激に増え、作業負荷が大幅に高まってしまった。だが、負荷が高まった真の原因は、サーバ台数が増えたことよりも、多くの場合、運用ルールが標準化されていなかったことにあったはずだ」

 特に宮原氏が指摘するのは、「パッチ適用1つにしても、ルールを決めていないユーザー企業は意外に多い」という事実だ。

ALT 日本仮想化技術 代表取締役社長兼CEOの宮原徹氏

 「ITシステムの運用管理は、“動いているうちは触るな”を鉄則としているケースが一般的。だが、『何か問題があったとき』あるいは『管理者が気付いたとき』という、場当たり的な対処を行っていると、いざ調べてみたらOSのバージョンがバラバラだったり、適用すべきパッチが当たっていなかったり、といったことになりがちだ」

 そうした中、仮想化によりサーバの数が増えれば、統一された運用ルール、プロセスがない以上、各サーバに個別に対処しなければならず、作業負荷は一気に高まる。つまり、作業負荷を高めた真因は、“サーバ台数が増えた”ことではなく、「どんな状態のとき、どんな作業を、どんな手順で行うか」という運用管理の“標準化”がなされていなかったことにある。「この点が顕在化していながらも、作業負荷低減、自動化というキーワードの下、見落とされがちだったのではないか」というわけだ。

 従って、情報システム部門が考慮すべき問題の本質は、自動化というより、効率的な作業プロセス、運用ルールの標準化にあり、この「標準化こそが、運用自動化を生かす鍵になる」と、宮原氏は結論付ける。

 「非効率な作業プロセスのまま作業を自動化しても、それは効率的とは言えないし、統一された運用ルール/プロセスがないまま、部分的、局所的に自動化ツールを活用しても、その効果を十分に引き出すことはできない。もちろん、一度にプロセスの効率化、標準化を果たすのは難しいが、標準化というキーワードを念頭に置いて、少しずつ自動化に取り組めば、運用管理は着実に効率化して行けるはずだ」 

まずは身近な作業から見直してみよう

 では、自動化の取り組みを進めていく上で、どのような点に配慮すべきなのだろうか? 宮原氏はまず、自動化の対象となり得る作業の候補を挙げる。具体的には、「仮想サーバのプロビジョニング」や、「システムの死活監視、性能監視」「パッチ当て」「障害対応」「バックアップ」などだ。「これらは“日常的に繰り返し行われる定型的な作業”。つまり自動化しやすく、効果も期待しやすい作業と言える」

 そこで、まずは自社の運用作業を見回してみて、上記のような“日常的に繰り返される定型的な作業”に着目し、「より効率的な作業プロセスを考え直すべきだ」という。もちろん、システム運用の現状を棚卸しし、「自動化すべきもの/そうでないもの」を切り分けた上で取り組むのが“セオリー”ではあるが、日々の業務を回しながら自動化を進める上では、「身近な作業から見直し、少しずつプロセスの効率化を図っていくのも一つの方法」というわけだ。

 「例えばマネージャ層の視点で言えば、スタッフが忙しそうにしているとき、それが何の作業で、何に手間取っているのかを調べてみる。スタッフの視点で言えば、『これは効率が悪いな』と感じる作業をピックアップする。そして『どう作業すれば、どんな手順にすれば、もっと楽ができるのか』と意識的に考えてみる。一番大切なのは、そうした日常的な“気付き”を決して放置しないことだ」

 このようにして、“効率的なプロセス”に改善することを習慣化して行けば、引き続き手作業で行ったとしても業務効率は向上するし、「ツールに任せた方が楽な業務、早い業務」も自ずと明確になってくる??すなわち、「“自社において自動化すべき作業”の候補も自ずと浮き彫りになってくる」というわけだ。

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